本屋大賞と直木賞をW受賞した恩田陸が新作小説でナショナリズム批判! 「東京オリンピックが決まって、すごく嫌な気持ちに」

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安倍政権以降のナショナリズムの高まりが『失われた地図』の筋書きを変えた

「もともと街歩きがとても好きで、東京に関する本もずっと集めているんです。以前も『エピタフ東京』という作品を書いていますが、今回は「軍都」としての東京の記憶を小説の中で書いておきたいなという思いがありました。
 東京は武士が作った町ですから、防衛上のことを考えて作られています。ですからいまも、実は「軍の記憶」があちこちに残っています。それも「いま書いておかないとなくなってしまうだろうな」と思い、書き始めたんです。
 そもそも東京は、いろいろな時代や地方の記憶があちこちに残っていて、すごくおもしろいところですよね。第二次大戦が終わって70年が経ったし、そのあたりを重点的に書いてみようと思いました」

「書き始めたときは、それこそ軍とは過去の遺物である、むしろノスタルジックなもののつもりで書き始めた」が、しかし書いているうちに状況が変化。「現実のほうがいくらかきな臭くなってきて、第6話の「六本木クライシス」を書くころには若干現実に追い抜かれた感がありました」と恩田は言う。

「怪」での連載が始まったのは、前述の通り2011年7月のこと。その1年半後、安倍晋三政権が登場しネトウヨ的価値観がどんどん世間を覆うようになり、それまでであれば相手にもされなかったようなナショナリズムと排外主義が、無視できぬほどの大衆の支持を獲得し現実政治をも動かすようになっていく。

 そんな現実世界の流れは小説に大きな影響を与え、第5話となる呉編ではこんな台詞まで登場する。

〈「今の大阪を見なさいよ。デマゴーグの見本みたいなあの混乱。もちろん、それは民衆が潜在的に望んでいるからこの世に顕れたものだわよ。望んでいるのに気付いてないヤツも多いけどね。だけど、『グンカ』はそのきな臭さを敏感に感じ取ってる。自分の出番が来たと思って、覚醒する。両者はあそこで出会い、あの場所で瘴気のごとく噴出したってわけよね」〉

 小説の序盤では「グンカ」はさほど強い者としては描かれていない。ただ不気味なだけで、特殊な能力をもつ主人公たちにしてみれば倒すのにわけもない存在だったのだが、ストーリー後半に行くにつれ、「グンカ」の勢いと数は増加の一途をたどり、だんだんと主人公たちの手には負えなくなっていく。

 恩田はグンカについて先のインタビューでこう解説する。

「以前、(現在の窮状を打破して)「一発逆転するには戦争でも起こってくれないかな」という若い人の発言が話題になりましたが、グンカはそういった空気を嗅ぎつけて出てくる、化学反応みたいな存在です。“グンカ”たち自身に意思があるのではなく、呼ばれたところに出てくる」(前出「ほんのひきだし」)
 
 なぜ「グンカ」はそんなに強くなったのか? それは現在の日本に「グンカ」を勢いづかせるものが豊富にあるからだ。それが「ナショナリズム」であるというのである。先と同じ5話の呉編ではこのように説明される。

〈「『グンカ』が大好きなのは、抑圧されたルサンチマン。抑圧された自己愛。常におのれの不遇の責任転嫁先を探す不満──そういったところかしらね」
(中略)
「あいつら、だいたいは眠ってるけど、いつでもそういった連中と結びつく準備はできてる。いつでも意識下に充満してるそいつらに取り付く。そういう時代の空気、都市の空気に忍び込んで、馴染んで、乗っ取る」
(中略)
「『グンカ』が何より大好きなもの──あいつらとすごーく親和性の高いもの──それってなんだか分かる?」
(中略)
「ナショナリズムよ」〉

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