週刊誌から「死ぬまでSEX」が消える?「週刊現代」が自らの人気企画を批判する記事を掲載しSEX決別宣言

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「週刊現代」2016年10月15日・22日号

 ここ数年、「週刊現代」(講談社)「週刊ポスト」(小学館)の2誌が競うように毎週誌面で大々的に取り上げ、書店やコンビニの棚を賑わし続けてきた「死ぬまでSEX特集」「死ぬほどSEX特集」。もしかしたら、そのブームに終止符が打たれるかもしれない──。

 というのも、「週刊現代」2016年10月15日・22日号の表紙に、こんな言葉が踊っていたのだ。

〈さようなら、「死ぬまでSEX」 妻からの伝言〉

 ついこの間、「60歳からの『耳でするSEX』」「60すぎても70すぎても 男なら、SEXで認められたい」「あの素晴らしいSEXをもう一度」などといったキャッチコピーが打たれていた場所に、決別宣言ともとれるタイトル。しかも、記事を読んでみると、いきなりこんな一言が飛び込んできた。

〈私たちは勘違いをしていたのかもしれない〉

 これまで同特集では、豊かな人生を送るためには高齢になっても性の悦びを忘れないことが大切なことであり、妻と定期的に夜の関係をもち続けることは夫婦円満をもたらしてくれると煽り続けてきた。しかし、それは間違いであった可能性があると「週刊現代」のこの号は主張するのだ。

〈年を取っても性生活がある夫婦は幸せ。そう思ってきた。クスリを買い、ラブグッズを使い、新しい体位も覚えた。妻も喜んでいるものと思っていた。知らなかった、妻がこんなに悩んでいたなんて〉

 妻の悩みとは何か? それは、妻は夫とセックスしたいなどとはまったく思っていない、むしろ苦痛だということだ。

 記事では、日本性科学会が14年に出した「中高年セクシャリティ調査結果」のデータを引き、50代以上の男性の約40%が妻とのセックスを求めている一方で、妻は50代で22%、60代で12%、70代で10%しか性交渉を求めていないという現実を読者に指し示す。

「死ぬまでSEX」ブームに関しては、これまでも医師たちから警鐘が鳴らされてきていた。たとえば、日本家族計画協会理事長の北村邦夫氏はウェブサイト「KERAKU」の連載のなかで、高血圧症状がある人の場合は性行為を行うにあたり健康被害のリスクが伴うということ、そして、閉経が近づいた女性が受ける「性交痛」の問題について注意喚起している。

〈閉経が近づくと、女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって腟粘膜が薄くなり、皮下脂肪の減少などによって、腟の乾燥や性交痛が起こります〉

 そして、こういった状況をさらに深刻化させかねないのが、パートナーがED治療薬を服用した場合だ。まだ十分な準備が出来ていない女性器にバイアグラなどの効果を得た男性器が無理やりねじこまれることで膣壁裂傷を負ってしまうこともある。

 今回の「週刊現代」の記事は、この問題にも自らメスを入れた。記事の中でセックスカウンセラーの田辺まりこ氏は、現在65歳の自分自身の体験を交えつつ性交痛に関してこう語っている。

〈実際に男性とセックスをすることに不安があります。最後にセックスをしたのが今から3年前で、挿入がとても痛かったからです。同じような悩みを持つ女性に対してはこれまで「十分に前戯をしてもらわないからですよ」と言っていたのですが、そうじゃない。どんなに丹念に愛撫をしてもらい、十分に濡れていても、痛いものは痛いんです。男性の勃起力が衰えていくように、女性も受け入れ能力が衰えていくんでしょう〉

 そして、特集記事の最後に登場する、夫からの誘いに辟易としている尚子さん(57歳)のコメントは、「死ぬまでSEX特集」の愛読者にとって絶縁宣言ともとれるものだった。

〈セックスをしたくない理由は痛いからです。2年前に完全閉経してから、濡れないんです。それなのに夫(65歳)は『もう妊娠の心配もないし、夫婦のコミュニケーションは大事だ』と言ってバイアグラまで買っている。気の毒といえば気の毒ですけど、枕元にある入れ歯の入ったコップを見ると気分が萎えます。
 痛みを訴える私のためにゼリーを買ってくれたのはいいんですが、それを娘(35歳)に見られ、『こんなものまで使ってするの? お母さん、いい年をして好きね〜』と言われて大恥をかきました。
 年を取ったら枯れましょうよ。セックスなんて若い人に任せておけばいいんですから。夫にもいい加減、目を覚ましてほしい〉

 年を取ったら枯れましょうよ──これまで「枯れる」ことを断固として拒否し続けた同誌がついにそのことを受け入れる提案を読者に向かって投げかけたのだ。

 しかし、数年に渡ってあれだけ煽り続けてきた「死ぬまでSEX」なのに、なぜいまになってこのような記事が出されたのだろうか?

「3年ほど前から本格的に始まったこの特集ですが、開始当初こそ大人気で部数も伸びたものの、最近では売り上げにあまり貢献しなくなり、読者からのリアクションも悪くなったようなんです。ここのところは『飲んではいけない薬』『やってはいけない手術』系の企画の方が人気ですし、『死ぬまでSEX』からは少し距離を取ることを目指しているんじゃないでしょうか」(出版関係者)

「週刊現代」は問題の10月15日・22日号は合併号のため、今週は発売されていない。もしかすると、これで同誌の「死ぬまでセックス」は見納めになってしまうのか。いや、実は「さようなら、死ぬまでSEX」はただの煽りで、次号にはまたしれっと「復活!死ぬまでセックス」なんていう特集が表紙に打たれるんじゃないか、という見方もある。

 ちなみに、ライバル誌「週刊ポスト」最新号の広告には「勝ち抜け!『性のクライマックスシリーズ』」の文字が…。いずれにしても、毎週月曜日、本屋やコンビニでトホホな気持ちになるこのパターンは、まだもう少し続きそうだ。
(田中 教)

最終更新:2017.11.12 02:36

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