窪塚洋介がスコセッシ映画の舞台挨拶で政権批判!「この国のみっともない政府は自国の弱者には目も向けない」

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 マーティン・スコセッシ監督の映画という、映画人ならば誰もが憧れる作品の初日舞台挨拶という場で、窪塚洋介や塚本晋也は敢えて現在の為政者たちの振る舞いに対して批判的な言葉を報道陣たちに投げかけた。

 それは、権力者による弱者への抑圧を描いた『沈黙-サイレンス-』が図らずも現状とリンクしている作品だからというのもあるし、彼らがここ数年一貫して現在の政権に対して疑問の声を投げかけ続けてきた映画人だからというのもある。

 前述の通り、塚本晋也は15年に大岡昇平の原作小説を映画化した『野火』を制作した。そこでは、極度の疲労と飢餓で徹底的に痛めつけられ、ついには人肉食の禁忌すら侵してしまう日本兵の姿が描きだされていた。しかし、彼はなぜ『野火』を映画にしようと思ったのか。『塚本晋也『野火』全記録』(洋泉社)のなかで彼はこのように語っている。

「そのとき戦争を描こうと思ったのは、どうもその頃になると「時局によっては、戦争もやむなし」みたいな発言が公の場でぽつぽつ出てきたからなんですね。人間の本能として「戦争がしたい」と思う人たちがいても、そのころまでは戦争を体の痛みとしてハッキリ知ってらっしゃる戦争体験者の方たちが抑止力となっていた。ところが、その方たちがだんだんと亡くなり始めて、それを見計らって「いまなら言えるんじゃない?」みたいな雰囲気が漂い始めた」

『野火』の映画化は塚本がずっと前から構想していた企画だった。この小説に特別な思いを抱いていた彼は、しかるべき予算とスター俳優のもと映画化し、より多くの人に届けられる作品になるようタイミングを待っていたのだが、どんどん保守化していく社会状況が『野火』という映画の制作そのものを危うくさせていく。前掲書で塚本はこのように語っている。

「プロデューサーに別の企画を出したついでに「ところで『野火』なんてのは……」とダメもとで言ってみたりすると、金額云々ではなく「ないです」とハッキリ言われるようになりました。10年前や15年前にはお金の問題だけがあって、内容については誰も文句は言わなかった。でも、いまは「日本兵がボロボロになる映画」というだけで、不思議と避けられたり、タブーに触れるような雰囲気がある。「これはヤバいんじゃないか……?」という世の中に対する危惧がさらに募りました」

 その結果、低予算のうえ、塚本が主演、監督、脚本、編集、撮影、製作を行うという過酷な体制で『野火』はつくられることになるのだが、人々がどんどん戦争への恐れを失いつつある状況を危惧した塚本は、大変な作業になることは承知で『野火』の制作に入っていく。結果的にこの作品は「キネマ旬報」(キネマ旬報社)の年間ベストテン・日本映画部門で2位に選出されるなど高い評価を受けることになる。

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