公害か自己暗示か…携帯基地局に苛まれる「電磁波過敏症」の孤独

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 この症状に苦しめられる人は、国からも市町村からも、電話会社からも何の賠償も受けることが出来ない。基地局の設置は合法的な行為であり、医学的根拠が認められない以上、携帯各社は住民に対しても最低限の説明で基地局を設置していく。無線通信網を全国に張り巡らせることは、3.11以降、防災の観点からも国策として進んでいる。通信網が広がれば広がるほど、電磁波過敏症の人たちは苦しみ、理解からも遠ざかることになる。先述の一家では、症状が悪化した息子を医者に連れて行った際、医者から「母親の愛情不足が原因ではないですか」と言われている。「いかなる健康影響も確立されていません」という発表と、実際の症状には距離があり、無理解がいたずらに当事者を苦しめている。

 基地局周辺の住民が健康被害・不安を訴えても、裁判所や電話会社は「ノセボ効果」を持ち出す。ノセボ効果とは、「自己暗示による効果」のこと。住民が敗訴した宮崎地裁の判決文にはこうある。「反対運動などを通じて電磁波の危険性について情報を得たことにより、電磁波の健康被害の不安を意識したことや、被告の対応に対して憤りを感じたことなどにより、もともとあった何らかの持病に基づく症状を明確に意識するようになった(後略)」。つまり、気のせい、ということ。

 各社がこぞって基地局を設置すれば、その原因を絞り込むことすら難しくなる。周りにいくつもの基地局が並存している場合には、どこの基地局から影響を受けているのかすら特定できなくなるからだ。いくつもの間接的数値と、何人もの健康被害だけが増えている現状にある。

 携帯電話の契約数は昨年のデータで1億3789万件(IT Media)、世帯普及率は一昨年のデータで94.8%(社会実情データ図録)、もはや携帯電話の存在は完全に生活と同化している。同時に電磁波も、生活と一体化している。例えばこのサイトを閲覧するためのPCにしろ、スマートフォンにしろ、電磁波を発しているわけだ。

 メディアの多くは電話会社がスポンサーとなり、多くの広告料をもらっている。それを今件と直接結びつけるのはやや乱暴だが、携帯基地局と電磁波過敏症の関連性をわざわざ問い質すのは躊躇われるだろう。こうして健康被害を抱えた人たちがどこまでも宙ぶらりんにされてしまう。電磁波に苦しむ人々は、一定期間その住まいを離れて、圏外の地域や基地局から遠いところへ逃れると症状が止むという。基地局の近くの家に戻ってくると、たちまち再発してしまう。これもまた「ノセボ効果」と片付けられることになる。

「つながりやすさ」を訴える電話会社に、待ったを申し立てる人はいない。国家も国民も総動員で後押しする、誰もが事業拡大を歓待する稀有な事業と言えるだろう。だが、そこには因果関係が認められない症状に苦しむ人たちがいる。そして彼らは「そんなの気のせいでしょ」と心ない声を浴びる。医学的根拠がない以上、その声は強まっていく。しかし、本書のオビ文に添えられた「せめて理解してほしい」との言葉には耳を傾けるべきではないか。今後ますます症状を抱える人が増えるとされる電磁波過敏症、タイトルにあるように「最後の公害」となってしまうのか。真偽ではなく、まずは症例を知ることから始めたい。
(武田砂鉄)

最終更新:2017.12.13 09:33

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