高校教諭の「子猫生き埋め」事件で思い出す、あの作家の「子猫殺し」事件

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 新聞各紙も噛みついた。《欧米ではペットを飼えなくなる時には、自己責任のもとに安楽死を選択する方法はある意味で当然ともいう。死ぬのは明らかなのに路傍に捨てたり、保健所に持ち込んで、とりあえずペットの死を心理的に回避する日本人との文化的隔たりは大きい》(中日新聞06年10月21日付)。毎日新聞は、物を書くことは《命を尊び、いつくしむ気持ち。そんな土台がなければ成り立ちえない》としたうえで《君は菜食主義者か、と突っ込む人がいるかもしれないがそれとこれとは話が全く違う。彼女が罪悪感から自分の行為を明らかにしたとしても、贖罪にはなりえない。殺すなら、飼うな。さびしさに一人耐え、自分の生をまっとうすればいい》(06年10月13日付)と手厳しい。

 一般読者からの投稿も相次いだ。とあるシングルマザーの主婦は経済的な事情で、飼っていた猫が生んだ3匹の子を面倒見切れず、段ボールに入れて夜中に動物管理センターの門に置いてきた来たと告白。息子と二人、泣きながら家路についたという。別の女性は小学生のころ、軒下に生まれた五匹の子猫を、親たちが橋の上から川に投げ捨てる場面に遭遇した。流れ去る子猫を泣きながら追いかけたが、いずれも流れに飲まれて再び浮かびあがることはなかった。以来「猫殺しの家」との負い目を背負うことになったと綴る。

 この騒動は海を越えた。映画「ベンジー」シリーズのジョー・キャンプ監督は激怒し、「信じられない。理解すらできない」「非人間的であり冷酷。どんな状況下であれ許されないこと」と憤慨した。坂東氏の言う「(避妊と)同じことだ」という論理にも「全く違うレベルの話で、殺人とイコール。彼女が米在住であれば、とっくに刑事罰を受けている」と断罪した。30年以上にわたって捨て犬の里親探しの活動を続けているキャンプ氏ゆえの怒りであろう。

 こうした批判に坂東氏は再び反論する。

《「だったらなぜ避妊手術を施さないのだ」と言うだろう。現代社会でトラブルなく生き物を飼うには、避妊手術が必要だという考え方は、もっともだと思う。しかし、私にはできない。陰のうと子宮は、新たな命を生みだす源だ。それを断つことは、その生き物の持つ生命力、生きる意欲を断つことにもつながる。もし私が、他人から不妊手術をされたらどうだろう。経済力や能力に欠如しているからと言われ、納得するかもしれない。それでも、魂の底で「私は絶対に嫌だ」と絶叫するだろう。
 もうひとつ、避妊手術には、高等な生物が、下等な生物の性を管理するという考え方がある。ナチスドイツは「同性愛者は劣っている」とみなして断種手術を行った。日本でもかつてハンセン病患者がその対象だった。他者による断種、不妊手術の強制を当然とみなす態度は、人による人への断種、不妊手術へと通じる。ペットに避妊手術を施して「これこそ正義」と、晴れ晴れした顔をしている人に私は疑問を呈する。》(毎日新聞06年9月22日付)

 だからと言って無力な子猫を殺していいのかという疑問は尽きないが、意外にもこの論には賛同者もいたのである。坂東氏は騒動が収まった後日、この問題を振り返った本を出版する。対談形式で構成され、登場するのは、音楽評論家の東琢磨氏、ノンフィクション作家の小林照幸氏、作家の佐藤優氏の三人。

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100グラムのいのち ペットを殺処分から救う奇跡の手 (ノンフィクション・生きるチカラ)

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