宮根誠司がアパホテル「南京虐殺否定本」を擁護し中国攻撃、松本人志も…マスコミが目をそらす問題の本質

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読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』番組ページより


 ホテルチェーン最大手のアパホテルが客室に設置していた南京大虐殺否定本が中国のSNSで広まり反発が起こった一件は、さらに大きな波紋を呼んでいる。2月に札幌でおこなわれる冬季アジア大会の組織委員会は、選手がアパホテルに宿泊する予定であることから書籍の撤去を打診。しかし、アパ側は撤去に応じるつもりはないという。

 アパの開き直りには言葉を失うが、それはこの男も同じだ。19日に放送された『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)で司会の宮根誠司が口にしたコメントのことである。

 番組ではSNSをきっかけに騒動が拡大し、さらに中国外務省の報道官が「一部の日本の勢力が歴史を否定し歪曲しようとしていることをあらためて示している」と発言したことを紹介。すると宮根は「SNSに投稿するのはなんとなくわかるんですけど、これを中国政府がこんなに敏感に反応するのって、ちょっと違和感ありません?」と話し、コメンテーターからの意見を集約した上で、「イヤだったら泊まらなきゃいいわけですよ」などと述べた。そして、こんなことを言い出したのだ。

「(春節の大型連休で)たくさんの中国人の人が日本にやってきてくださるのはありがたいですけど、アパ泊まんなかったら、ホントにホテルないっすよ。ホントないよ?」
「中国の人、泊まらないのは自由かもしれないけど、アパホテル泊まらなかったらないっすよ。パンパンっすよ! ……ホント泊まらない? 絶対隠れて泊まる人出てきますよね」

 このように宮根はまくし立てると、「(アパホテルに)泊まらない運動が広がるのかというのも疑問です」と言い捨てて次の話題に移ったのだった。
 
 思わず「アパホテルの回し者か?」とツッコミたくなるが、まあ、これはいつもの宮根のやり口でもある。安倍政権の支持者や右派勢力がからんだ話題になると、必ず、問題を矮小化させ、絶対に彼らを刺激しないような議論にスリカエてしまう。

 だが、実は今回のこうした論調は、宮根に限った話ではない。今日の『ワイドナショー』で、アパホテルの行為にはほとんど言及せずに「中国が国をあげてアパホテルを叩いている行為は異常」とコメントした松本人志を筆頭に、多くのテレビコメンテーターがむしろ中国の対応を問題にした。当然ながら、ネット上でも「イヤだったら日本に来るな!」などと宮根と同じような意見が溢れている。

 しかし改めて言っておくが、今回の騒動は、「中国がどう反応したか」ということが本質ではない。日本の巨大ホテルチェーンが、国際社会があきれかえるようなデタラメな歴史修正本を公共の場であるホテルに設置している、という行為にある。

 そもそも、騒動のきっかけとなった『理論 近現代史学II 本当の日本の歴史』なる書籍は、アパグループ代表の元谷外志雄氏が「藤誠志」名義で著したもの。その中身については既報の通りだが、なんと元谷氏は「南京事件はなかった」というだけでなく、張作霖爆殺事件から日中戦争開戦までをも「コミンテルン」の仕業」などと記述しているのである。もはや「トンデモ本」と呼ぶほかないシロモノなのだ。

 だいたい、南京事件については日本政府も「日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できない」と認めているが、それを中国側が宣伝する被害者数は「30万人」という数字をもち出し、それを攻撃することで「虐殺はなかった」「でっちあげだった」というイメージ操作をおこなっているにすぎない。そんな議論の俎上に載せるのも恥ずかしくて憚れるような内容の書籍を、ワンマン経営をいいことにホテルを私物化し、客室に設置するという“暴挙”をおこなってきたのだ。

 しかも、元谷氏はたんなる一企業の代表というだけではなく、安倍首相と極めて親密な関係にあり、安倍氏の秘密後援会「安晋会」の副会長を務めていたこともあるほど。前述した著書でも元谷氏は〈東京オリンピックの開会式で、安倍首相が「君が代」と共に開会宣言を行うのが理想だ〉〈中国、韓国にしっかり対応していくためにも、安倍政権が長期政権となるべく、私も最大限のサポートをしていくつもりだ〉と記している。

 中国の反応などよりも、あからさまな歴史修正のトンデモ本を大手ホテルチェーンが設置している事実、そしてその企業の代表と首相が懇意である事実のほうがよっぽど異常なのである。実際、今回の騒動を記事にした米・AP通信も、元谷氏について〈安倍の声高な支持者〉と言及していたが、これこそが正しい報道の仕方だろう。

 しかし、呆れることにこの国の報道では、安倍首相との関係に踏み込んだ大手メディアはいまのところ一社もなし。リベラル寄りの朝日新聞や毎日新聞でさえ、今回の問題を「中国で批判が相次ぐ」というかたちでしか報じず、あきらかな歴史修正の主張が企業の私物化によって公共の場で展開されている行為に論及しないのだ。

〈元谷は、安倍の声高な支持者であり、与党自民党の超保守派と結びついている。彼は複数の講演を主催し、主要な歴史修正主義者やイデオローグ、政治家を招いて講師にしている〉

 もちろん、中国で反発が起こったことが発端だったとしても、問題の根本にあるのは、「南京事件はなかった」などという「言論の自由」を逸脱した明白な虚偽を言い張っている点にある。それに対してはっきりと反論することもしようとしない。──今回の騒動で産経新聞はここぞとばかりに歴史修正タグである「歴史戦」の冠をつけて報じ、いつもの低劣な報道を繰り広げているが、リベラルメディアもこの体たらくでは同じようなもの。本質的な問題点を提示することもできないようでは、反知性主義に対抗できるはずもあるまい。
(編集部)

最終更新:2017.11.15 06:21

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