横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」59

イージス・アショア山口と秋田配備はやっぱり米国への貢物! 米シンクタンクが「日本列島が太平洋の盾になる」

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イージス・アショア山口と秋田配備はやっぱり米国への貢物! 米シンクタンクが「日本列島が太平洋の盾になる」の画像1


「安倍政権(首相)は、国民の血税と領土の一部を米国に献上するに等しい“売国奴的下僕外交(政治)”をしているのではないか」

 こんな疑問が湧き上がってきたのは7月3日、山口県庁での謝罪面談を終えた岩屋毅・防衛大臣の会見での質疑応答のときのことだ。「グアムを守る、米国を守る前線基地になるというアメリカのシンクタンクの論文があるが、これで住民の理解は得られると思うか」との筆者の問いに、こう答えたのだ。

「その論文については私も拝見しておりますが、このミサイル防衛体制というのはあくまでも我が国の防衛のために行うものであり、『米国の防衛をする』という指摘は当たらないと思っているし、もとより米国は我が国よりも相当に強固なミサイル防衛体制を常にお持ちであると理解をしている」

 この論文のタイトルは「Shield of the Pacific:Japan as a Giant Aegis Destroyer」(太平洋の盾 巨大な“イージス駆逐艦”としての日本列島)で、歴代自民党政権とも密接な関係を有するジャパンハンドラーの米国民間シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が昨年5月に発表したものだ。福留高明・元秋田大学准教授が昨年8月にFacebook上で要点を投稿、地元紙の秋田魁新報が福留氏のコメントと共に紹介し、広く知られるようになったが、論文の要点は「いまや日本は巨大な『イージス駆逐艦』としての役割を構築しようとしている」ことを次のように指摘する内容だった。

「日本に2箇所のイージス・アショア拠点が実現すれば、太平洋地域のミサイル防衛能力を増強する重要な第一歩となるだろう。そして、その潜在的可能性は計り知れない」
「今回、秋田・萩に配備されるイージス・アショアのレーダーは、米国本土を脅かすミサイルをはるか前方で追跡できる力をもっており、それによって、米国の国土防衛に必要な高額の太平洋レーダーを建設するためのコストを軽減してくれる。このことは日米同盟を強化するだけでなく、そのレーダーを共有することでおそらく10億ドル(約1100億円)の大幅な節約が実現できる」

 この論文を読めば、誰もがこんな思いを抱くだろう。安倍首相はトランプ大統領の要請を受けてイージス・アショア購入を決定、米国防衛費節約に貢献する一方、日本国民(納税者)には莫大な請求書が付け回され、日本領土の一部(秋田と山口の陸上自衛隊演習場)を米国防衛前線基地として献上する事態にも至った、と。

 山口と秋田へのイージス・アショア配備で日本列島が「太平洋の盾」となると書いてあるのに、不可解なことに岩屋防衛相は「我が国の防衛のため」と言い張った。「同じ論文を読んで正反対の認識に行き着く岩屋氏の思考回路はどうなっているのか」という新たな疑問も抱きつつ、「山口沖にイージス艦を置けば、代わりになるのではないか」と質問を続けると、再び驚くべき回答が返ってきた。

「イージス艦の場合には、どうしても船でありますので、隙間が生じることになります。(イージス・アショアのように)やはり24時間365日、ミサイル防衛に専念できる装備・部隊・施設というのは必要だと考えています」

 イージス・システムは、隣国から放たれた弾道ミサイルを強力な電波を発するレーダーで軌道を割り出して迎撃ミサイルで撃ち落すものだが、海上のイージス艦に置こうが、陸上にイージス・アショアを配備しようが、基本的機能に差はない。もちろんイージス艦の場合、船の定期的な点検整備や乗組員交代が不可欠だが、予備船を用意してローテーションをすれば、隙間が生じることはない。しかもイージス艦は現在の6隻を8隻にする計画が進行中であり、山口沖と秋田沖に停泊させておけば、わざわざ陸上にイージス・アショアを配備させる必要はなくなるのは明らかなのだ。

岩屋毅防衛相に「海上ではなぜダメなのか」と直撃したところ、ひどい言い訳が

イージス・アショア山口と秋田配備はやっぱり米国への貢物! 米シンクタンクが「日本列島が太平洋の盾になる」の画像2
謝罪面談する岩屋防衛大臣(撮影・横田 一)


 納得がいかなかったので、「陸でも海でもイージス・システムは同じではないか。なぜ海上(イージス艦)では駄目なのか」と再質問をしたが、また説得力に乏しい回答しか返ってこなかった。

「海上の場合はミサイルの発射手段が非常に多様化してきていますので、予め兆候を察知して、そこに向かって船を出すことが非常に難しくなってきております。地上で万が一のミサイル迎撃に備える体制を整えることは非常に我が国のミサイル防衛体制にとって不可欠だと思います」(岩屋氏)

 これも理解不能な回答だ。現在の6隻から8隻にするのだから山口沖と秋田沖への常駐は可能だし、そもそもミサイル発射の兆候を予め察知して、そこに移動させることは陸上配備型のイージス・アショアでは不可能なのだ。

 山口沖へのイージス艦常駐について何度も訊いたのは、イージス・システムを海上と陸上のどちらに配備するかで日本国民への影響はまったく違うからだ。海上のイージス艦なら電波による健康被害も迎撃ミサイルの落下物リスクもほとんどないが、陸上のイージス・アショアはこの二つの弊害だけでなく、有事の際に攻撃対象になるリスクも加わる。住民が住みたくなくなる危険エリアを日本の領土内につくり出す弊害もあるのだ。

 こう思いながら「山口沖に置くのと(山口県のむつみ演習場に配備予定の)イージス・アショアで何が違うのか」と畳み掛けたが、岩屋氏は「だから常に山口沖に置くわけにはいかないということです」と同じ回答を繰り返したので、「8隻になるから置けるのではないか」と問い質すと、ついに”売国奴的安倍下僕外交(政治)”を裏付ける発言が岩屋氏から飛び出した。

「そんなことはない。イージス艦の任務は多様ですので、ミサイル防衛だけに特化をして運用するわけにはいかないわけです」

 これを言い換えると、「もともとはイージス艦を倍増して対応する計画だったが、途中でイージス・アショアが割り込んできたので、過剰となったイージス艦を他業務に回すことにした」となる。


イージス・アショア配備こそが参院選の争点だ!

 トランプ大統領の米国製兵器爆買い要請に「NO!」と言えない“安倍下僕外交”のせいで、日本国民の莫大な血税を召し上げられると同時に、日本の領土の一部が有事の際に攻撃対象となる米国防衛前線基地として譲り渡すことにもなったともいえるのだ。

 イージス・アショア2基購入を2017年12月に閣議決定した前月、安倍首相は日米首脳会談でトランプ大統領の失礼な冗談にまったく反論できずに「忠実な子分の役割を演じている」(Japanese leader Shinzo Abe plays the role of Trump's loyal sidekick)」(ワシントン・ポスト)と酷評されたが、米国製兵器購入の要請に対しても「イージス艦の量、質を拡充していく上において、米国からさらに購入をしていくことになっていくだろう」と快諾、“下僕外交”に邁進したといえる。その結果、防衛省は急に購入が決まったイージス・アショア購入によって、過剰となったイージス艦の説明をする必要が生じたようにみえる。

 5月27日に配布された防衛庁の説明用資料「イージス・アショアの配備について」には、必要性等について次のように書いてあった。

「我が国周辺において、警戒監視任務等の所要が大幅に増加しています。
 イージス・アショアの導入により、イージス艦を弾道ミサイル防衛以外の任務や訓練に充てられるようになり、我が国の対処力・抑止力を一層強化することになります」

 米国製兵器爆買い要請があった日米首脳会談の翌月(2017年12月)にイージス・アショア2基購入が閣議決定された経過と、米国シンクタンクの論文「太平洋の盾 巨大なイージス駆逐艦としての日本列島」を並べ合わせると、「外交の安倍」という参院選向けのキャッチフレーズは「下僕外交の安倍」に言い換えると、その実態がより正確に伝わるのではないか。

 参院選の争点が浮き彫りになってくる。「国民の血税で不必要なイージス・アショアを爆買い、日本の領土の一部を米国防衛前線基地として譲り渡すに等しい“安倍下僕外交(政治)”を続けるのか否か」ということだ。配備候補地の山口と秋田だけでなく、全国の国民(有権者)に関係するのだ。

最終更新:2019.07.12 12:09

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