朝ドラ『とと姉ちゃん』を、本家「暮しの手帖」が痛烈批判! 花森安治の反権力精神を描かないのは冒涜だ

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 確かにこれらの指摘は関係者にとっては重要なものだろう。とはいえドラマはあくまでフィクションであり、史実とドラマの設定や展開が多少違うことは珍しい話ではない。だがドラマにはフィクションとしても看過できない根本的な欠落、問題があった。それが戦争責任と公害という2つの問題だ。

 小榑氏は、公害問題についてこう語っている。

「あの時代は公害問題が出てきて、人々の生活が脅かされていました。『暮しの手帖』では、食品色素の危険性も指摘しました。当時は、食品にいろんな色素が入っており、それが体に害がある恐れがあるにもかわらず、国は黙認していました。編集部でアイスキャンディーを何百本も検査した結果、4本に1本の割合で大腸菌が検出されたこともありました。食品公害という言葉を作ったのは『暮しの手帖』なのです」(前出「週刊朝日」より)

 しかしドラマでは食品公害については一切触れられることはなかったのだ。

 そして、それ以上に小榑氏が譲れないと憤るのが、花森氏の戦争責任についてだ。

 確かに花森氏は日中戦争で徴兵され旧満州で従軍し、除隊の後は大政翼賛会実践宣伝局に勤務し、“進め!一億火の玉だ!”などの戦意高揚のポスター制作に携わった。そのためドラマではその戦争責任を反省して「暮しの手帖」を創刊したことになっているが、小榑氏によれば実際の花森氏の思いは別のものだったという。

「僕は自分に戦争責任があるとは思っていない。だからこそ、暮しの手帖を始めたのだ。(略)なぜあんな戦争が起こったのか、だれが起こしたのか。その根本の総括を抜きにして、僕を血祭りにあげてそれでお終いというのでは、肝心の問題が霧散霧消してしまうではないか」

 ドラマのようにわかりやすい“戦争責任”というストーリーではなく、その根本を問う。そして「お国のために」と騙されたことで「国とはなんだ」を問い続けたという花森。そして、その答えこそ「庶民の生活」だった。

「庶民が集まって、国がある。国があって庶民があるのではない。(略)国にも企業にも騙されない、しっかりと見極める人々を増やして行く、それが暮しの手帖の使命だ」

 花森はあくまで庶民の立場に立ち、国家や企業と闘った反権力ジャーナリストだった。

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