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千原せいじの不倫をなぜか「さわやか」と賛美! 女性の不倫は徹底糾弾し男の不倫を持ち上げるワイドショーの男尊女卑
「週刊文春」に不倫をすっぱ抜かれた千原せいじ。出演する『ワイドナショー』で何を語るのか(フジテレビ『ワイドナショー』番組サイトより)
16日発売の「週刊文春」(文芸春秋)で不倫スキャンダルをスクープされた千原せいじ。言っておくが、もともと本サイトは個人の不倫を批判するつもりもないし、むしろ不倫を犯罪のごとく糾弾するワイドショーの風潮には批判的だが、しかし、今回この話題を取り上げたテレビの“ダブルスタンダード”には呆れざるをえない。
その代表格が16日放送の『バイキング』(フジテレビ)だ。『バイキング』といえば、これまで不倫だけでなく薬物事件など様々な問題に“道徳”や“常識”を振りかざしてバッシングしてきた番組だが、千原せいじの不倫に関しては一転、せいじを糾弾するどころか、逆に歯が浮くような賞賛をしまくったのだ。
そもそも「週刊文春」の報道は、妻子のいるせいじが、5月に「浜崎あゆみ似のスレンダー美女・A子さん」と名古屋市のホテルで一夜をともにしたと伝えるもの。「文春」は、せいじがコンビニ前でA子さんにアイスを「あーん」してもらう姿を激写。記者がせいじに直撃をかけて、「たまたまモテたんやってぇ」などと不倫を“告白”させたという内容だ。記事冒頭には、せいじのこんなセリフが掲載されている。
「やっぱりあの……ちょっと他のものも食べてみたいとかね。カレーライスばっかりじゃなくて、たまにはハヤシライスとかハッシュドビーフも食べたくなるしねぇ。……また怒られるで、これ。女性を食べ物にたとえて」
不倫を悪びれないせいじの態度はともかく、女性を「ハヤシライスも食べたくなる」などと言ってギャグにするのは、明らかに性差別的な発想だ。どう考えてもおかしいだろう。
ところが、『バイキング』ではそんな批判は皆無。むしろ、MCの坂上忍やコメンテーターのフットボールアワーらが、せいじをこれでもかと持ち上げまくったのだ。
たとえば、のっけから坂上が「お兄ちゃんらしく大胆といいますか」とコメントし、前述の不倫相手からアイスを食べさせてもらっている写真にスタジオは大爆笑。フットボールアワー・岩尾望は「さすがせいじさんというかね」「ここまできたらほんまに何もなかった大吉さんよりさわやかにみえる」「全然なんかもう、さわやか、ほほえましいって思っちゃうくらい堂々としてはりますよね」と博多大吉と赤江珠緒の“芝生デート”と比べて、せいじの不倫を“さわかや”“ほほえましい”と絶賛した。この空気のまま、どんどんせいじの“人徳”や“モテ話”になっていった。
さらに唖然としたのは、「週刊文春」の直撃取材に対しせいじが不倫を認めたことが紹介されたときだ。なぜか“変装をせずに堂々と記者の取材に応じたせいじは偉い!”という論調一色に染まり、あげく、坂上が「ここまで堂々とされちゃうと、なんか本当に、えっ、不倫相手なの? それともなんか従姉妹かなんかと思っちゃうよね」と言い出すなど、“これは不倫ではない”という方向に誘導されていく。意味が分からないが、極めつけは坂上がぶったこんな“男の不倫容認論”だ。
「僕はわかんないけど、男ってその時々で本気になれるっていうじゃないですか。(略)。結婚しててもせいじくんみたいに、よそに好きな人ができたらその人に対してその瞬間だけ男の人って本気になれるっていうじゃないですか、僕はわからないけど」
「(せいじが不倫相手の女性をハヤシライスにたとえた後で)ここで『また怒られるで、これ。女性を食べ物にたとえて』って。これが後追いでも、すぐに(そのセリフが)出てくるってね。芸人さんって頭の回転が速いなっていつも思うんですよ」
そして「まあ、でも本当に、せいじくんのお人柄がうかがえるようなね、ニュースではありました」などと言って、坂上はにこやかにこの話題を締めくくった。
女性を「食べ物」にたとえて「欲望のはけ口」扱いする女性蔑視をまったく問題視することなく、反対に「頭の回転が速い」などと言って褒め、“男は不倫してもしょうがない”と正当化する……。
まったく、どうかしているとしか思えないが、驚くことに、せいじの不倫を批判せずに擁護したのは『バイキング』だけではなかった。
ベッキー、矢口ら女性の不倫は徹底糾弾され、せいじの不倫は賛美される理不尽
せいじが火曜日レギュラーを務める『ノンストップ!』(フジテレビ)でも、MCの設楽統が「記者の方と新幹線で品川(駅)から静岡まで(取材に)答えるなんて、せいじさんらしい。すごいですよね」とヨイショ。一応、大久保佳代子は「許せませんね。クビにしましょう。『ノンストップ!』をクビにしましょう」「女性の敵ですよ」と発言したが、これも明らかに本気ではなく、ギャグで言ったにすぎない。まさに“笑い”に変換して“男の不倫”を正当化しているとしか思えない有様だった。
いったい、これはどういうことなのか。ひとつの理由として考えられるのは、ワイドショーにおける吉本興業の存在感だろう。
せいじが所属する吉本は、ジャニーズやバーニング系列ほどではないにせよ、テレビに多大な影響力を持つ巨大事務所である。実際、吉本はワイドショーに大量の所属芸人を送り込んでおり、『バイキング』でせいじを擁護したフットボールアワーの2人も吉本の後輩だ。同じく吉本所属である雨上がり決死隊・宮迫博之の二股不倫の際もそうだったが、ワイドショーではお仲間の芸人が、互いのスキャンダルを“笑い”を隠れ蓑にしてかばい合う構造ができあがっているのだ。
しかし、今回のせいじの場合、所属事務所のパワー以前の問題だろう。ようするに、不倫をしたのが男性か女性かという違いだ。
実際、『バイキング』ではかつて、坂上がベッキーの不倫騒動に触れて「身内だからこそ、安易に擁護すべきじゃない!」と語っていたが、今回のせいじの不倫に対しては、まさに“安易に擁護”。これは女性にだけ貞操を求め、男性の不倫はネタとして笑い話にされているということに他ならない。
思い出してほしい。ベッキーや矢口真里、上原多香子、今井絵里子、斉藤由貴、藤吉久美子ら女性芸能人の不倫が、どれだけ過剰な批判を浴びたか。謝罪会見を開いても収まるどころかますます集中砲火を浴び、レギュラー番組の降板、さらには芸能活動休止にさえ追い込まれた者さえいる。しかし、一方のせいじは糾弾されるどころか、賛美まで受け、現在のところ謝罪会見はおろか、出演休止の話も出ていない。
せいじ不倫賛美の背景にある芸人の男尊女卑体質!岡村は「せいじのステージが上がった」と
もっとも、これはワイドショーだけの問題でなく、女性に不寛容な日本社会の空気も反映しているのだろう。もともとマッチョで男尊女卑の傾向が強い芸人たちが、さらに世間の空気に乗って女性の不倫は厳しく批判する一方、お仲間の不倫は“笑い”にして済まそうとするのだ。
たとえば、せいじの弟である千原ジュニアは、2010年6月26日に放送された『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)で、木村祐一と一緒に部屋へ連れ込んだ女性が「私はそんなつもりで来たんじゃない」と言って帰ろうとすると、木村が冷凍室から取り出した鶏肉を投げつけた……という話を披露した。被害者が訴えていれば刑事事件になっていてもおかしくない事案だが、これをジュニアは「すべらない話」としてネタにしているのだ。女性を食べ物に喩えたせいじもそうだが、女性をモノ扱いする男尊女卑の価値観が剥き出しだろう。
ナインティナインの岡村隆史はラジオで「なんか、1個ステージ上がった気がするんですけど…せいじさんの」「結局、せいじさんって、そんなにダメージないで」と、ステージが上がるとすら予想している。これをきっかけに干されるどころか、コメンテーターとしての仕事がさらに増えそうな気配すらある。
さらに言えば、テレビでせいじが叩かれないのは、ネットからの批判が高まらないからという側面もあるだろう。もともと、せいじはテレビ番組などで安倍政権を擁護し野党を攻撃、韓国などへのヘイト発言を繰り返すなど“安倍応援団”的な立ち位置の芸人であり、ネット右翼からの人気が高い。
テレビ局がいま一番神経を尖らせているのは、ネトウヨのような声の大きいクレーマーによる“抗議電話”や“炎上攻撃”なわけだが、その意味で言えば、ワイドショーは“安倍応援団”であるせいじを叩くよりも、擁護したほうがリスクが少ない。意識的か無意識かはわからないが、確実にそういう空気を感じているはずだ。
本日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)にもゲスト出演し、不倫報道について語る予定の千原せいじ。松本人志や東野幸治らが『バイキング』や『ノンストップ!』以上に馴れ合いの茶番を繰り広げることは間違いないだろう。
いずれにしても、女性の不倫には目くじらをたて大バッシングを展開し、一方の男性の不倫、安倍応援団の不倫は「ほほえましい」などと賞賛してしまう日本のワイドショー。歪みきっているとしか言いようがない。
(編集部)
最終更新:2019.05.19 08:14
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