佐藤浩市がテレビの萎縮・右傾化に危機感表明!「このままだとナショナリズムに訴えるドラマしか残らなくなる」

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 それにしても、これまで社会的・政治的な話題を語ってこなかった佐藤が、こうしてメディアに意見したことに驚いた人も多いだろう。だが、昨年出演した戦争特番でも、佐藤は自身の思い、危機感を言葉にしていた。

 それは、昨年3月9日に放送された『戦後70年 千の証言スペシャル 私の街も戦場だった』(TBS)。これまでは俳優として“自らの素地があらわになる”ノンフィクションへの参加は断ってきたという佐藤だったが、「残り少なくなった当事者の人たちに、どんな心境で戦地へ赴いたのか、肉声を聞きたかった。役者としての欲求で受けた仕事です」(同上)という理由でナビゲーターを務めた。

 そんな同番組が取り上げたのは、米軍機に取り付けられたガンカメラが撮影した機銃掃射の実態だった。佐藤はその機銃掃射のターゲットにされた場所に出向き、体験者や遺族に取材。国内の惨状を伝えながらも、同時に米軍パイロットたちの心理にもスポットを当て、殺される側も殺す側も日常や心を引き裂かされる戦争はいかに不条理なものであるかをあぶり出した。

 この番組は、第11回日本放送文化大賞のグランプリ候補や2015年日本民間放送連盟賞テレビ報道番組部門の優秀賞、第52回ギャラクシー賞選奨を受賞するなど、高く評価されたが、その番組の最後を、佐藤はこんな言葉で締めくくっている。

「世界のいろいろなところでいまも戦争は行われています。戦争は人間の愚かな行為です。しかし、人間は過去に学ぶことができます。戦後と言いつづけられるよう、私はこれからも体験した方々や遺族の話に耳を傾けつづけたいと思います」

 この言葉通り、佐藤は同年の終戦記念日に放送された『私の街も戦場だったⅡ 今伝えたい家族の物語』(TBS)でも、人間爆弾と呼ばれた特攻兵器「桜花」をレポート。米軍からは「バカ爆弾(BAKA bomb)」とさえ言われた無謀なこの桜花によって800名を越える若者たちが命を落としたが、佐藤は遺族に話を聞くため訪ね歩き、スタジオでは取材の感想をこう述べた。

「(戦争は)国が起こすのであって、でも、政治家の大義は“民のため、国のため”。そこで何でこんなにボタンを掛け違っていくのだろう。それをほんとうに感じましたし、何よりも重たいと思われている命を軽んじることって何なのだろう。それがいま現在、我々も直面しているんじゃないのかな、そういうふうに思いました」

 戦争の悲劇を過去のものとしてではなく、いま、まさに直面している問題だと語った佐藤。このメッセージと併せて、今回の「ナショナリズムに訴えかけるドラマしか残されていないのでは」という発言を読むと、日本に流れる不穏な空気に佐藤は強い不安を感じているのだろう。

 じつは、佐藤は以前にも、「大戦を描いた映画への出演は一度だけ。どこまでが反戦と言えるのか、考えあぐねた結果」(朝日新聞2015年3月7日付インタビュー)だったことを明かしている。そうした考え方の底流には、父・三國連太郎の影響が感じられる。実際、このインタビューでは、「中国出征時の体験を繰り返し語った父、故・三国連太郎とは、戦争がいかに日常をおかすのか、そんな話をしたこともある」とある。

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