高校教諭の「子猫生き埋め」事件で思い出す、あの作家の「子猫殺し」事件

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
konekogoroshi_01_150402.jpg
『「子猫殺し」を語る──生き物の生と死を幻想から現実へ』(双風舎)

 千葉県の県立高校で発覚した教諭による子猫生き埋め問題。「授業に支障があり、自分の責任で処分しなければいけないという考えが先に立ってしまった」とこの教諭は説明したが、その「手口」は学校の敷地に目的を告げず生徒の手で穴を掘らせ、生まれたばかりの子猫5匹を生きたまま埋めるという陰惨なものだった。事態が発覚した後の3月23日、同校には抗議の電話が殺到、県教育委員会にも1日で100件近い苦情が寄せられた。生徒のなかにはショックを受けた者もいて、同校は「心のケアが必要」と表明した。何も知らずに穴を掘らされた生徒の心の傷は計り知れない。

 この一件で「あの騒動」を想起した人も多いかもしれない。2006年、直木賞作家の坂東眞砂子氏(故人)が「子猫殺し」なるエッセイを日本経済新聞に寄稿した。それは当時タヒチ在住だった坂東氏が飼っていた猫に生まれた子猫たちを、目が開かないうちに高さ2メートルの崖から放り投げていると明かしたもの。避妊手術の是非を考えた結果だという。文章はこう続く。

《人は他の生き物に対して、避妊手術を行う権利などない。生まれた子を殺す権利もない。それでも、愛玩のために生き物を飼いたいならば、飼い主としては、自分のより納得できる道を選択するしかない。
 私は自分の育ててきた猫の『生』の充実を選び、社会に対する責任として子殺しを選択した。もちろん、それに伴う殺しの痛み、悲しみも引き受けてのことである。》
《家の隣の崖の下がちょうど空地になっているので、生まれ落ちるや、そこに放り投げるのである。(中略)子猫の死骸が増えたとて、人間の生活環境に被害は及ぼさない。自然に還るだけだ。》
《避妊手術を、まず考えた。しかし、どうも決心がつかない。獣の雌にとっての「生」とは、盛りのついた時にセックスして、子供を産むことではないか。その本質的な生を、人間の都合で奪いとっていいものだろうか。》
《飼い猫に避妊手術を施すことは、飼い主の責任だといわれている。しかし、それは飼い主の都合でもある。(中略)
 ただ、この問題に関しては、生まれてすぐの子猫を殺しても同じことだ。子種を殺すか、できた子を殺すかの差だ。避妊手術のほうが、殺しという厭なことに手を染めずにすむ。
 そして、この差の間には、親猫にとっての「生」の経験の有無、子猫にとっては、殺されるという悲劇が横たわっている。どっちがいいとか悪いとか、いえるものではない》

 掲載直後から抗議やネットへの書き込みが殺到。日経新聞には掲載1週間の間に1000通ものメールや電話が舞い込んだ。「不快」「理解できない」などの声が多数。

 ジャーナリストの江川紹子氏は「子猫が生まれないように避妊手術をすることと子猫の命を奪うことを同列に論じている坂東さんの論理はおかしい。何が猫にとっての幸せかは猫でなければ分からない。突然殺されることに子猫は悲しんでいるはずだ。猫は野生動物とは違う。人間とのかかわりの中で生きてきた猫と、どう幸せに寄り添っていくかをもっと考えるべきだ」(産経新聞06年8月25日付)と断じた。さらにタヒチを管轄するポリネシア政府は坂東氏の行為を動物虐待に当たるとして裁判所に告発する動きを見せた。小池百合子環境相(当時)も「去勢はかわいそうという観点と思うが、人間や地域との共生をさぐろうというなかで、殺すというのは究極の形」と話した。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

100グラムのいのち ペットを殺処分から救う奇跡の手 (ノンフィクション・生きるチカラ)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

高校教諭の「子猫生き埋め」事件で思い出す、あの作家の「子猫殺し」事件のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。動物坂東眞砂子江川紹子相模弘希虐待の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
2 安倍晋三が「統一教会」イベントでトランプと演説!同性婚や夫婦別姓を攻撃
3 山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 八代英輝弁護士が「共産党は党綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り!
6 自衛隊に横行するいじめ自殺の実態
7 室井佑月の『ひるおび!』降板で麻木久仁子が滝川クリステルに疑問
8 海上自衛隊が「イジメ自殺」を過労死として隠蔽
9 安倍が支援、高市早苗が「さもしい顔して貰えるもの貰う国民ばかり」
10 統一教会が安倍トランプ会談を仕掛けた
11 安倍晋三の総裁選支配に今井尚哉、北村滋の二大側近がまたぞろ暗躍か!
12 高市早苗にネトウヨが総結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、膳場貴子を攻撃
13 DHCテレビが敗訴判決!辛淑玉が語る「犬笛によるヘイト」と判決 
14 自民党政権が「一般病床削減」を継続、看護師5万人削減の計画も
15 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
16 「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上させた自民党応援団!
17 高市推薦、自民党ヒトラー本が怖すぎ
18 ジャパンライフの広告塔に田崎とNHK島田も
19 山口敬之逮捕を握り潰した“官邸の忠犬”中村格が警察庁ナンバー2に!
20 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
1安倍が支援、高市早苗が「さもしい顔して貰えるもの貰う国民ばかり」
2安倍晋三が「統一教会」イベントでトランプと演説!同性婚や夫婦別姓を攻撃
3八代英輝弁護士が「共産党は党綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り!
4菅首相辞任も…元凶を作った安倍晋三が今度は岸田、河野、高市を操る存在に
5高市早苗にネトウヨが総結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、膳場貴子を攻撃
6山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
7八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
8河野太郎がワクチンを総裁選に利用!はじめしゃちょー相手にデマも
9堀江、竹中だけじゃない 菅首相に「がんばった」と同情論寄せる世論
10「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上させた自民党応援団!
11河野太郎が会見で露骨な安倍忖度!森友再調査の質問に答えずワクチンで大嘘
12安倍晋三の総裁選支配に今井尚哉、北村滋の二大側近がまたぞろ暗躍か!
13自民党政権が「一般病床削減」を継続、看護師5万人削減の計画も
14DHCテレビが敗訴判決!辛淑玉が語る「犬笛によるヘイト」と判決 

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄