10歳の教え子をホテルに…教師によるわいせつ事件が頻発する理由

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 2つ目の要因は、周囲の理解の欠如だ。本書で取り上げられている女子中学生の剣道部員と顧問の男性教師のケースは、教師本人はもちろん校長や教育委員会の対応も鈍かったために裁判沙汰になったのだが、思わぬ伏兵が現れたのである。それは、同じ剣道部員の保護者だ。この中学では、顧問の体罰を伴う厳しい指導のおかげで全国大会に出場したこともあり、勝利至上主義の親が「恩をあだで返すのか」「輝かしい実績に泥を塗るのか」と、被害者家族に訴えを取り下げるように言い寄ったという。

 また、高校生の娘が夜な夜な担任から「お風呂あがりか〜」といったメールを受け取っていることに気づいた母親が校長に直訴したケースでは、担任も校長も「悪意はなかった」と反省の色を見せず。それどころか、今度は校長が母親を無理やり食事に連れて行ったり、連絡先を渡したり、セクハラ行為を行ったという。さらには、保護者会では他の保護者から被害者母がやり玉に挙げられ、娘は転校を余儀なくされた。助けを求めた被害者側が、加害者や周囲の保護者にさらに追い詰められる「二次被害」が起こるのだ。これでは、ただでさえ露見しにくいスクールセクハラ被害が、ますます地下に潜ってしまう危険性も高いだろう。

 そして3つ目の要因は、問題を解決する機関がないという構造的な問題だ。教師・学校はもちろん、教育委員会までもが問題を隠ぺいしようとするケースは本書にも多く散見される。その根っこにあるのは、「教師のわいせつ事件は起こらないもの」という前提。「起こらないこと」が起こってしまった場合、「なかったこと」にするのが一番楽な解決法だからだ。しかし、前述のように、いまや教師のわいせつ事件は頻発しているといっても過言ではない。個人の嗜好や人間性の問題に原因を求めるだけでなく、構造的・職業的な要因を分析したり、起きてしまったときにどう調査し対処すべきかというガイドラインを制作したり、学校・教育委員会に求められる問題は山積みだといえるだろう。

 そしてなにより、社会がスクールセクハラに対してシビアな目を向けることが求められている。企業におけるセクハラ、パワハラはなくなっていないものの、社会的問題として認知されたことが功を奏し、ハラスメントに対して意識が高くなった人も多いだろう。スクールハラスメントの場合、被害者は被害を説明できないような幼い子どもだったり、周囲の目が気になる多感な時期だったりと露見しにくい条件がそろっている。だからこそ、社会として問題視していくこと、それが子どもたちを守ることにつながっていくはずだ。
(江崎理生)

最終更新:2014.10.28 12:00

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