テレビ朝日株主総会大荒れ! 経済部長を左遷した「官邸忖度人事」と幻冬舎・見城社長の「番組審議会解任」要求の質問

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テレビ朝日ホールディングスHPより


 政権に批判的な記者やアナウンサー、コメンテーターを報道番組から次々に追いやるなど、着々と“安倍政権御用化”が進んでいるテレビ朝日だが、去る6月27日に行われたテレビ朝日ホールディングスの株主総会が“大荒れ”だったらしい。総会の終盤、早河洋会長が切り上げようとしたところで、例の、麻生太郎財務相を追及していた経済部長を報道局から追放した“官邸忖度人事”についての質問が飛び出したという。

「早河会長が『ではそろそろ』と言って終わりにしようとしたとき、株主のひとりが手を上げて、M経済部長の異動人事を強く批判したのです。受けた早河会長は、株主が具体的に質問しているにもかかわらず『質問をまとめてください!』などと言うなど、明らかに苛立っていましたね」(テレビ朝日関係者)

 本サイトで先日お伝えした(https://lite-ra.com/2019/06/post-4792.html)ように、この人事は、テレビ朝日で政権を追及してきた経済部長のM氏が、報道とは関係のない「総合ビジネス局・イベント事業戦略担当部長」なるポストへ異動になるというもの。M部長は古舘伊知郎キャスター時代、“『報道ステーション』の硬派路線を支える女性チーフプロデューサー”として有名だった女性だ。2016年に『報ステ』で手がけた特集「独ワイマール憲法の“教訓”」は、その年の優れた番組に贈られるギャラクシー賞の大賞(テレビ部門)を番組として受賞している。

 だが、それゆえにM氏は官邸やテレ朝上層部から睨まれてきた。2015年、ISによる後藤健二さん、湯川遥菜さん人質事件が起きたさなか、ISを刺激する安倍首相の発言を批判して、コメンテーターの古賀茂明氏が「“I am not ABE”というプラカードを掲げるべきだ」と発言したことに官邸が激怒。菅官房長官の秘書官が番組幹部に恫喝メールを送りつけるなど圧力をかけて、古賀氏を降板に追い込んだことがあったが、このとき、古賀氏らといっしょに同番組から外されたのがM氏だった。

 しかし、M氏は経済部長に異動になってからも、森友問題などでは、経済部として財務省をきちんと追及する取材体制をとっていたという。いま大きな問題になっている金融庁の“2000万円報告書”問題でも、麻生財務相の会見でこの問題をはじめて追及したのはテレビ朝日経済部だった。その後も、会見の度に、報告書問題を質問。また、麻生大臣が11日、「報告書を受け取らない」としたときの会見には、M部長自ら出席。報告書の内容を「政府のスタンスとちがう」と言い訳した麻生財務相に、「報告書のベースは金融庁が作っている」「夏の税制改正要望に証券税制の優遇を入れるという意図があったのではないか」と鋭い追及をしていた。

 そんななかにおいて、テレ朝上層部がM部長を報道局から追放し、イベント関連の新設部署へ異動させるという内示が出たため、局内外で「こんな露骨な人事、見たことない」「安倍政権からなんらかの圧力があったのではないか」という声が上がっていたのである。再びテレ朝関係者が語る。

「株主の追及は厳しいものでした。『報道でギャラクシー賞までとった人を、現役世代のうちに畑違いの部署に異動させるというのは普通なのか。不自然ではないか。他にこうした事例があるなら実例をあげてほしい』、『以前も元政治部長が新設の部下が一人もいない営業マーケティング担当へ飛ばされたというが、株主として、局長一人きりの局なんてものは事業の合理性の見地から納得できない』と畳み掛け、M部長の異動先に部下は何人いるのか?などと質問したのです」

官邸忖度人事を「社員のスキルアップ」と言い張る会社側に株主が…

 この株主からの質問に対して、早河会長が「質問をまとめてください!」と苛立ちを見せたのは前述したとおり。株主から「今のが質問ですよ」と返され、早河会長の指名で人事局担当の藤ノ木正哉・専務取締役が答えるのだが、これがまた回答にならないものだったという。テレ朝中堅社員が証言を継ぐ。

「藤ノ木専務は『個々の人事異動については回答を差し控えるが、組織の活性化と社員のスキルアップ、経験領域の拡大につながることを意図した人事異動として実施した』と。ようは一般論で対処したんだけど、経済部長まで務めた人間の総合ビジネス局への異動が“当人のスキルアップのため”なんていうのは、建前としてもありえない。前の経済部長は政治部長に栄転してますし、その前もネットニュース関連を統括するクロスメディアセンター長になってますからね。当然のように、質問者の株主は『全然答えていない』と批判。他の株主からも『答えろ!』『そんな話じゃないだろ!』と怒号が飛ぶなど、会場は騒然としました」

 あげく、経営陣の煙を巻く回答に業を煮やした株主が、最後にテレ朝の若手局員たちへ向かって「M部長にかならずもう一度報道の現場に戻ってきてほしい。そう株主が申していたとお伝えください!」とマイクで直接呼びかけ、拍手が起きるなど、今年のテレ朝総会は異例の展開で幕を閉じたという。

 いずれにしても、『報ステ』などでテレ朝のジャーナリズムを牽引してきたM氏を報道局から外すという異常な人事は、まさに「安倍政権を忖度した見せしめ」と言わざるを得ないが、それを株主総会で追及されてもなお「スキルアップ」「組織の活性化」などと平然と言い放つテレ朝経営陣の厚顔には呆れるほかない。

 しかも、株主総会で顕現したテレ朝の“安倍政権忖度”はこれだけではかった。総会の質疑応答のなかで、テレビ朝日の放送番組審議会メンバーの資質を問う質問も株主から出されたのだが、とりわけ強く追及されたのが、放送番組審議会の委員長を務める見城徹・幻冬舎社長についてだ。

見城徹社長の「実売部数晒し」についても問題視、放送番組審議会委員長解任要求の質問

 周知のとおり、見城社長は、安倍氏をヨイショする書籍を多数手がけ、第二次政権誕生以降も面会を繰り返したり、携帯電話でやり取りをするなど、本人も「安倍さんの大ファン」を公言する“政権応援団”の強力な一員。早河会長と安倍首相をつなげたのも見城氏だといわれている。放送番組審議会は〈放送法に定められた機関で、番組内容の充実・向上を目指すことを目的〉とするというが、いわば見城氏は、放送法が定める「不偏不党」を保つため番組の内容をチェックするその役割から、もっとも報道倫理的に遠い人物のひとりだと言わざるを得ないだろう。

 最近では、例の『日本国紀』(百田尚樹)の“コピペ問題”をめぐり、これを批判した作家・津原泰水氏の実売部数を晒す暴挙に出て、世間から大きな顰蹙を浴びたのも記憶にあたらしい。見城氏は表向きには謝罪をし、Twitterの終了やテレビ朝日と提携するAbemaTVの冠番組『徹の部屋』を終了したものの、問題視されているテレ朝放送番組審議会委員長については当面、辞任する予定はないという。

 もっとも、見城氏の“放送番組審議会委員長としての資質”は、ここ数年の総会で繰り返し問われてきたのだが、今年はなんと「経営幹部が『事前質問があったので一括して答える』として、株主の質問時間の前にあらかじめ回答を述べてしまった」(前出・テレ朝中堅社員)のだという。

 あきらかに、追及を抑制しようという意図が丸見えだが、その回答の内容も「見城委員長は豊富な事業経験を持つお方」「多岐にわたる深い知見」「多角的な視点から有意義な意見を頂戴している」と礼賛し、「放送番組の適正をはかる職責を果たしている」と委員長続投を明言。さらにはこんな予防線まで張ったという。

「見城氏をめぐっては早河会長も相当ナーバスになっていたらしく、だからこそ事前に策を講じたんでしょう。実際、わざわざ『番組審議会以外の場でそれぞれのお立場でなされたご発言については、当社はコメントする立場にない』なんて加えていましたからね。その後、質疑応答のなかで株主が、『“実売部数晒し”で多くの作家から非難されている。見城氏のような倫理基準に従ってテレ朝が番組を作っていることは、作家のドラマ原作引き上げや番組出演拒否などボイコットに発展する可能性もある』と指摘、テレ朝側が解任にすべきだと提言したんですが、広報担当の両角晃一取締役は冒頭の“事前質問に対する回答”を繰り返すだけ。まともに聞き入れようともしませんでした」(前出・テレ朝中堅社員)

 この期に及んでも、安倍首相と近い見城氏をかばい続けざるをえない早河会長ら経営幹部。これこそ“安倍政権忖度”を強めるテレ朝の現況を証明しているだろう。

 安倍政権を追及してきた記者やプロデューサーを報道から放逐する一方で、政権をヨイショする出版社社長をまるで“守護神”のように崇め、どんな不祥事を起こそうが不問に付す。その目線はもはや「知る権利」を持つ視聴者に向いているとは到底思えない。テレビ朝日上層部は、いったいどこまで安倍政権にシッポを振り続けるつもりなのか。

最終更新:2019.07.02 11:44

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