日産ゴーン会長を逮捕した検察の裏! 司法取引を使いたがった特捜部長、ルノーと統合阻止する国策捜査説も

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逮捕されたカルロス・ゴーン著書(『カルロス・ゴーン経営を語る』 日経ビジネス人文庫)

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長が19日、日本の検察当局に逮捕されたニュースは国内外に衝撃を与えている。

 第一報を流したのは朝日新聞だった。19日夕、「NISSAN」のマークが尾翼に入る専用機が羽田空港に到着したその一部始終を撮影。ゴーン会長の聴取が始まったことをつかみ、ニュースサイト「朝日新聞デジタル」で世界に先駆けて第一報を流した。この驚きの速報に、司法クラブは蜂の巣をつつく騒ぎとなったのは言うまでもない。大手新聞社の司法記者の話。

「朝日の独壇場でしたね……。実は先週あたりから、東京地検特捜部が全国の地検に対して検事の応援要請をかけたという情報はつかんでいたんです。特捜部が入る庁舎10階と9階は深夜まで灯りが消えず、何かやっているのは間違いなかった。てっきり政界ルートじゃないかと思って、永田町情報にも敏感になっていた矢先でした」

 民放の政治部デスクも「先週末、検察が“外資を相手に司法取引をした”という情報まではキャッチできていました。そこで、先ごろ官邸を退いた福田隆之・官房長官補佐官とフランス水メジャーとの癒着疑惑が早速事件化すると見立て、官邸周辺の取材を始めたばかりでした」と打ち明けている。

 なるほど、ゴーン会長については朝日以外、完全ノーマークだったらしい。検察としては“マスコミも出し抜いた久しぶりの鮮やかな巨悪逮捕劇”と胸をはりたいところだろうが、実はこの事件、取材している報道各社の評判はけっして芳しくない。

 というのも、大々的な報道の割に容疑事実がたいしたことがないうえ、無理スジな匂いがするからだ。ゴーン会長の逮捕容疑は、2011年3月期~2015年3月期の5年間に約99億9800万円の報酬を受け取ったのに、日産の有価証券報告書に約49億8700万円と嘘の記載をしたというもの。当初はまるで、現金でこっそり倍の報酬を受け取っていたとするような報道もあったが、どうもそういうわかりやすい悪質犯罪ではないらしい。

「特捜部は差額の50億円の内訳のひとつとして、日産がフランスやオランダなど海外4カ国で購入した住宅をゴーン氏が私的に利用していた点を挙げている。ほかにも海外への投資など、会社の名義で行った行為を報酬として50億円分積み上げ、横領や特別背任、脱税の立件にもっていこうとしているようだ。たしかに、会社名義の不動産を個人的に使うのは本来、違法だが、ワンマン経営者ならよくやっていること。この程度で逮捕まで持っていくというのは極めて異例だ」(前出・司法担当記者)

 実際、海外メディアのなかには、「なぜこんな容疑でゴーン会長だけが逮捕されたのか」「狙い撃ちじゃないか」と捜査を批判するような報道もでてきている。また、法務省周辺では公判が維持できるのか、心配の声も上がっているという。

「特別背任は、会社に損失を与えようという意思があったことが立証されないと、有罪にもっていくのは難しい。あとは脱税ですが、有価証券報告書と同じように、税務申告も過少申告しているという情報がまったく出て来ていない。また、仮に不動産購入分が申告されていなかったとしても、ゴーンサイドが所得ではない、と否定したら、本当に有罪まで持ちこめるのか、懸念の声が上がっています」(民放社会部記者)

 もし指摘通りの状況なら、いったいなぜ、検察はこんな強引な捜査をしたのだろうか。霞が関周辺でささやかれているのは、「司法取引」との関係だ。

森本宏特捜部長は、法務省刑事局時代に「司法取引」を導入した張本人

 司法取引とは、周知のように、他人の立件に協力する見返りに、自身の刑事処分を回避したり求刑を軽くしてもらったりする制度のこと。今年6月から日本にも導入され、今回、ゴーン逮捕でも日産内部の告発者に適用されたことが報道されている。

 そして、ゴーン逮捕を陣頭指揮した森本宏特捜部長は、法務省刑事局時代に、この司法取引導入を牽引した人物なのだ。

「“検察のエース”“将来の総長が確実”と言われて鳴り物入りで就任した森本特捜部長ですが、就任直後、着手した事件はいずれも不発に終わった。リニア新幹線談合事件はスーパーゼネコンが全面否認、文部科学省接待汚職事件もワイロとなる現金の受け渡しのない接待のみのなどの容疑で、政界ルートにも届かず、前評判が一気に下がっていた。そこで自分が導入した『司法取引』が解禁になると、この制度をフルに使い、失地を回復しようとしはじめたんです」(検察関係者)

 森本部長はことし7月、タイ南部での火力発電所建設にからんで現地公務員に賄賂を提供していたとして、贈賄側の大手発電機メーカー「三菱日立パワーシステムズ」の元取締役ら3人を在宅起訴するにあたり、はじめて司法取引を適用。本来起訴対象になる同社が全面的に捜査協力した見返りとして同社を起訴しなかった。

「しかし、この司法取引も『初めての適用がこんなしょぼい事件なのか』と、悪評ふんぷんだった。そんなところに、日産内部で西川社長一派のクーデターの動きが起きたため、それに乗っかって、自ら創設を手がけた『司法取引』をフルに使い、世界から注目されるゴーン会長の逮捕で手柄を立てようとしたんでしょう」(前出・検察関係者)

 だが、日本経済や国際関係に多大な影響を与える巨大自動車メーカーのトップ逮捕を特捜部長だけの判断で強行できるのか。

 そんなところから、今回のゴーン逮捕をめぐって「日産と三菱自動車の海外移転を阻止するための国策捜査」説も流れている。

ルノーと日産、三菱の経営統合を阻止するために官邸が仕掛けた国策捜査説も

 周知のように、ルノーと日産、三菱自動車の間ではずっと経営統合計画がくすぶっていた。ルノーの筆頭株主であるフランス政府が、三社を全面的に統合し、日産や三菱もフランスに移転させる計画をぶちあげていた。

 ゴーン会長は当初、この経営統合計画に異を唱えていたが、今年2月、ルノーCEO続投と引き換えに、態度を豹変。「すべての選択肢が考えられる」と経営統合を排除しないことを表明した。これに危機感を持ったのが日本政府だった。

「とくに経済産業省はこの経営統合の動きに危機感を持ち、絶対に阻止すると息巻いていた。そんなところから、経産省出身の今井尚哉首相秘書官が経営統合を阻止するために、検察に仕掛けて、ゴーンを逮捕させたんじゃないかという見方が流れているんです。日産の西川社長と検察をつないだのも今井秘書官じゃないか、と。20日、日産の川口均専務が菅義偉官房長官と官邸で面会した際、菅氏がゴーン会長の逮捕に非常に驚いていたと記者団に打ち明けたことから、官邸の関与はなかったといわれていますが、今回は今井氏のラインだったため、菅氏が知らなかっただけかもしれない」(全国紙政治部記者)

 こうした見方を「陰謀論」と一笑に付す向きもあるが、少なくとも、今回の展開が日本政府にとってマイナスでないことはたしかだろう。

欠陥だらけの「司法取引」が恣意的な狙い撃ち捜査と冤罪を生み出す

 また、今回の逮捕劇ではもうひとつ、浮き彫りになったことがある。それは「司法取引」という制度の危うさだ。

 米国由来のこの制度に欠陥があることは以前から指摘されてきた。というのも、司法取引にはもともと冤罪を引き起こす危険性がある上、日本の司法取引では、米国のように、情報提供者が嘘の供述をした場合に適用される「虚偽供述罪」が用意されていないため、いくらでも恣意的な証言ができるからだ

 しかも、日本の検察の体質を考えると、司法取引が、企業ぐるみの犯罪の刑事責任を特定個人に押し付け、「魔女狩り」的な狙い撃ちに使われる危険性がある。

 今回はまさに、そうした司法取引の負の部分がもろに出た気がしてならないのだ。ゴーン会長が大量リストラの一方で私腹を肥やしていったという事実自体は批判されるべきだが、それとは別に謀略的な捜査の裏側についても検証されるべきだろう。

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