東芝崩壊の元凶・原発ビジネスの裏に今井首相秘書官の存在が! TPPも一億総活躍も安倍首相に入れ知恵する“影の総理”

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「週刊文春」(文藝春秋)4月13日号

 先日、東芝が原発製造大手・ウエスチングハウス(WH)社のダニー・ロデリック会長を解任した。東芝は2006年、相場の3倍以上の約6000億円を用意しWH社を買収したが、同社を中心にすえた原発事業が大失敗。アメリカで7000億円超の巨額損失を計上し、WH社について米連邦破産法11条を申請。もう一つの主力である半導体事業の売却も決めた。

 2017年3月期の最終赤字は実に1兆円、債務超過額も6000億円を超え、「倒産秒読み」と言われるのも仕方がない状況。一方で、その経営再建に巨額の公的資金が投入される動きも報じられている。だが、東芝崩壊の元凶である“原発ビジネス”を二人三脚で推進してきたのは経産省と安倍政権だ。その責任を曖昧にしたまま、国民の血税が一企業に消えていくというのはありえないだろう。

 本サイトでは以前から、この“東芝崩壊”危機の裏にある原発事業の陥穽をたびたび指摘してきたが、昨日発売の「週刊文春」(文藝春秋)4月13日号では、ジャーナリストの大西康之氏が「東芝“原発大暴走”を後押しした安倍秘書官」と題し、“影の総理”とも言われる今井尚哉首相秘書官の影響を名指ししている。

 今井氏といえば、経産官僚出身で産業政策・エネルギー畑を歩み、原発輸出政策の立案をした中心的存在。2011年、福島原発事故が起きた後も、資源エネルギー庁次長として民主党政権や再稼働に反対する橋下徹大阪府知事(当時)などを直接説得、「原発ゼロ政策」を撤回させた。そして、第二次安倍政権が誕生すると安倍首相を動かして原発再稼働を強硬に推進、トルコやインドなどへの原発売り込みをさせていった。

 記事は、物的証拠を提示しながら、今井秘書官がこの“東芝崩壊”の背景に強く関与している可能性を指摘している。東芝側のキーマンは、元東芝電力システム社首席主監の田窪昭寛氏だ。田窪氏は東芝の原発事業の中心で、その豪腕からついたあだ名は“暴走機関車”。社内で「原発野郎」と揶揄された佐々木則夫元取締役社長(09〜15年)の薫陶を受け、東芝製原発の海外輸出へと邁進していたという。

 そして3.11以降、原発事業に逆風が吹くなか、田窪氏が接近した人物こそ、今井氏だった。

「文春」によれば、入手したある東芝社員のビジネスダイアリーには、1年間で「今井」の名前が約30回も登場するという。もっとも、東芝の原発事業担当者が、経産官僚や原発ムラの要人と会うこと自体は珍しくはない。だが、記事のなかでは、田窪氏と今井氏の関係をよく知るという人物が、このように証言している。

「ただ、その回数が明らかに多い。電話やメールは、ほぼ毎日のように連絡を取り合っていました。我々の常識から言って“一線を超えた”という感覚です。田窪氏は今井氏の部下である香山弘文・原子力国際協力推進室長(当時)とも銀座の東芝御用達クラブ『B』で一緒に飲んでいました(香山氏は「田窪氏に支払いをしてもらったことはない」と回答)」

 さらに記事では、独自入手した極秘の社内メールや当時の複数関係者による証言から、原発事業による“東芝崩壊”とこの田窪氏・今井秘書官の関係のディテールを次々に浮かび上がらせている。しかも、田窪氏をはじめ、WH社買収時に東芝社長だった西田厚聰会長、そして今井秘書官への直撃取材まで敢行。詳しい内容は昨日発売の「文春」を読んでもらいたいが、先に触れたように、東芝再生に血税が投入される前に、安倍首相はその原発政策の過ちを認めて責任をとるべきだ。

 だが、原発事業で崩壊した東芝を尻目に、今後も安倍政権は国策として原発政策に邁進し続けるだろうし、今井氏にもなんのお咎めもないだろう。それは、本サイトが折に触れて言及してきたように、安倍政権はいま今井氏抜きでは成り立たないと言われるほど、この首相秘書官にコントロールされているからだ。

 事実、第一次安倍政権で内閣秘書官を務めて以降、安倍首相と急接近した今井氏は、首相の行動日程やスピーチ原稿をすべて取り仕切り、原発の再稼働や海外輸出を始め、アベノミクスやTPPなどの政策決定のプロセスにも、麻生太郎副総理や菅義偉官房長官ら側近議員よりも深く関わっていると言われる。

 たとえば、「文藝春秋」2015年12月号掲載の森功「首相を振りつける豪腕秘書官研究」では、その暗躍ぶりが具体的にレポートされている。これによれば、15年夏の安保法制を強行採決した直後、政権は「新アベノミクス」「一億総活躍社会」をぶちあげたが、これも今井氏の発案だった。しかも、このとき今井氏は「今度のアベノミクスは、安保から国民の目をそらすことが大事なんです」とうそぶいたという。さらに、14年11月の“消費増税先送り解散”も今井氏のシナリオ。また、「戦後70年談話」も安倍首相と直接やり取りをしながら、今井氏が手がけたものだったという。

 これだけではない。今井秘書官は安倍首相を囲いこみ、その結果、現在首相周辺では一度今井氏を通さなければ話すら聞いてもらえない。それほどの状況ができあがっているという。

「総理に会おうと思って、日程を管理している今井さんに連絡を取ろうにも、秘書官室にはいないし、携帯電話にも出ない。話が出来ても、『どうしても総理じゃないとダメですか?』と、こう来る。会う会わないは総理が決めることなのに、今井さんの判断で止められてしまうんです」(新潮社「週刊新潮」14年4月3日号より、自民党関係者のコメント)

「総理の日程調整を今井氏が一手に引き受けているから、どうしてもみんな遠慮してしまう。国対委員長の佐藤勉氏でさえ総理への面会を断られ、『おいおい何様だよ』とこぼしていた」(講談社「フライデー」16年6月13日号より、自民党職員のコメント)

 さらに今井秘書官は、政策や政治日程だけでなく、マスコミを含む世論形成の操縦桿まで握っている。首相の諮問機関や官邸主導のプロジェクトに自身の人脈をどんどん投入するのがその典型で、たとえば、天皇の生前退位に関する有識者会の座長には専門家でもなんでもない叔父の今井敬・元経団連会長をねじ込んだ。また16年の伊勢志摩サミットでは、安倍首相が「世界経済の状況がリーマンショック前に似ている」と述べたと報じられ波紋を広げたが、これも消費増税再延期を正当化するために今井秘書官が主導して資料をまとめたと言われている。

 こうして振り返ってみると、今井秘書官の存在はもはや、韓国で崔順実(チェ・スンシル)氏が朴槿恵前大統領に深く食い込み、国政に介入していた事件を彷彿とさせる。少なくとも、選挙で国民の付託を得たわけでもなんでもないただの秘書官が、ここまで国政を大きく左右している事実は、まったく隣国の政治実態を笑うことができないレベルだ。

 そして今回、「文春」が詳しく報じた東芝原発事業のキーマンと今井氏の親密な関係。このままでは今後「第2・第3の東芝」が出てくるのは火を見るより明らかに思える。奇しくも現在、安倍政権下での“忖度”がマスメディアでバズワードとなっているが、その意味でも、マスコミはこの“影の総理”の影響力を徹底検証していくべきだろう。

最終更新:2017.11.22 01:39

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