阪神・淡路大震災から20年も復興費流用が招いた“復興災害”で未だ被害拡大

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 さらに、もうひとつの大きな問題も指摘されている。それが復興費流用だ。これは東日本大震災でも指摘され大きな非難を浴びている問題だが、じつは阪神・淡路大震災でも流用が存在した。

  阪神・淡路大震災に投じられた復興費は16兆3000億円。しかしそのなかで、震災と直接関係しない通常事業に復興費の23%、約3兆8000億円が使われていた。

〈被災地の復興に直接関係しない通常事業の大半は『総合交通体系・情報通信網づくり』の事業(三兆三九一億円)で、そこには本州四国連絡道路等二四九四億円、地下鉄海岸線建設二三五〇億円。関西空港二期埋立八三二六億円といった巨大プロジェクトが目白押しである。いずれもインフラ整備で、それぞれに意味があるとしても、これらが被災者の生活再建や被災地の復興に直接関係ないことは明らかである〉

 しかもこうした流用で次々と巨大なハコモノがつくられていくが、それらの多くは失敗や赤字だった。著者が〈とりわけ、被災者が日々の暮らしに不安を抱いていた震災直後に、市長が復興の『希望の星だ』とぶち上げた神戸空港は、多くの市民の反対を押し切って建設したものの、結局は『赤字の星』となって、いまや市のお荷物と化している〉と綴るように、被災者そっちのけで行われた復興とは直接結びつかない公共事業、インフラ整備に、巨額の復興費が使われていたのだ。

〈結局、復興には多く見ても約一一兆円しか投じなかったのに、一六兆三〇〇〇億円を復興に使ったかのように装い、多くの資金がインフラ整備やハコモノ事業に投じられ、生活再建が後回しにされ、その結果、さまざまな「復興災害」をもたらしたのである〉

 しかも驚きを禁じ得ないのは、この問題が指摘されたのは震災から14年経ってからだった、という事実だろう。

 復興費の流用によって、被災実態に合わない再開発、都市計画が行われ、コミュニティが崩壊し、孤独死も頻発、人口も減少、商店街の風景や人々の生活は激変させられた。こうした国や行政主導の実態に合わない計画や思惑により、一見、外からは復興したように見えても、人々の内実は現在でも“復興”とは言えない状態が存在するのである。

 そして、前述のように復興費流用は東日本大震災でも発生した。しかも、阪神・淡路大震災では行われなかった“増税”により19兆円もの財源を確保し、流用規模も沖縄から北海道、果ては海外までと、類をみないほどの広がりを見せている。その裏には安倍晋三首相による「国土強靭化」政策があるのだが、この問題については、稿をあらためて紹介したい。
(伊勢崎馨)

最終更新:2018.10.18 01:43

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