ノーべル平和賞ICANの足を引張り続けた安倍政権! 安倍首相は受賞の事実を無視、ネトウヨは反日攻撃仕掛ける倒錯

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ICANのノーベル平和賞を無視した安倍首相(首相官邸HPより)


 快挙とは裏腹のあまりに異様な事態だ。6日、今年のノーベル平和賞に「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」が選ばれた。周知のようにICANは100カ国超のNGOが参加する連合組織で、核兵器の廃絶を目指してキャンペーンや活動を展開。今年7月、国連で核兵器を史上初めて非合法化する核兵器禁止条約が採択されたが、今回のノーベル平和賞受賞は、同条約制定に向けて主導的な役割を果たした功績を高く評価されてのものだった。

 まさにノーベル平和賞の趣旨にふさわしい受賞だが、しかし、この快挙に対して、日本の安倍首相は一切コメントを出していないのだ。言っておくが、一言も、でもある。

 ICANノーベル平和賞受賞発表の前日、日系イギリス人作家のカズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞受賞が発表された際、安倍首相や菅官房長官は早々に“心からのお祝い”を述べていた。安倍首相の談話はこういうものだった。

「長崎市のご出身で、小さい頃に英国に渡り、作家活動を行ってきた。日本にもたくさんのファンがいる。ともに受賞をお祝いしたい」

 イシグロ氏が日本に関わりがあるから首相自らお祝いをしたということらしいが、それならICANはもっと日本と深い関わりがある。たとえば、ICANの国際運営委員には日本の市民運動家が就任している。NGO「ピースボート」共同代表の川崎哲氏だ。川崎氏は2010年からICANの副代表を、2012年から2014年は共同代表を務めていた中心メンバーだ。そして、川崎氏やピースボートが2008年から実施している広島・長崎の被爆者と世界を回る「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」プロジェクトはこのキャンペーンに大きな役割を果たした。

 いや、プロジェクト運営に日本の団体や市民運動家がかかわっているというだけではない。川崎氏は帰国後の報告会で、“ノーベル平和賞は被爆者に贈られたもの”と話していたが、実際、ICANじたいが、広島、長崎の被爆者との出会いによって生まれたといってもいい。

 同団体の創設メンバーであり現在事務局長を務めるベアトリス・フィンは、2010年国際会議で聴いた、長崎での被爆者・谷口稜曄氏のスピーチが「核兵器について考える上で、私たちの土台となっている」と語っている。

 その後も、被爆者の存在がキャンペーンの大きな柱になっていった。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)や原水爆禁止日本協議会(日本原水協)などがキャンペーンに参加して、会議の成功のために奮闘。また、広島で被爆したカナダ在住のサーロー節子氏は、世界中で「ICANの顔」として自らの被爆体験を語り続けた。

 同条約採択が大詰めを迎えた交渉会議でも大きな役割を果たした。交渉会議開催の直前、アメリカや日本など20か国余りが、議場の前で不参加を宣言。アメリカの国連大使は「現実を見ろ」「北朝鮮が核兵器禁止に同意するわけない」と会議を攻撃していた。

 そんななか、サーロー節子氏や日本被団協の事務局次長で自らも被爆者である藤森俊希氏らがこの会議に参加して、スピーチ。原爆の悲惨さを切々と語り、各国代表の心を大きく動かした。

ICANの核兵器禁止条約採択取り組みの足を引っ張り続けた安倍政権

 そういう意味では、この条約は日本の被爆者たちと世界の若者たちがいっしょになって勝ち取ったものであり、ICANのノーベル賞受賞こそ「日本の誇り」と胸をはってもいいくらいなのである

 ところが、前述のように、安倍首相も菅官房長官も今なお、たったの一言もコメントを発していない。

 受賞から2日経った8日になってようやく外務省報道官がコメントを出したが、昨年、ノーベル平和賞をコロンビア共和国のサントス大統領が受賞した際には、当時の岸田外務大臣が祝意と敬意を表するコメントを出していた。それが、今回は外務報道官、しかも内容はこんな水を差すようなシロモノだった。

「日本政府のアプローチとは異なるが、核廃絶というゴールは共有している。国際社会で核軍縮・不拡散に向けた認識が広がることを喜ばしく思う」

 しかし、こうした日本政府の態度は、当然なのかもしれない。なぜなら、これまで日本政府・安倍政権は一貫してICANが取り組んできた「核兵器禁止協約」採択の動きに背を向けるどころか、足を引っ張ってきた。

 まずは2016年10月、国連総会第1委員会において「核兵器禁止条約」に向けた交渉を2017年にスタートさせる決議が賛成多数で採択されたが、この議決に対して、日本は唯一の被爆国であるにもかかわらず、米露英仏の核保有国などとともに反対した。

 さらに今年3月、交渉会議が始まると、日本政府の代表・高見沢将林軍縮大使は、条約の交渉にすら不参加を宣言。そして7月7日、国連本部で核兵器禁止条約が採択されるが、その際、別所浩郎国連大使は、「(条約に)署名しない」と明言したのだ。

 本来はか核兵器の恐ろしさを世界に先駆けて伝える義務をもつ日本政府がこんな180度正反対の態度をとったのは、もちろん、核保有国である米国を追従しってのものだ。前出のサーロー節子氏はこの日本政府の姿勢に対して、交渉会議のスピーチの中で「被爆者は母国に裏切られ見捨てられた思いだ」と厳しく批判していた。

 そういう意味では、ICANがノーベル平和賞をとったからといって安倍政権や日本政府がお祝いコメントをするような資格はないのかもしれない。

 しかし、それにしても、一切無視とはあまりに大人げなく、露骨すぎないか。それはおそらく、このICANのノーベル平和賞受賞が安倍政権にとってたんに「バツが悪い」以上のものだからだろう。

マスコミもICAN受賞を無視、ネットはピースボート攻撃

 本サイトでは何度も指摘してきたことだが、そもそも安倍首相の頭のなかには“核廃絶に向けた努力”という考えなど一切ない。むしろ本音は“核の保有や核兵器の使用は認められるべき”というものなのだ。

 事実、安倍首相はこれまで、核軍縮に反対する行動を散々とり続けてきた。官房副長官時代の2002年には「憲法上は原子爆弾だって問題ではない」などと語り、首相になった2006年には「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と答弁書に記した。第二次安倍政権発足後、2015年8月6日の広島の平和記念式典での演説では予定稿には入っていた「非核三原則の堅持」の記述を自らの判断で削った。そして、安倍首相は、米オバマ前大統領が打ち出そうとしていた「核の先制不使用宣言」にも真っ向から反対し、潰しにかかっていた。つまり、安倍首相にとってもともと核廃絶などあり得ないことなのだ。

 しかも、安倍首相はいま、北朝鮮危機を煽り、トランプ大統領とともに北朝鮮への圧力、そして軍事的制圧に向かって突き進んでいる。今回のICANノーベル賞受賞で、核廃絶問題が論議になれば、その姿勢に批判が集まる可能性もある。安倍首相とその周辺はおそらく、そうした事態を避けるために、徹底的に無視して、ICANの話題そのものを葬り去ろう、と考えたのだろう。

 だが、その作戦はまんまと功を奏してしまった。カズオ・イシグロ氏の受賞にはあれだけ騒いだマスコミが、官邸と歩調を合わせるように、この話題を完全にスルーしてしまったのだ。

 大きく取り上げたのは、朝日や毎日、東京などのリベラル系新聞と、NHK『クローズアップ現代』くらい。読売、産経はまともに取り上げようとせず、テレビのワイドショーはほとんど無視してしまった。

 さらにネットでは、ICANにこんなデマ攻撃があふれた。

〈ICANには辻元清美率いるピースボートが含まれている。ピースボートは北朝鮮のテロ工作船。ノーベル平和賞がテロリストに進呈された瞬間だ。〉
〈ピースボートって核兵器開発で大忙しの北朝鮮とも仲がいいのに、核廃絶でノーベル平和賞とはすごいな。平和賞もう不要じゃない? 〉
〈北シンパの手中に嵌って北朝鮮に加勢したも同じことです〉
〈北朝鮮の核開発を絶対に非難しそうにない輩がノーベル平和賞〉

 世界的にはICANのノーベル平和賞受賞に、その功績を讃える声が続々と上がっているのにこの態度。普段はどうでもいいような話にあれだけ「日本スゴイ!」を連発しているテレビやネトウヨたちが、本当に日本が誇れる活動については、無視か、逆に攻撃を加えるのだから、どうかしているとしか思えない。

 要するに彼らが世界に「スゴイ」と褒めてもらいたいのは、差別と暴力丸出しの前近代的な日本ということなのだろう。

 しかし、こうした倒錯した価値観をつくりだしたのもまさしく、安倍政権に他ならない。総選挙では全く争点になっていないが、安倍政権のノーベル平和賞に対する犯罪的とも言える態度を、有権者は大きな判断基準にすべきではないだろうか。

最終更新:2017.10.15 06:59

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