朝ドラ『とと姉ちゃん』を、本家「暮しの手帖」が痛烈批判! 花森安治の反権力精神を描かないのは冒涜だ

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 たとえば14年に『NEWS23』(TBS系)内で安倍晋三首相はアベノミクスに懐疑的な声をあげる街頭インタビューを「意見を意図的に選んでいる」と批判し、その直後には衆議院解散にあわせて自民党から各テレビ局に公正・中立報道を求める文書を送りつけてきた。その後も『報道ステーション』(テレビ朝日)のアベノミクスに関する放送への注意文書送付。15年2月から3月にかけては『報道ステーション』古賀茂明氏の「I am not Abe」発言に対する圧力問題もあった。また今年2月には高市早苗総務相が「政治的に公平ではない放送をするなら電波を停止する」と言及する言論弾圧事件も起こっている。

 これらは全て“権力批判は公正・中立ではない”という権力からの不当な圧力だった。そしてここで利用されたのが放送法第1条の「不偏不党」と4条「政治的公平」との文言だ。

 しかし放送法とは本来、放送局を取り締まる法律ではない。表現の自由や民主主義の実現のために定められたもので、むしろ政府などの公権力が放送に圧力をかけないように定めた法律だ。さらに言えば公正・中立を判断するのは、権力ではなく視聴者や国民だ。

 ところが現在の日本メディアは、こうした正論さえも封印し、なんら対抗手段も講じないまま、その軍門に落ちてしまっている。

 こうしたメディア状況に対し小榑氏はさらに鋭く切り込んでいる。

「今のメディアは『〜ではなかろうか』とか、『○○先生はこういう』とか、談話でしか言わないわけでしょ。こうした中立的な報道は、事実を報道しないことに等しい。例えば今の時代、われわれは本気でもう一度、戦争する覚悟があるのか、兵隊になってもいいのか。そこまで突き詰めていかないといけないのですが、そこがいい加減だからいけない。誰のために、何がしたいのか、徹底的に突き詰めて考える。今のジャーナリズムにはその気概がない」

 そもそもジャーナリズムの役割は権力のチェックであり、政治家の腐敗や暴走を暴くことだ。そこに公権力からの介入など本来あってはならないし、権力報道、ジャーナリズムに公平中立などあり得ない。

 しかし「暮しの手帖」のジャーナリズムの心髄をNHKがドラマで表現するなどと期待するほうが間違っていたのかもしれない。なにしろNHK会長は最高権力者である安倍首相のお友だちであり「政府が右といえば右」といったトンデモ人物であり、さらに岩田明子記者や島田解説委員らは他メデイアの幹部たちと同じく監視の対象であるはずの安倍首相と会食を繰り返し、閣僚スキャンダルを黙殺するなど露骨に安倍政権寄りの政治報道を展開し“安倍サマのNHK”と揶揄されているほどなのだから。

 それにしても、ドラマのなかですら権力批判を描くことがタブー化するとは、この国の言論状況はいよいよ末期状態だ。
(伊勢崎馨)

最終更新:2017.11.24 06:57

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