太田光が「僕は今も護憲派」と言い訳しつつ「安保法成立で憲法改正は遠のいた」と安倍首相に甘すぎる発言

TBS『サンデージャポン』番組サイトより
また、この人か──。昨日、爆笑問題・太田光が『サンデージャポン』(TBS)で“珍説”をぶった。それは、こんなものだ。
「安保法案ってのが通ったことによって、僕は9条護憲派ですけど、憲法改正はうんと遠のいたと思ってるんです」
先週、参院本会議で可決・成立してしまった安保法案。多くの憲法学者や司法関係者が揃って「違憲」だとジャッジしたこの法案が通ったことによって、もはや憲法9条は骨抜きになった。しかし、この“憲法に対するクーデター”と言うべき事態を目の当たりにしてもなお、太田は“憲法改正したわけじゃないし”と言っているのだ。
よく知られているように、太田は2006年に『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書/中沢新一との共著)という本を出版し、そのなかで憲法改正の動きを牽制、9条のすばらしさを語っている。なのに、一体なぜ?……と首をひねらざるを得ない。
しかも太田は、「安保法案は憲法違反」だと反対するデモ運動に対しても、「(本を書いたときから)デモに関しては当時から懐疑的だった」と言い、このように持論を展開した。
「というのは、安倍さんは世界情勢が変わったからっていうけど、僕はそうじゃないと思う。安倍さんはこれ(新たな安保法制)をやるために政治家になったというところがあって。あの人は“戦う政治家”になるんだって宣言して出てきた人なんですよ。戦う相手っていうのは国民なんですよ。反対世論ですね」
つづけて太田は、安倍首相の祖父・岸信介が60年安保の際、反対派に屈することなく政治信条を通したことが「安倍さんが目指す姿」とし、いま、このタイミングで反対デモが起こったことを「安倍さんにとっては、自分がやりたいことの舞台装置がどんどん整っちゃうことになるのね」と解説した。
「僕は、テロに参加している人のことを別に否定はしないけれども(ここですかさず田中裕二が「デモね」と訂正)、あ、デモに参加していることを別に否定はしないけれども、全部、結果的に、自分の思いとは別に、安倍さんのやりたいことに協力するかたちになっちゃっているのは、俺は有効性はないと思うよ」
太田は以前にも、国会前デモに参加した瀬戸内寂聴に対し、「そのやり方は通用しないんじゃないかなと。むしろ同じ席に行って話すほうが効果があるんじゃないかと、もどかしさを感じる」と苦言を呈している。こうした一連の発言をまとめると、太田には解釈改憲への危機感がまったくなかったのだろう。
実際、昨日の放送では、「憲法改正はうんと遠のいた」と言った後、太田はこう語っている。
「ていうのは、安倍さんは2度とこれ(憲法改正)できないですよ。この大騒ぎになったことは2度とできないし、そうすると、(安倍が今後やるのは)いままで通りの解釈変更なんですよ。これは安倍さんがいちばん嫌ってた戦後レジームなんです。安倍さんは戦後レジームの脱却って言って出てきたんだけど、戦後レジームを継続しちゃったと僕は思うんですね。そうすると、安倍さんを支持した人たちに安倍さんはなんて説明するのか。僕は安倍総理にはその説明責任があると思うんですね」
まさに脱力。この人は、なんておめでたいのだろう。すでに安倍首相は「憲法改正に取り組むのは来夏の参院選後」(毎日新聞、9月12日付)と考えを明確にしているし、改憲こそが安倍首相の“悲願”だ。今回、これほどまでに反対の声があがり、世論調査でも3分の2以上の人が今国会での成立に反対するなか、法案を押し切ったことで、安倍首相はむしろ勢いづいていると考えるべきだろう。
そして、教育への介入でいまの憲法が押し付け憲法であることを子どもたちに刷り込みつつ、御用メディアと連動しながら改憲への世論誘導、地ならしを着々と進めていくはずだ。
いや、それ以前に、今回の集団的自衛権容認と安保法は、事実上の改憲ではないか。太田がいまも護憲派というなら、なぜそれを批判せずに、素人丸出しの解説などしているのか。
太田の「憲法9条」への思いは、所詮その程度のものだったのか。あらためて前述の本を開くと、そこには太田の熱い言葉が並んでいる。
〈今、憲法九条が改正されるという流れになりつつある中で、十年先、二十年先の日本人が、「何であの時点で憲法を変えちゃったのか、あの時の日本人は何をしてたのか」となった時に、僕達はまさにその当事者になってしまうわけじゃないですか。それだけは避けたいなという気持ち、そうならないための自分 とこの世界に対する使命感のようなものがすごくあるんです〉
〈僕は、日本国憲法の誕生というのは、あの血塗られた時代に人類が行った一つの奇蹟だと思っているんです。この憲法は、アメリカによって押しつけられ たもので、日本人自身のものではないというけれど、僕はそう思わない。この憲法は、敗戦後の日本人が自ら選んだ思想であり、生き方なんだと思います〉
9条は世界の理想であり、絶対に変えてはいけないもの──。芸人でありながら毅然と政治的な自分の考えを表明した太田のこのメッセージは、出版当時、強いインパクトを放った。しかも太田は、〈(9条の文言は)誤解しようがないし、わかりにくかったり、難しいところがない〉とも語っている。いま、安保法案成立によって起こっていることは、この「誤解しようがない」ものが、ねじ曲げられ、空洞化するという立憲主義の否定行為だ。
これだけ9条へ強い想いを抱く太田が、どうしてその9条の形骸化という暴挙を見過ごすのか。その答えが、じつは昨日の放送でポロッと出ていた。それは、9条へのスタンスを問われた際に出た言葉だ。
「(この本を世に送り出したときと)まったく変わっていないですよ。9条をこのまま残せっていう」
すなわち太田は、9条が改正されず、そのまま残るのならOK、と言っているのだ。9条が変わらないのなら、自衛隊がアメリカとともに事実上戦争に参加する、核兵器までをも弾薬だとするような、9条を踏みにじる法案を黙認する……。これでは本末転倒ではないか。
当然のことながら、9条は、ただ憲法に明記されていればいいというものではない。その言葉が機能し、権力を縛らなくては、何の価値も生まれない。たんなる死文化だ。
太田は、くだんの本のなかで、〈憲法九条というのは、ある意味、人間の限界を超える挑戦でしょう〉と言っていた。〈たぶん、人間の限界は、九条の下にあるのかもしれない。それでも挑戦していく意味はあるんじゃないか〉とも。
どうにも気付いていないようなので、太田にはひとこと言っておきたい。いま、その挑戦を打ち砕こうとしているのが安倍首相であり、暴力的な方法で安保法制を成立させたことで、あなたの大事な大事な9条を蹂躙したのだ。
……と言っても、もうこの人に何を言っても無駄なのかもしれない。なるべく決め付けたくはなかったが、この調子だと「やっぱり花見の会に招待されて安倍に骨抜きにされてしまったんだね」と言うしかなさそうだ。
(水井多賀子)
最終更新:2017.12.21 05:02
関連記事
新着 | 芸能・エンタメ | スキャンダル | ビジネス | 社会 | カルチャー | くらし |
統計不正で新たに「官邸関係者」明記の圧力メールが発覚! 安倍首相「いったん戻れ」の理由はこれだったのか
ウーマン村本「テレビは真実を伝えてない」に宇賀なつみアナが涙浮かべ同意、一方、羽鳥慎一は黒い本性全開で全否定
加計学園獣医学部の「四国枠」合格者がたった1名! 安倍首相は「四国の獣医師不足解消のため」と言い張っていたのに
安倍首相が統計不正の証拠メールを突きつけられ大慌て! 答弁中の根本厚労相に「いったん戻れ」と前代未聞の指示
“安倍チル魔の3回生”田畑毅議員を被害女性が刑事告訴!酔っている間に乱暴、盗撮動画も…安倍自民党の責任は?
「安倍がトランプをノーベル賞に推薦」を海外メディアはどう伝えたか? 世界に恥さらすも開き直る安倍首相
桜田発言よりひどい! 橋本聖子議員が池江選手の病を利用し「コンプライアンス、ガバナンスに悩んでいる場合じゃない」
安倍首相が統計不正を追及に「選挙5回勝ってる」と逆ギレヤジ! 選挙に勝てば何やってもいいという本音が
フィフィの蓮舫デマに丸乗りした新聞の責任! 福島瑞穂、辻元清美にも…“物言う女性”へのデマ攻撃を生む安倍忖度と女性蔑視
ウーマン村本大輔が朝鮮学校差別を煽る政治とメディアを痛烈批判! 韓国・朝鮮バッシングが無自覚な暴力を生んでいると
ウーマン村本「テレビは真実を伝えてない」に宇賀なつみアナが涙浮かべ同意、一方、羽鳥慎一は黒い本性全開で全否定
桜田発言よりひどい! 橋本聖子議員が池江選手の病を利用し「コンプライアンス、ガバナンスに悩んでいる場合じゃない」
竹内結子主演ドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』の女性蔑視がひどい! 伊藤詩織さんやはあちゅうの性被害告発も揶揄
SKY-HIが日本の“精神的、文化的鎖国”に危機感! 社会的メッセージがタブーの状況は「まさに監獄」
今度は嫌韓批判で炎上も、ブレない石田純一が安倍政権の圧力を笑い飛ばす! 内閣官房から「桜を見る会」に出るな、の電話が
新井浩文の事件に便乗して愚劣な“在日韓国・朝鮮人ヘイト”拡散も、ウーマン村本や柳美里らが毅然と批判
嵐・大野に活動休止を決意させた同棲謝罪会見強要と「新しい地図」の言葉…長瀬、中居もジャニーズ離脱か
大河『いだてん』脚本の宮藤官九郎や音楽の大友良英が“国威発揚、東京五輪プロパガンダにはならない”と宣言
大坂なおみが日清ホワイトウォッシュ問題を「気にしてない」「なぜ騒ぐ?」は誤報道!別の質問への回答を歪曲・誤訳
稀勢の里「歪なナショナリズムのアイコン」として政治利用された相撲人生! 受け続けた「日本スゴイ」の重圧が…
統計不正で新たに「官邸関係者」明記の圧力メールが発覚! 安倍首相「いったん戻れ」の理由はこれだったのか
加計学園獣医学部の「四国枠」合格者がたった1名! 安倍首相は「四国の獣医師不足解消のため」と言い張っていたのに
“安倍チル魔の3回生”田畑毅議員を被害女性が刑事告訴!酔っている間に乱暴、盗撮動画も…安倍自民党の責任は?
ウーマン村本大輔が朝鮮学校差別を煽る政治とメディアを痛烈批判! 韓国・朝鮮バッシングが無自覚な暴力を生んでいると
“安倍チル魔の3回生”田畑毅議員の離党の原因は深刻な女性トラブル! 暴行し警察沙汰の報道
桜田五輪担当相の池江選手への無神経発言は安倍政権の五輪至上主義が生んだ! 斎藤工主演映画の五輪描写にもクレーム
勤労統計不正で厚労省委員が官邸の圧力を証言!「数値が悪くなるやり方に菅さんがカンカンに怒っている、と」
辻元清美の“わずか2万円”外国人献金に大騒ぎする夕刊フジの愚劣! 安倍内閣の不正ネグり野党攻撃に血道あげる政権の犬
「私は森羅万象を担当している」安倍首相の“神宣言”は無教養なだけじゃない! 東条英機と同じ“肥大化した万能感”
青山繁晴議員が「僕と握手したらガンが治った」「僕の本を読んだら奇跡が」と吹聴! こんな国会議員アリなのか
不適切動画でバイトの若者だけを血祭りにあげ、訴訟表明の企業を擁護するマスコミとネットはおかしい!
2000万円支払い命令を受けたパワハラ上司の恐怖の実態! 執拗ないじめ、パワハラ裁判中にも手紙で人格攻撃
官民ファンドの高額報酬騒動は政権批判への意趣返か!? 経産省の大赤字クールジャパンへのデタラメ投資に反対の社長をパージ
ゴーンだけじゃない、巨額報酬の経営者がこんなに! ソニー平井、ソフトバンク孫正義、ユニクロ柳井…
やっぱり外国人実習生調査結果は嘘だった!「最低賃金以下」「過重労働」「暴力」を隠蔽…それでも安倍政権は来週強行採決
とりあえず土下座、朝礼で吊るし上げ、社長基準でクビ…ワンマン社長の“俺”理論が支配する中小企業の恐怖!
安倍政権に災害の対応押し付けられるコンビニオーナーの苛酷! 本部からは「避難は最後」「店を閉めるな」圧力
安倍首相の総裁選“デフレ脱却アピール”の裏で…政府の「賃金データ」操作が発覚! GDPアップにもからくり
残業代をおさえるために出退勤簿を会社が改ざん! 労働時間を証明するために労働者がしておいたほうがいいこと
東京ディズニーランドでキャラクターショー出演女性が“パワハラ”を提訴!「死んじまえ」「ババァはいらない」
安倍首相が統計不正の証拠メールを突きつけられ大慌て! 答弁中の根本厚労相に「いったん戻れ」と前代未聞の指示
「安倍がトランプをノーベル賞に推薦」を海外メディアはどう伝えたか? 世界に恥さらすも開き直る安倍首相
安倍首相が統計不正を追及に「選挙5回勝ってる」と逆ギレヤジ! 選挙に勝てば何やってもいいという本音が
フィフィの蓮舫デマに丸乗りした新聞の責任! 福島瑞穂、辻元清美にも…“物言う女性”へのデマ攻撃を生む安倍忖度と女性蔑視
渡辺謙が東京五輪の東北無視を「復興五輪のはずなのに経済五輪になっている」と批判!桜田発言だけじゃない五輪の人命軽視
安倍政権が北朝鮮から伝えられた田中実さんら拉致被害者の生存情報を隠していた! これこそ拉致問題の政治利用だ
トランプ大統領「安倍からノーベル賞に推薦された」…差別主義者の自己宣伝に使われる安倍首相の救いがたい“ポチ”ぶり
共同も「官邸の意向」と報道、統計不正は森友加計と同じだ! 厚労省に圧力の中江首相秘書官は安倍首相の子飼い官僚
安倍首相「自衛隊募集に6割以上の自治体が協力拒否」は嘘、本当は9割が協力していた! でも安倍は嘘認めず逆ギレ
小川彩佳アナが『NEWS23』キャスター就任か! テレ朝退社は結婚でなくジャーナリズム放棄への失望
追悼! 橋本治が生前に痛烈批判した安倍政権や日本会議が語る「日本」「伝統」…「明治以降の近代人が勝手につくった」と喝破
直木賞受賞『宝島』が突きつけた「沖縄問題」の本質! 沖縄問題から逃げ続けるマスコミ、『zero』は直木賞報じず
古市憲寿「平成くん、さようなら」と「終末期医療打ち切れ」論の共通性! 炎上から遁走したまま芥川賞狙いの姑息
百田尚樹『日本国紀』の無知と矛盾にネットから総ツッコミが! 同じ本なのに主張がバラバラ、監修者降板騒動も
米・中間選挙を前に「トランプNO」ミュージシャンが続々! ポール・マッカートニー、ガンズ・アンド・ローゼズも
「トランプに皮肉」と話題の村上春樹が過去にはもっと本気のトランプ批判! 安倍の歴史修正主義にも言及
BTSと秋元康のコラボ中止は当然! 秋元の女性蔑視や極右政権との癒着が問題にならない日本のほうがガラパゴス
さくらももこ追悼放映『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』が受けた安倍チル議員からの圧力
「りぼん」のフェミニズムマンガ『さよならミニスカート』が話題! 主人公はファンに切りつけられた元アイドル
ホリエモン、浅田真央のタクシー運転手叩きは弱い者いじめだ! タクシー運転手の置かれた過酷な環境をわかっているのか
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
雨宮塔子が「子ども捨てた」バッシングに反論! 日本の異常な母性神話とフランスの自立した親子関係の差が
『NEWS23』に抜擢された雨宮塔子に「離婚した元夫に子供押しつけ」と理不尽バッシング! なぜ母親だけが責任を問われるのか
小島慶子が専業主夫の夫に「あなたは仕事してないから」と口にした過去を懺悔!“男は仕事すべき”価値観の呪縛の強さ
人気記事ランキング
カテゴリ別ランキング
社会
ビジネス
カルチャー
人気連載
アベを倒したい!
ブラ弁は見た!
ニッポン抑圧と腐敗の現場
メディア定点観測
ネット右翼の15年
左巻き書店の「いまこそ左翼入門」
政治からテレビを守れ!
「売れてる本」の取扱説明書
話題のキーワード