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蓮舫問題も仕掛けた? 安倍が重用する“官邸のアイヒマン”北村滋内閣情報官は特高警察を称賛する危険思想の持ち主
内閣官房ホームページ
官邸のアイヒマン──。首相官邸には、こんなあだ名で呼ばれている安倍首相の側近中の側近がいる。ご存知、総理直属の諜報機関・内閣情報調査室(内調)のトップ・北村滋内閣情報官だ。
北村氏はもともと警察庁外事課長などを歴任した公安警察のエリートだが、第一次安倍政権時、首相秘書官に抜擢されたのをきっかけに安倍首相と急接近。警察と官邸のパイプ役として、日本版NSC立ち上げにも深く関わり、特定秘密保護法の法案策定でも中心的役割を担った。
第二次安倍政権で内調のトップに就任すると、北村氏はまるで安倍首相の私兵のような動きを見せ始める。
それまで、内閣情報官の首相への定例報告は週1回程度だったのだが、北村氏はほぼ毎日のように首相と面会し、菅官房長官を飛び越えて情報を直接伝えることもしばしばだという。しかも、内調は本来、国内外の情報を収集・分析するのが役割なのに、政権批判のカウンター情報や安倍政権の政敵のスキャンダルを流し始めたのだ。
「北村さんがトップに就任してから、内調は安倍政権の謀略機関になってしまった。古巣の公安のネットワークを使って、野党議員や政権の告発者たちの身辺を洗わせ、その情報を週刊誌や保守メディアに流すというのがパターン。たとえば、『週刊新潮』や『週刊文春』、産経系メディアには、担当の内調職員を配置していて、その職員がこれらのメディアの編集幹部と定期的に飲み会を開いて、情報をリークしているようです」(元内調関係者)
たとえば、最近では、民進党の山尾志桜里政調会長が安倍政権の保育園対策の不備を追及した直後、ガソリン代巨額計上問題がメディアを賑わせたが、これも内調の仕掛けだった可能性が高い。沖縄の翁長雄志知事に対するバッシング情報もほとんどは内調が情報源で、しかも「娘が中国に留学している」「人民解放軍の工作機関が沖縄入りして翁長と会った」といったまったくのデマ情報を流していたといわれる。
さらに、つい最近、民主党代表候補の蓮舫氏に二重国籍疑惑が浮上したが、これも大元の情報は内調だったのではないかと言われている。
「今回、火をつけたのはアゴラと産経だが、この話はその前から、内調関係者がしきりに口にしていた。アゴラはともかく産経がここまで踏み込んだのも、内調のオーソライズがあったからだといわれています。北村さんが官邸と連携して仕掛けた可能性はかなり高いでしょうね」(全国紙政治部記者)
まさに「官邸のアイヒマン」にふさわしい暗躍ぶりを示す内閣情報官・北村氏だが、実は、その思想の恐ろしさを示すような事実が発覚した。
北村氏がもともと公安警察出身であったことは前述したが、2年前、その警察関係者向けに出版された専門書のなかで、戦前・戦中の特高警察、弾圧体制を生んだ法体系を高く評価していたことが発覚したのだ。
この事実を報じたのは、8月18日付のしんぶん赤旗。同紙はが「秘密法強行主導の政府高官 戦中の弾圧体制 礼賛」との見出しを掲げ、北村氏が『講座警察法』なる本のなかで、〈太平洋戦争を「大東亜戦争」と表記したうえ、その勃発後は「その(外事警察の)影響力は飛躍的に拡大した」とのべ、国民を血の弾圧で戦争に動員した暗黒体制を礼賛しています〉と書いている。
官邸の諜報機関とも呼ばれる内調のトップが、戦前の言論弾圧を礼賛していたとすれば穏やかではない。早速、『講座警察法』第三巻(立花書房)に収められた北村氏の論文「外事警察史素描」を読んでみた。
くだんの論文はまず、このようにして始まる。
〈我が国が近代国家として誕生してから、外事警察は、国家主権といわば不即不離の形で発展を遂げてきた。本稿は、戦前・戦後を通じた外事警察の組織としての歴史的歩み、任務及び権限、現在直面する課題を素描することにより、いささかなりとも外事警察の全体的な理解に資そうとするものである。〉
いかにもエリート官僚的な書き出しだ。「外事警察」というのは、外国のスパイなど諜報活動やテロ活動など担当する警察の部門で、現在の公安部外事課(1〜3課)などが相当する。北村論文によれば、日本の外事警察は20世紀の訪れとともに成立したという。
〈明治三十二年は、日清戦争に勝利した我が国が、明治政府成立以来の悲願であった治外法権の完全撤廃を達成し、欧米列強に並び立つ独立主権国家として産声をあげた年であった。それは、同時に外事関係取締り法規が整備された年でもあった。〉
明治の終わりから大正にかけては、共産主義や社会主義運動を取り締まる特高警察が生まれ、主要府県に設置された。論文では〈外事警察が機能面で充実を図られたのは、大正六年のロシア革命を契機とする〉と記されているが、特高警察はのちに共産主義者だけではなく、翼賛体制を維持するために国民の反戦運動、いや、それだけでなく平和を訴える個人の手紙などへの取り締まりをも強化した。
しかし、北村論文では、特高警察が“思想警察”であり、言論や集会等を弾圧し、あるいは逮捕者を拷問死させていたという事実は、論文を最後まで読んでもまったく触れられない。
そして、論文の「大東亜戦争と対諜報」という小見出しにおいて、北村氏はこのように記述している。
〈昭和一二年七月に支那事変が勃発するや、我が国は、次第に本格的に戦争に介入せざるを得なくなり、近代船に対応する国内体制整備に迫られた。戦時における外事警察は、適正外国人の抑留と保護警戒、俘虜及び外国人労働者の警戒取締りは勿論のこと、敵性国による諜報、謀略、宣伝の諸活動に対抗する防諜機関として国策遂行上極めて重要な任務を担うことになった。〉
〈更に、大東亜戦争が勃発した一六年一二月には、内務省令第三一号により、外国人が居住地道府県外に旅行しようとするときには居住地地方長官の許可を要すること、その他について更に厳しい制限が設けられた。さらに、外事警察は、他省庁や軍部とともに防諜委員会を組織し、各種施策の決定、国防安保法、軍用資源秘密保護法等の防諜法規の策定、国民の防諜意識の涵養等の事務を遂行し、その影響力は飛躍的に拡大した。〉
こうした記述をもって赤旗が〈国民を血の弾圧で戦争に動員した暗黒体制を礼賛しています〉と評するのはもっともだが、これには少しばかり説明が必要だろう。『蟹工船』で知られる小林多喜二が特高警察の拷問によって殺されたことは有名だが、北村氏が述べる各種法規は、そうした特高警察の権限を強大にする後ろ盾となった。そして、北村氏が〈国民の防諜意識の涵養〉なる言葉で表現するものの実態は、庶民の私信の検閲を始め、自宅を訪問して調査するなど、徹底した思想弾圧体制であり、そこでは“でっち上げ”までもが日常的に行われていた。
敗戦末期、特高警察の一員として働いていた著者による『「特高」経験者として伝えたいこと』(井形正寿/新日本出版)という本がある。著者は当時の特高警察の「任務」をこのように記している。
〈当時の思想弾圧はすさまじいものだった。戸口調査といって、警察官が一軒一軒の家をまわって住民の思想動向を調べ上げ、社会主義者や朝鮮人についてはブラックリストを作成した。怪しい動きがあれば容赦なく逮捕して取り調べた。〉
あるいは、疎開先に家財道具を運ぶことができず、街頭で私物を販売していただけの庶民を逮捕し、「反戦思想」をもっているとして犯罪者に仕立て上げるようなこともあったという。
〈ある日、私の一年先輩になる特高係がその女性を署に連れてきて取り調べを始めた。「おばあちゃん、戦争さえなけりゃ、こんな疎開せないかんことないのにね」。女性はうなずいた。疎開しなければならない苦労から、自然にうなずいたのだろう。ところがそれを彼は、「反戦的な言動」として調書に記した。(略)つまり、戦争を批判したわけではないのに恣意的な尋問によって「自白」をつくりだしていたのである。〉
軍部だけではなく、警察組織もまた「天皇の警察」という権威のもと、ならず者めいた行為の数々をおこなっていたのだ。しかも、こうした“でっち上げ”は警察官が勤務評定を確保するために行われていたという。
北村氏は、こうした思想弾圧やでっち上げ、拷問を〈国民の防諜意識の涵養〉と表現しているのだ。これは戦中の警察による庶民の恐怖支配を肯定しているとしか考えられないだろう。
さらに北村氏は、戦後、特高警察や治安維持法が廃止されたことに関しても、「占領期における空白」との章で〈防諜、国体護持、治安維持のための作用法はことごとく消滅した〉として、このように述べている。
〈一方、終戦直後の国内治安情勢は、国民的目標の喪失感に伴う道義の頽廃、食糧難、住宅難及びインフレーションと失業による極度の生活難等から、一般犯罪は多発の一途を辿った。就中、昭和二〇年一〇月一〇日、総司令部の指示によって獄中にあった徳田球一を始めとする共産党指導者が釈放されて以降、労働運動やその他の大衆運動は急速に活発化した。そして、これらの大衆運動は、戦争による破壊、一部無責任な扇動分子の跳梁、国民生活の窮乏等を反映して集団的不法行為を続発させるに至った。〉
つまり、治安維持法がなくなり、特高警察がなくなったから不法行為が頻発した、などと無茶苦茶なことを言っているのだ。
続けて北村氏は、〈騒然たる治安情勢に対応して〉内務省に公安課が置かれたとするのだが、しかし戦後直後の国民の窮状と混乱が他ならぬ軍部主導の戦争にあったこと、そして、大衆運動が再興したのは警察組織による戦中思想弾圧の反動であったことなどが、ここでは完全にネグられている。
そしてなにより、サンフランシスコ講和条約発効の年である1952年に〈我が国の独立とともに再生した〉とする外事警察(=警視庁公安部等)は、まさに、戦中の特高警察の焼き直しに違いなかった。とりわけ冷戦時代が終わり、共産主義や過激派の衰退とともにその一義的な存在理由をなくしていった日本の公安警察は、予算や人員確保のために監視対象を様々に拡大していったが、これも、戦中の特高警察が勤務評定のため“でっち上げ”逮捕を行っていた事実とよく似ている。
いずれにせよ、北村論文が如実に語るのは、いまや安倍首相の片腕であるエリート警察官僚が、戦中の言論弾圧体制を一切批判することなく、むしろノスタルジーに浸っているかのように、大衆運動や思想の取り締まりを渇望していることなのだ。
いや、これはいち官僚がアナクロな戦前回帰の意思を持っているというだけの問題ではない。冒頭でも触れたように、いま、北村氏と内調は、安倍政権の政治的謀略機関と化している。
そして、北村氏の出身母体である公安警察と官邸の結びつきもこれまでにないくらいに深まり、安倍政権が目指す市民の監視、言論弾圧などの体制は、警察ぐるみで加速度的に進んでいるのだ。
たとえば先月、先の参院選で当選した民進党議員らの支援団体が入居する大分県の建物の敷地内に、大分県警が選挙期間中に監視カメラを設置して人の出入りを録画していたことが判明した。
例の自民党のホームページ上に設けられた「学校教育における政治的中立性についての実態調査」なる“密告フォーム”の問題もそうだが、ようするに安倍政権は、側近中の側近である北村氏の内調─公安ラインを駆使し、警察ぐるみで市民の思想・言論や集会結社の自由を抑圧しようとしている。
安倍政権が行き着こうとしているところは、北村論文が示しているように、戦前・戦中日本への無反省と憧憬からなる“警察国家”以外にない。「危機管理」や「機密」なる警察用語に騙されない。安倍政権が束縛しようとしているのは、ほかならぬ私たち国民の自由な思想と良心、そのものなのである。
(編集部)
最終更新:2017.11.24 06:47
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