出版ラッシュ!関東連合本の“紙上バトルロワイヤル”を読み解く

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 本書のなかには瓜田についての言及もある。「そもそも関東連合とは無関係なのに、あそこまで関東連合に固執する神経が私にはわからない」と記すなど、その評価は冷淡だ。

「彼の話はどこまでが嘘でどこまでが冗談なのか、よくわからない」
「早くから『2ちゃんねる』の世界の住人となっていた瓜田は、ネットの中でアウトローを自称してきた」(工藤明男『破戒の連鎖』)

 本書のなかで工藤は、「関東連合に対して巨大な妄想を膨らませる」ことを“関東連合シンドローム”と名付けている。なるほど、ネット上には「関東連合」に関する言説が溢れている。悪評から武勇伝、はては「◯◯のA君は、たった一晩で200人を半殺しにした」などというような、にわかに信じられないような噂も多く、もはや都市伝説のような様相すら呈している。こんな状況を見ていると、大衆が欲しているのは関東連合の“真実”ではなく、最凶最悪のアウトローたちという“幻想”ではないかとすら思える。

 だが“関東連合本”を読む限り、現実の彼らは人間である。たしかに、常識外の逸話は数あるし、本当に常軌を逸しているとしか思えない人物も描かれてはいるが、大半の人物は、普通に笑い、普通に傷つき、そして普通に後悔している。

「もう終わりにしたいです」(瓜田純士『遺書』)
「本当になぜ仲間同士でこんなことになってしまったのだろう」(石元太一『反証』)
「自分の過去や経歴を誰も知らない国、『関東連合』など誰も知らない国で暮していきたい――」(工藤明男『破戒の連鎖』)

 私たちは“関東連合本”で描かれる彼らの不良人生を、エンターテイメントとして消費するだけでよいのだろうか。あるいは、跳ね上がりの「犯罪者」として片付けてしまって、それですむのだろうか。

 人が殺されている。そのとおりだ。しかし、彼らがアウトローとしてしか生きられなかったのだとすれば――それは、社会のなかにあらかじめ“悪の構図”として仕込まれていたような気がしてならないのである。
(HK・吉岡命)

最終更新:2014.07.29 03:59

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