出版ラッシュ!関東連合本の“紙上バトルロワイヤル”を読み解く

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「この命令を呑めば、僕は関東連の内部では、工藤の格下ということになる。何年も何年も、あいつに先輩面されて、頭を下げ続けないといけなくなる。ふざけんな、やるわけねえよ……!」(瓜田純士『遺書』)

 このように、瓜田の本には工藤に対して批判的な描写がいくつか見受けられるのだが、最近、週刊誌「FLASH」(7月29日・8月5日号)で、工藤についてこのように語った。

「(関東連合とK村兄弟が互いに対して)不快感が徐々に積もっていったなかで、(K村)兄と関東連合の幹部だった工藤明男が揉め事を起こしてしまう。成り行き上、僕が立ち会って“手打ち”をし、今回のトラブルは誰にも言わないことにしようと3人で約束しました。それなのに工藤は約束を破って、関東連合の先輩にしゃべってしまうのです。そのことで、関東連合とK兄弟は深刻な対立状態になるのです」

 いずれにしても、工藤明男が六本木クラブ襲撃事件の原因を見立容疑者の恐怖支配にあるとしたのに対し、瓜田はK村兄弟と関東連合の些細なすれ違いがきっかけだとした。しかも、その遠因は工藤明男にもあることをほのめかしたのだ。

 工藤明男と瓜田純士の対立——。その構図に割ってはいったのが、石元太一被告の『反証』である。

 事件の当日、石元被告は“六本木のクラブにK村弟が来店”との情報を入手し、それを実行犯らに伝えた。これが共謀にあたるとして東京地裁から懲役11年の判決を下され、現在控訴中である。本書では、事件の道義的責任こそ感じているが、徹底して自分は無罪だと主張。「不利な証拠の捏造、改竄」や「検察の強引な主張」、そして関係者らの「不可解な証言」を強調する。なかでもそのひとり、関東連合の先輩である工藤明男については、相当の不信感を募らせているようだ。

 工藤は石元被告に「太一のことだからお母さんのことが心配だろ。してほしいことがあったら何でも言ってくれ」と弁護士を通じて伝言をしていたという。石元被告も当初は「本気で心配してくれているのだと、すっかり信じてしまっていた」。

「しかし、俺が起訴されてから少し経つと、彼からの伝言はパタリとなくなった。何かあったのかなくらいに心配をしていたら、今回の本(『いびつな絆』)が出版されていた。それでやっとはじめて気付いたよ。縁を切ったはずの工藤が一体なぜ急に俺に接触してきたのか、その理由と目論みが。」(石元太一『反証』)

 どういうことか? 石元被告の事件における責任が大きくなればなるほど、工藤が支援している2名の被告は相対的に減刑される。また、工藤は暴露本執筆の動機として「関東連合の実態解明の一助」「事件の真相解明」を挙げているが、実際は見立真一容疑者への“憎しみ”からではないか、そう石元被告は言うのである。彼は公判の最終意見陳述でも“工藤に陥れられて主犯格にでっちあげられた”という旨の発言をしている。

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