大村知事が「公権力こそ表現の自由を尊重」の真っ当主張に、杉田水脈や維新の松井・吉村が醜悪な“圧力正当化”

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大村ひであき公式WEBサイトより


「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が開幕からわずか3日で中止に追い込まれてしまった問題。ところが、ネットやテレビのワイドショーでは、テロ予告をした人間や圧力をかけ攻撃を煽った政治家を非難するのでなく、“慰安婦像”を展示した「あいちトリエンナーレ」や芸術監督の津田大介氏への非難が渦巻くという異常な事態になっている。

 日本という国の「表現の自由」への意識の低さに絶望的な気分になるが、そんななかで見直したのが、大村秀章・愛知県知事だ。大村知事は「あいちトリエンナーレ2019」実行委員会会長で、展示中止を決定した当事者でもあるが、一方で、圧力をかけた政治家や展示を批判した右派メディアに真っ向から反論し、「表現の自由」をギリギリのところで守ろうという姿勢を見せたのだ。

 大村知事は、5日の定例会見で、県に対し新たに「私の部下・青葉真司が実行した京都アニメーションへの放火はお楽しみいただけましたでしょうか」「市民たちが怯えながら避難する様は滑稽でした」「●日●時●分に愛知県芸術文化センター等にガソリンを散布します」という脅迫メールが届いたことを明かし、新たな脅迫があったことを発表。「卑劣なメールが来ることは言語道断」と脅迫行為を強く非難した。

 そして、8月2日に河村たかし・名古屋市長から届けられた「『表現の不自由』という領域ではなく日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない。厳重に抗議するとともに中止を含めた適切な対応を求める」という“公文書”を読み上げ、さらに、翌3日に日本維新の会・杉本和巳衆院議員から出されていた「不適切」として中止を求める要望書に言及。「これについて私の考えを述べたい」とし、こう語ったのだ。

「河村さんの一連の発言は、私は憲法違反の疑いが極めて濃厚ではないか、というふうに思っております。憲法21条はですね、《集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する》《検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない》というふうになっております。このポイントはですね、国家があらかじめ介入してコントロールすることはできない、ようは既存の概念や権力のあり方に異論を述べる自由を保障する。ようは、公権力が思想内容の当否を判断すること自体が許されていないのです」

 河村市長の申し入れはあきらかに憲法違反の権力による検閲行為だ──。至極真っ当な、ごくごく当たり前の指摘だが、しかしこの間、政権幹部をおろか、共産党を除いてはここまではっきり姿勢を示した与野党政治家はほとんどいなかった。そんな状況下で、実行委員会会長である大村知事が明確に打ち出したことは、とても勇気のあるものだ。

 それだけではない。大村知事は続けて、「表現の自由」の原則を無視した発言が相次ぐ世論に対しても、このように反論したのだ。

「最近の論調で、いわゆる“税金でやるならこういうことをやっちゃいけないんだ、自ずと範囲が限られるんだ”ということをですね、ネットでいろんな意見が飛び交っているのはこれは匿名の世界であれかもしれませんが、いろんな報道等でコメンテーターの方がそういうことを言っておられる方がいるようですが、逆ではないかと思いますね。これは行政、国、県、市、公権力をもったところだからこそ表現の自由は保障されなければならない、と思います。というか、そうじゃないんですか? 税金でやるからこそ、公権力であるからこそ、表現の自由は保障されなければいけない。わかりやすく言うと“この内容は良くて、この内容はいけない”ということを公権力がやるということは、許されていない、ということではないでしょうか」
「いちばん酷いのはね、“国の補助金もらうんだから国の方針に従うのは当たり前だろう”というようなことを平気で書かれているところがありますけど、みなさん、どう思われます、それ? ほんとうにそう思います? 私、まったく真逆ではないかと思いますよ? 税金でやるからこそ、むしろ憲法21条はきっちりと守らなくてはいけないのではないでしょうか。この数日間、“ちょっと待てよ”とつらつら考えて、非常に違和感覚えております」
 

河村たかし、維新の松井一郎、吉村洋文に真っ向反論した大村知事

 まったくその通りとしか言いようがないだろう。本サイトでも指摘してきたように、「表現の自由」は国から補助金をもらっているかどうかとはまったく関係なく保障されるべきものだ。「国から金をもらっているのだから国の言うことを聞かねばならない」という論理がまかり通れば、表現文化が死滅するのはもちろん、最終的には「生活保護を受けているんだから政府批判するな」という論理にまで発展しかねない。

 だが、この「表現の自由」を踏みにじる発言を平気でしているのが、いま、安倍政権のまわりにいる政治家たちだ。和田政宗らネトウヨ議員や松井一郎大阪市長はもちろん、政府首脳である菅義偉官房長官も2日の会見で「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と述べて展示物を確認して補助金交付の是非を検討すると発言。柴山昌彦文科相も同日「事業の目的と照らし合わせて確認すべき点が見受けられる」などと牽制した。メディアも同様だ。産経新聞は〈公金を使ったイベントとして公平性に欠ける不適切な内容〉〈公的な芸術祭の運営には、公益に配慮した冷静さが必要〉などと批判していた。

 こんな暴論が飛び出すなかで、大村知事ははっきりと「公権力を持ったところであるからこそ、表現の自由は保障されなければならない」「税金でやるからこそ、憲法21条はきっちり守られなければならない」と語ったのだ。

 その上で、再び河村市長の“圧力”行為に対し、大村知事は畳みかけるように厳しく批判をおこなった。

「この文書ね、河村さんから来た文書……河村さん、得意気になって、いろんなところで、胸を張ってこの発言をテレビのカメラの前で言われていますけどもね、河村さんが実行委員会の会長代行なんですね。市長で、市の代表です。“市の負担金2億円を含むこういう税金を使われるんだ”と、“だからこの内容については、この内容はここまでならいいけどこれ以上はいけない”と書いてあるんですね、これ。で、中止しろと書いてあるんですね。これはですね、河村さんはまさに市長さんで、予算を出すまさに権力者、公権力を行使される方ですね。こういう公権力を持った方が“この内容は良い、この内容は悪い”と言うのは、憲法21条の言う検閲と取られても仕方がないんじゃないでしょうか。検閲には事前だけではなく事後検閲もありますからね。これ(文書)はまさに『止めろ』と言っているんだから、そういうことになるんじゃないですか?」
「憲法21条に照らして、(河村市長の文書の内容は)いかがでしょうか? みなさん、どうお考えになりますか? 私は非常にですね、疑問があります。憲法21条違反の疑いが非常に濃厚ではないかというふうに思います。一私人が言うのとは違うんですよね。そのことはもっと自覚されたほうがよかったんではないかと思います。これ、裁判されたら直ちに負けますよ、完璧に」

 さらに、大村知事は日本維新の会の姿勢にも言及。河村市長に対して松井一郎代表が「どうなっているんだ」と電話をかけたことや、吉村洋文・大阪府知事も大村知事を非難して〈「知事辞職勧告決議」じゃないか?〉などとツイートしていたことなどを挙げ、中止を求める要望書についても「維新の会というのは憲法で保障された表現の自由を認めない方々なのか、と。憲法21条をまったく理解していないのかと思わざるを得ない」と強く抗議したのだった。

杉田水脈が「表現の自由は公共の福祉の制限を受ける」差別発言のお前が言うか

 河村市長や松井代表、吉村府知事といった極右政治家たちの蛮行に対し、「憲法を理解していない」と言い切った大村知事。

 しかも、大村知事の言葉で印象的だったのは、「表現の自由」の重要性をメディアに対しても強く訴えていたことだ。テレビのコメンテーターや報道が「公金を使っているんだから、国の方針に従うのは当たり前」という論理を口にしていることを強調し、「税金を投入するものだからこそ表現の自由は優先されるべきだ」という主張の際には、記者に向かって何度も「そう思いませんか?」「そうじゃないんですか?」と問いかけていた。これは、メディアが表現の自由を踏みにじるような攻撃に加担している今の状況に強い危機感を抱いたからだろう。

 メディアから批判される立場の行政の長が、メディアに対してここまで「表現の自由」を貫くことの重要性を強調し、国民の側に立ってその権利を主張した、というのはほとんど前例がないのではないか。

 だが、大村知事のこうした真っ当な反論にも関わらず、右派や歴史修正主義者からは大村知事に対する凄まじいバッシングが起こっている。

 ネトウヨ連中が「反日知事」「知事の座から引きずり下ろせ」、さらには「逮捕しないといけない」などと喚き立てているのをはじめ、安倍応援団や右派文化人、極右政治家も一斉に大村攻撃を始めた。

 有本香は〈一人の日本国民として、大村知事(あいちトリエンナーレ実行委員会会長)と津田大介芸術監督の国会参考人招致を強く希望します〉と、まるで二人が犯罪でも犯したかのように糾弾。また、杉田水脈衆院議員は「大村知事が河村市長を「憲法違反が非常に濃厚」 河村市長は反論 「少女像」撤去要求で」という毎日新聞の記事にリンクを貼った投稿で、こう投稿した。

〈憲法第21条で保障されている表現の自由は、「公共の福祉」による制限を受けます…〉(8月5日15時59分)

 これぞお前が言うか、というセリフだろう。表現の自由が公共の福祉による制限を受けるとすれば、刑事犯罪につながる表現や杉田の「生産性がない」発言のような差別を行ったケースであって、今回のような歴史的事実に向き合うための表現や天皇タブーによる検閲を描いた芸術作品が「公共の福祉」に反するわけがないではないか。

 しかし、自分たちのヘイトや歴史修正主義発言を「表現の自由だ」と正当化しながら、国民の表現の自由だけを制限しようとしている二枚舌は、杉田のようなネトウヨ政治家だけではない。

 唖然としたのは、大村知事に批判された河村たかし・名古屋市長や維新の松井一郎・大阪市長、吉村洋文・大阪府知事の反論だ。行政の長である彼らが、杉田と同じように“表現の自由は公共の福祉で制限される”“税金が投入された国の補助事業なんだから介入するのは当然”というような、「表現の自由を制限せよ」論を堂々と主張し始めたのだ。

自民党に共闘呼びかけ圧力かける維新・吉村知事、テロ・脅迫の例外を示唆した菅官房長官

 なかでも、ひどかったのが吉村大阪府知事だ。吉村知事は〈維新は表現の自由を全く理解していないらしいです。日本維新の会の国会議員の皆様、是非この問題は国会でも取り上げて下さい〉と、維新に大号令をかけたうえ、こんな卑劣な投稿までしていた。

〈自民党の皆様、この件に関しては、党派を超えて共闘をお願いします。我々維新の会は、愛知県議会で議席がなく発言できませんが、愛知県議会自民党は過半数があります。行政たる愛知県が主催する公共事業で、慰安婦像、天皇の写真を焼却、ありえません。知事は開き直ってます。〉

 自民党にまで共闘を呼びかけ、大村知事に圧力をかける卑劣。さらには作品の趣旨をまったく理解せず「ありえません」と断じる横暴。これでは「維新は表現の自由を全く理解していない」としか言いようがないだろう。

 さらにも政治家ではもう一人、悪質な存在を指摘しておく必要がある。安倍政権のナンバー2である菅義偉官房長官だ。菅官房長官が「補助金」問題をチラつかせてあいちトリエンナーレへの理不尽な攻撃を煽ったことは指摘してきたが、菅官房長官はテロ予告があった後も、会見でこう発言したのだ。

「一般論として、暴力や脅迫はあってはならない」

 政府首脳が民主主義を揺るがすテロや暴力を非難する際は「どんな場合も」とつけるのが普通なのに、「一般論として」。「例外」なら暴力や脅迫は許されるとでも言わんばかりのセリフではないか。政権幹部がこんな姿勢なら、脅迫やテロ予告が治らないのも当然だろう。

 この「表現の不自由展」問題をめぐって、まさに政治家たちのグロテスクな本音が漏れでてきたわけだが、しかし、案の定、テレビはこうした権力者たちを批判することはまったくなかった。

『報道ステーション』(テレビ朝日)と『NEWS23』(TBS)が大村知事の河村市長批判を取り上げたくらい。『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)をのぞけば、ほかのワイドショーはほとんど触れることもしなかった。

 まったく暗澹とさせられる日本の言論状況だが。そのなかで救いはやはり、行政の長である大村知事が「表現の自由制限論」と真っ向からたたかっていることだ。大村知事には、今後もこの状況に屈することなく、いまの主張を続けてほしい。そして、中止になった「表現の不自由展・その後」を安全確保ののち再開することで、表現の自由を貫いてほしいと切に願っている。

最終更新:2019.08.07 12:09

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