あの芸人もハマってる! ひそかなブームの“スナックあるある”

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
snackaruaru_140703.jpeg
『スナックあるある』(講談社)

 中高年の憩いの場・スナックが密かに再ブームの兆しをみせている。とはいうものの馴染みの無い人にとって「年配のママ」「低料金セット」「昭和歌謡のカラオケ」といった一般的なイメージ以外は、あの大仰な扉の中で何が繰り広げられているのか分からないのも事実。食べログのレビューにも載っているわけがない。

 その実態を、愛情あふれる視点で紹介しているのが、『スナックあるある この素晴らしき魑魅魍魎の世界』(講談社)だ。著者は人気漫才コンビ・浅草キッドの玉袋筋太郎氏。仕事だけでなくプライベートでも全国のスナックに飛び込み入店し、一般社団法人“全日本スナック連盟”を立ち上げ、ブームをゆるく牽引する生粋の“スナッカー”である氏の実地体験に基づくネタは、知られざる店内魔境の魅力(魔力?)を浮き彫りにしている。

 まず、のっけから「ミネラルウォーターは水道水に決まってる」と断言。晒しのカウンターだからこそ隠しそうなものだが、皿に移して「スーパーで買ってきた惣菜を、手作りよ、と言って出してくる」ママには、巷で話題の食品偽装問題も関係なし。「出勤前はカーラー巻きながら犬の散歩が日課」であり、いつまで経っても「年齢を聞くと“永遠の39歳”」と言い切る。その微妙な年齢設定にツッコミたくなる気持ちはさておき、なぜか「ママの娘が可愛いすぎる」事実に生命の神秘を感じずにはいられない。

 そんなママを慕って集まるのは「尻のポッケに日刊ゲンダイ」を常備し、「他の客が歌っているカラオケの、どんな曲でもチークを踊りだすオヤジ」や「最初から最後まで寝ている客」といった憎めない(?)面々たち。「今日は年齢層が高いな、と思ったら年金支給日」という押し寄せる高齢化社会を体感できる事実も見逃せないが、「常連のおじいさんのグラスの中をよく見ると、なんだかわからない粒が浮遊している」現象はもはや現代科学では証明できない。

 さらに店内を見渡せば「阿藤快の色紙の横にある判読不明な有名人のサイン」や「10代くらい前のキャンペーンガールのポスター」が壁を彩り、「ピンク電話が現役」で大活躍。地方スナックにくり出すと「マスターには上京の過去」があり、「テーブルが未だにジャンピューター」の店内には「動かないジュークボックス」が鎮座……。もはや70年代東映映画の世界そのものである。

 そんな愉快な魑魅魍魎の世界から滲み出るのは、情報化社会に毒され、無味無臭で均一化されている現代人とは対照的な、剥き出しの“生き物感”ではないだろうか。恥をかかないように、ミスをしないように頭でっかちになり、周りの目ばかり気にする日々がばからしく思えてくるから不思議だ。そして「椅子ごと移動して『ヤドカリ!』とギャグをかます客」や「私服が大リーグジャンパーのおじさん」たちから漂う哀愁に、ほっこりさせられることは言うまでもない。

 会社では後輩との慣れないSNS付き合いに気を使い、キャバクラで跳ねる元気もない、高級クラブをふんぱつしようと思っても頭にチラつく残業代ゼロ法案……。そんな疲れた御仁がカッコつけなくても、つくろわなくても、久しぶりにウケるか分からない下ネタを言ってしまっている湯加減がたまらない、癒しの鈍色空間・スナック──。優良店の見分け方は? 高齢アルバイトレディが唯一知っているスイーツとは? それらを知りたければ本書を読み、「ライオンのノックノブの扉」を開けて欲しい。そうすれば、貴方もいつの間にか「今日もまた グラス片手に 天城越え」が板についたスナッカーになっているかも知れない。  
(文=藤谷良介)

最終更新:2018.10.18 05:56

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

スナックあるある この素晴らしき魑魅魍魎の世界

関連記事

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

あの芸人もハマってる! ひそかなブームの“スナックあるある”のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。あるある中年の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 菅首相が米メディアから「五輪を進めるのは無責任」と質問され無視する愚行
2 マリエ問題で出川はCMゼロも…松本人志も公の電波で枕営業を煽る発言
3 日本城タクシー坂本社長が橋下徹を再び論破!「アホな議論」と一刀両断
4 名古屋リコール不正で維新市議が関与を証言!吉村知事、松井市長の責任
5 吉村知事は自己正当化モンスター!「重症センター」縮小をつっこまれ
6 吉村知事への批判がテレビでも…北村教授、日本城タクシー社長、小木博明も
7 汚染処理水・海洋放出の蛮行に加え安倍が顧問の「原発新増設」推進議連
8 橋下徹が西村大臣のPCR検査擁護で検査封じの責任に頰被り
9 海外から批判も政府と組織委は五輪強行、選手に特別な感染対策を実施
10 櫻井よしこ、西岡力、文春…朝日・慰安婦報道叩きのデタラメが次々露呈
11 菅首相が緊急事態宣言を出さないのは五輪開催のため ワクチンも五輪選手優先
12 もはや権力の「中の人」…御用ジャーナリスト5位〜2位、大賞を発表
13 菅首相が「まん防」で宣言解除の“責任ごまかし”図るも、変異株拡大で手遅れ
14 DHC吉田会長がNHKに「社員のほとんどがコリアン系」とヘイトデマ
15 葵つかさが「松潤とは終わった」と
16 バイデン大統領就任でも日本のトランピストのフェイクは止まらない
17 竹田恒泰の「差別主義」を認めた東京地裁の判決文を改めて紹介
18 橋下徹がコロナ対策過剰論を主張するため「熱中症ではそんな対策してない」
19 極右ヘイトの企業経営者総まくり(前)
20 『名探偵コナン』の公安礼賛がヒドい
1吉村知事は自己正当化モンスター!「重症センター」縮小をつっこまれ
2日本城タクシー坂本社長が橋下徹を再び論破!「アホな議論」と一刀両断
3菅首相が米メディアから「五輪を進めるのは無責任」と質問され無視する愚行
4池江璃花子復活劇を五輪強行派が利用! 門田隆将や安倍前首相も便乗ツイート
5名古屋リコール不正で維新市議が関与を証言!吉村知事、松井市長の責任
6吉村知事への批判がテレビでも…北村教授、日本城タクシー社長、小木博明も
7「桜前夜祭」問題で辞職した安倍事務所の配川秘書が密かに復職か!
8NHKが聖火リレー中継から五輪反対の声をカット!北京五輪のような情報統制
9萩生田文科相「子どもが変異株に感染しやすいという知見ない」とデマまがい
10汚染処理水・海洋放出の蛮行に加え安倍が顧問の「原発新増設」推進議連
11菅首相が緊急事態宣言を出さないのは五輪開催のため ワクチンも五輪選手優先
12DHC吉田会長がNHKに「社員のほとんどがコリアン系」とヘイトデマ
13海外から批判も政府と組織委は五輪強行、選手に特別な感染対策を実施
14マリエ問題で出川はCMゼロも…松本人志も公の電波で枕営業を煽る発言

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄