ラーメン二郎店長が語るワンオペ地獄、すき家では今もワンオぺが…人手不足が加速させる飲食業のブラック体質

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「週刊プレイボーイ」(集英社)2016年10月31日号

 電通若手社員の過労自殺が明るみになった件はいまだに大きな波紋を呼び続けている。今月18日には、東京労働局により抜き打ちの立ち入り検査を実施され、また、21日には、労使協定で定められた残業時間(所定外70時間)におさまるよう勤務時間を過小申告するように会社側からの指導があったのではないかとも報じられた。

 しかし、生命をも脅かしかねないような過酷な労働環境を強いられているのは、電通の社員だけではない。

 とくに、ブラックの評判が高い飲食チェーン店では、深夜の時間帯に全ての業務をひとりでこなさせる「ワンオペ」なる働かせ方が横行していた。この「ワンオペ」、牛丼チェーン「すき家」での常態化が問題になった2014年以降減少したと言われていたが、実はそうでもないらしい。

「週刊プレイボーイ」(集英社)16年10月31日号掲載の特集記事「俺の「ワンオペ地獄」を聞いてくれ〜!!」に興味深いインタビューが掲載されていた。多忙過ぎる勤務状況ゆえに体調を壊し、今年8月末に一時休業していた「ラーメン二郎」府中店の店主が、その裏に過酷なワンオペがあったことを明かしたのだ。

 ラーメン二郎府中店に関しては、休業直前から店主に明らかな異変が見られていた。その頃には誰の目から見てもまともな店舗運営ができなくなっており、インターネット上にはそのような状況を克明に実況した書き込みが溢れ、熱狂的なラーメン二郎のファン(通称「ジロリアン」)を心配させていた。

〈今、店内なんだけど。オヤジがボケちゃったかも知れん……。1時間麺も茹でずにボケーっとしてる。散々待たされた挙句、茹で上がってから提供するまでにも10分? しかも、つけ麺の人は間違えられてて、次ロットに回されてて爆発寸前だし……。と思ったら、今度はまた麺を打ち始めたよ? マジヤバイって……。並んでたお客も全員帰った。待ってた人には、払い戻しさえしないで帰る人も。返金を要求したお兄さんに何かを言ってるんだが、もう言葉が全然分からない。不安だ……。本当に、これが最後の府中二郎になる気がする……〉
〈もう本当にやばいよ。コールだって数秒で忘れてしまうし、キャベツすら切れない。誰か然るべき人が止めて強制的に休ませるべき。このままなら命にかかわるよ〉
〈今帰ってきた。21時には入店したつもりだが、出食10番目で22時に出食。明らかに店主の動きが悪い。他の客も心配そうに眺めている。ある客は「大丈夫ですか? 明らかにおかしいですよ。手伝いますよ!」と連呼していて、何も食べずに出て行った。済んだ丼が出しっぱなし。トッピングを聞いてから5分ほど丼をこねくり回している。途中で眠っているかのように動きが止まってる。野菜のトッピングはもやしだけで、しかも豪快にはみ出ている。味も醤油の味が一切しなくて油だけしか入っていない……〉
(改行や句読点は筆者で読みやすく改めた)

 前述の通り、このような状況に陥ったあと程なくしてお店は一時休業。9月24日には、本部から派遣されたスタッフを交えツーオペ体制で営業を再開しているのだが、「週刊プレイボーイ」のなかで店主はワンオペ体制になった経緯をこう明かす。

「以前は学生バイトがいたんだけど、卒業して辞めちゃって。まあ、しょうがないからひとりでも頑張ろうかと」

 では、またバイトを雇えばいいような気もするが、そうもいかない理由があると店主は語る。

「ウチのバイトはずっと“元常連客”ばかりです。なぜなら、毎日のまかないが二郎ラーメンだから。なので、ウチのラーメンが大好きじゃないと働いてくれません」

 本当かぁ!?という気もしなくもないが、いずれにせよそうしてワンオペ体制で店を続けていくうちに店主の身体にはだんだんと疲労が蓄積されていく。

「店は日曜が定休でしたが、今年は7月頭に4、5日休んだだけでほぼ無休。年のせいか、疲労がたまっちゃってね。夏を迎えると頭がボーッとすることが増えてきました」

 朝の仕込みから、客とのやり取り、製麺、片付けまでひとりでこなしていく日々を過ごすうちにある事件が起こる。それが店主の心と身体を破壊し、休業まで追いつめたのだった。

「食器洗浄機が壊れました。それからはシンクにたまった食器の手洗いという面倒な作業が加わり、腰痛がうずき始めた。朝に製麺するときも感覚がマヒし、小麦粉に加える水の量が多すぎて二郎っぽくない柔らかい麺ができてしまったり。その間違いには気づくんだけど、作り直す気力が湧かなくて……。結局、8月末に(三田)本店のオヤジに『いったん、休め』と言われ、一時休業を決めました」

 店主の証言した通り本当にバイトが集まらないのか、それとも本部からバイトを補充させてもらえない懐事情だったのか、疑問は残らないでもないが、バイトを募集しても本当にバイトが集まらない店もある。「ワンオペ」の代名詞でもある「すき家」だ。

 前掲「週刊プレイボーイ」では、現在、すき家で働いているバイト店員(大学4年生)によるこんな証言が掲載されている。

「継続してバイト募集を行っていますが、誰も来ないんです。時給を吉野家や松屋より50円上げましたが、それでも来てくれない。ワンオペで散々叩かれて『すき家=ブラック』というイメージがこびりついているんです」

 2年前に大問題となったのを契機に現在のすき家では深夜帯のワンオペ体制はなくなってはいるが、実はワンオペ自体がなくなったわけではないという。前述のバイト店員はこう語る。

「社員からも全店で深夜のワンオペ体制はなくなったと聞いています。ただ……この店では昼2時からの4時間と、朝5時からの6時間はワンオペ体制になるんです。
 社員の方もワンオペをなくすために近くの店でヘルプ要員を確保しようと頑張ってくれています。でも、どの店も店員不足だからどうしようもないんですよ。ウチの店には全部で8人しかいませんし」

「ブラックバイト」問題が広く報じられた結果、店舗スタッフに対し問題のある扱いを行った企業は従業員集めが困難になっているようだ。しかし、これによりブラックバイト問題そのものがなくなっていると考えるのは早計だ。

 たとえブラックバイトであろうと働かざるを得ない人々はいまでも過重労働に苦しんでいる。前掲「週刊プレイボーイ」で取材に応えていたすき家のバイト店員は大学4年生だったが、この学生はまさにその典型とも言える。いまの学生の多くにとって、アルバイトは、飲み代や趣味に使うお金を得るための「小遣い稼ぎ」ではなく「生活のための労働」と化している。

 子どもや若者の貧困問題は深刻さを増しているが、家庭からの仕送り額は年々減少し、学生が一日に使えるお金は900円以下というデータも出ている。仕送りだけでは就学不自由・困難だと感じる学生が40.3%もおり(12年度/全国大学生協調査より)、実際4年生大学昼間部の半数以上の52.5%が何らかの奨学金を受給している(12年度/学生生活調査による)。さらに、かつてはほとんどが無利子だった奨学金制度は、今や有利子の学生ローンと化していて、奨学金の返済計画のため在学中からバイトにいそしんだり、卒業後も事実上の借金を抱えながら四苦八苦する者が大勢いるのである。

 ブラックバイトという言葉を提唱した中京大・大内裕和教授も「POSSE vol.22」(NPO法人POSSE/14年3月)収録の対談のなかで、バイトのせいで肝心の学業が円滑に行えない学生が増えていると嘆いている。

「ゼミの合宿やコンパを実施することがこの数年間とても難しくなっています。それは学生にアルバイトの予定が入っているからです。曜日固定制のバイトであればその曜日は絶対に動かせない。直前までシフトが決まらないバイトの学生もいる。テスト前にも休むことができない」

 ここのところあまり話題にならなくなった「ワンオペ」問題だが、この構造は決して解決したわけではない。また、今年6月には、飲食店チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」でパワハラに遭い、さらに4カ月ものあいだ無休で働かされていたとして全国初のブラックバイト訴訟が起きたことも記憶に新しい。

 労働問題を考えるときは、ブラックバイトで苦しんでいる人がいることを認識しておく必要があるだろう。
(新田 樹)

最終更新:2017.11.12 02:30

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