人気作家たちは永遠の敵「〆切」にどう苦しみ、どう対応したのか? 逃亡、言い訳、謝罪、逆ギレ、開き直り…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 まずは普通に謝る正統派のパターン。吉川英治は編集者に会わせる顔がないからと謝罪の手紙をしたためている。

〈手紙にしました 手紙でないと 君には 面とむかふといつもなかなか云ひ切れないものだから……
 小説
 どうしても書けない 君の多年に亙る誠意と 個人的なぼくへのべんたつやら 何やら あらゆる好意に対してじゃ おわびすべき辞がないけれど かんにんしてくれ給へ どうしても書けないんだ〉

 大作家にここまで謝られると出版社の側もなんとか頑張って待ってみようと思うかもしれない。しかし、同書を読む限り、彼のようなケースは稀。作家というのは特殊な人種である。まともに謝る人の方がレア。一筋縄ではいかないのだ。

 そんな作家たちの回避術のひとつが、拗ねて自虐に走るパターンだ。高橋源一郎は缶詰状態に押し込められたときのことをテーマにしたエッセイで、なんの仕事もできないから作家になったのであって、そんな人間が〆切など守れるはずがないと居直る。

〈なぜ作家は好きこのんで「缶詰」になるのか。それは作家が仕事をしたがらない動物だからである。仕事が好きで好きでたまらない作家はうっちゃっておいても平気である。朝起きると「さあ、今日も仕事ができる!」と口走り、いきなりペンを握っちゃう作家をわたしは知っているが、そんな奇特な人物は例外である。ほとんどは、仕事をしたがらない。だいたい、作家などというものは、通常の仕事も耐えられないから作家になったのだ。朝早く起きられない。満員電車の通勤に耐えられない。他人がこわい。力がない。こういう人間は作家になるしかない。しかし、本来なにもしたくないのが作家的人格であるから、作家になったとしてもなるたけ仕事だけは避けようとするのが人情であろう。そこに編集者とのすさまじい葛藤が発生するのである〉

 こんなことを言われたらもう返す言葉もないが、これはまだマシ。なかには逆ギレするパターンも存在する。横光利一は〆切をぶっちぎった挙げ句、「書けないのに無理やり書かせるのは作家を殺すことにも等しい」と激高する。

〈私は頼まれたものは一応その人の親切さに対しても、引き受けるべきだと思つてゐる。が、引き受けた原稿は引き受けたが故に、必ず書くべきものだとは思つてゐない。何ぜかと云へば、書けないときに書かすと云ふことはその執筆者を殺すことだ。執筆者を殺してまでも原稿をとると云ふことは、最早やその人の最初の親切さを私慾に変化させて了つてゐる〉

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

人気作家たちは永遠の敵「〆切」にどう苦しみ、どう対応したのか? 逃亡、言い訳、謝罪、逆ギレ、開き直り…のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。吉行淳之介新田 樹村上春樹筒井康隆の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 フジテレビがお台場カジノ開発を計画
2 菅首相のベトナムでのスピーチが露呈した「教養のなさ」
3 菅首相の著書改ざんは“都合の悪い記録は残さない”という宣言!
4 欠陥だらけ GoToイートの背景に菅首相と「ぐるなび」会長の特別な関係か
5 菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠麗、アトキンソンも
6 安倍前首相はやはり仮病だった!読売のインタビューでケロッと「もう大丈夫」
7 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
8 「日本学術会議」任命拒否問題で平井文夫、志らく、橋下徹、八代英輝が…
9 通販生活が「左翼だ」攻撃を一蹴!
10 杉田和博官房副長官「公安を使った監視と圧力」恐怖の手口!
11 二階幹事長はリアル『半沢直樹』? 日本航空がらみの土地取引疑惑も
12 『プライムニュース』だけじゃない!マスコミに蔓延る韓国ヘイト
13 ホリエモン擁護のロンブー淳が「切り取り」反論も…発言はもっと一方的
14 大阪都構想住民投票に58億円 吉村知事「イソジン会見」の裏側も発覚
15 菅官房長官のトークのポンコツぶりが話題に!
16 自民党員の東京都医師会会長もブチ切れ「一刻も早く国会を開け」
17 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
18 安倍首相が会見も新しい対策ゼロ! 質問打ち切りに記者から怒号
19 甘利明、下村博文、高橋洋一、橋下徹も……日本学術会議攻撃のフェイク
20 安倍、橋下がイブの夜に改憲戦略
1杉田和博官房副長官「公安を使った監視と圧力」恐怖の手口!
2欠陥だらけ GoToイートの背景に菅首相と「ぐるなび」会長の特別な関係か
3菅首相のベトナムでのスピーチが露呈した「教養のなさ」
4大阪都構想住民投票に58億円 吉村知事「イソジン会見」の裏側も発覚
5菅首相は消費増税をするつもりだ!内閣官房参与に増税主張エコノミストを抜擢
6 中曽根首相「1億円合同葬」強行、教育現場に弔意強要 「前例踏襲」の嘘
7甘利明、下村博文、高橋洋一、橋下徹も……日本学術会議攻撃のフェイク
8菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠麗、アトキンソンも
9菅首相の著書改ざんは“都合の悪い記録は残さない”という宣言!
10菅首相 学術会議の推薦名簿を「自分は見ていない」とトンデモ発言
11二階幹事長はリアル『半沢直樹』? 日本航空がらみの土地取引疑惑も
12 フジテレビがお台場カジノ開発を計画
13ホリエモン擁護のロンブー淳が「切り取り」反論も…発言はもっと一方的

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄