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水木しげるが最期の仕事で綴った、戦争による死への恐怖と平和への思い「戦争に行くのが嫌で嫌で仕方がなかった」

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『ゲゲゲのゲーテ 水木しげるが選んだ93の「賢者の言葉」』(双葉社)

 昨年11月30日、多臓器不全のため93歳で亡くなった水木しげる。後世の漫画家たちにあまりにも大きな影響を与えた巨匠でありながら、90歳を超えても旺盛に新作をつくり続けていた彼の突然の死に日本中が悲しみに包まれたのを昨日のことのように覚えている読者も多いことだろう。

 そんな水木しげるが生涯の最期に残した仕事が出版され大きな話題を呼んでいる。その本の名は『ゲゲゲのゲーテ 水木しげるが選んだ93の「賢者の言葉」』(双葉社)。『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』などでおなじみの、あのゲーテに関する本である。水木しげるはこの本を校了させた翌日に転倒、緊急入院となってしまったのだと言われている。

 ゲーテと水木しげる、少し意外な組み合わせだが、本人が〈水木サンの80パーセントはゲーテ的な生き方です〉と語るほど、水木しげるにとってゲーテの言葉は人生の指針であり続けてきた。そんな水木しげるとゲーテとの出会い、そのきっかけは「戦争」であった。

〈ゲーテと聞くだけで、今でも背筋がしゃんと伸びるような気がします。ゲーテの助手、エッカーマンが書いた『ゲーテとの対話』(岩波文庫、全三巻)は水木サン(水木氏の場合、これが一人称)にとって一番大切な本でしょうね。
 少年のころ、戦争が始まって憂うつでした。戦争に行くのが嫌で嫌で仕方がなかった。死ぬのが恐ろしかったのです。遠からず、弾丸が飛び交う戦地に行くと思うと、「人生って何だろう」と探求したい気持ちがわき起こってきました。
 本を読みあさった。河合栄治郎という偉い先生が編んだ青年のための読書案内で、お勧めのマル印がある本を片っ端から読みまくり、人生を深く考察し始めたのです。
 ニーチェやカントやショーペンハウエルを読みました。小難しかったり、堅苦しかったり、虚無的だったりしましたが、我慢して読み進めました。倉田百三の『出家とその弟子』も読んだ。聖書も読んだ。小説も山ほど手にしました。
 とりわけ『ゲーテとの対話』には生きていく上の基準が満載されていました。偉ぶらないで自分のことは自分でやり、世の中を偏狭にではなく幅広く見ていて、すなわちゲーテは偉いと感服したわけです。詩人で小説も書き、ドイツのワイマール公国宰相にもなったのだから賢いはずです。
 人生とは何かはとうとう分からずじまいでした。ただ、生きていること自体の燦然とした輝きに目がくらみ、「死にたくない」と痛切に思いました〉

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