産経新聞が「安保反対デモはヘイトスピーチ」との記事を掲載! 新聞記者なのにヘイトスピーチの意味も知らないのか?

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産経新聞社公式HPより


「産経ニュース」「iRONNA」「ZAKZAK」など、積極的なウェブ展開で知られる産経新聞社だが、29日付「産経ニュース」に、こんなタイトルのびっくりコラムが掲載された。

《国会前デモに集まるヘイトな人々 「あなた公安でしょ?」 記者はマスク姿に詰問され…》

 エッ!? 在特会か何かが国会前で排外主義デモでも行ったの? そう思って、クリックしてみると、どうやら、連日盛り上がりをみせている安保法制反対デモのことを書いているらしい。

〈「安倍は辞めろ!」と声を張り上げ、野党党首も参戦した。多くのマスコミは「民意の巨大なうねり」などと好意的に報じたが、実態は安倍晋三首相に対する暴言も目立つ「反政府集会」の様相を呈していた。
「戦争したがる総理はヤメロ! 戦争したがる総理はイラナイ!」
「勝手に決めるな、屁理屈言うな!」
「なんか自民党 感じ悪いよね!」
 衆院の特別委員会で安保関連法案が可決され、本会議での採決を翌日に控えた15日。シュプレヒコールが国会周辺に響いた。倫理的に問題のある「ヘイトスピーチ」といって過言ではない〉

 ……どういうこと? 「戦争したがる総理はヤメロ」が暴言? これが倫理的に問題のある「ヘイトスピーチ」? ちょっと言っている意味が分からないので、もう少し読み進めてみると、衆院特別委で安保法案が強行採決された7月16日のデモについて言及し、現役大学生らを中心にするグループ・SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の男子学生による演説内容を報じていた。

〈「『麻生さんが不良グループにからまれてどうのこうの』とか訳わからないこと言って。納得できるかボケ! ちゃんと準備してから来いよボケ! 俺はマジで怒っています。安倍政権をやめさせなければなりません」〉

 他には、民主党の岡田克也代表に辻元清美議員、共産党の志位和夫委員長、社民党の吉田忠智党首が反対デモ参加者の前で演説した内容を紹介。さらに〈この日の集会は、マスコミにはおおむね好意的に報じられた〉として、朝日新聞と東京新聞の報道についてもこのように言及する。

〈そうした報道からは「善良な一般市民がその正義感から、横暴な安倍政権の抗議に集まった」との印象を受ける。だが、デモ集会が異様な雰囲気であることはその場にいればわかる〉
〈行き過ぎた演説やシュプレヒコールは、逆に「善良な一般市民」をデモから遠ざけるだろう〉

 いや、本気で何を書きたいのか全然分からないんだが。というか、この産経のコラムを隅から隅まで読んでも、その〈行き過ぎた演説やシュプレヒコール〉なるものはどこにも登場しない。いったいなにを〈倫理的に問題のある「ヘイトスピーチ」といって過言ではない〉などと言っているんだろう?

 そもそも、本サイトでも何回も説明してきたことだが、ヘイトスピーチというのは、とりわけ人種、性別、民族など、自分では容易に変更することができない属性を根拠にした差別的表現、あるいは差別によって犯罪行為を助長する表現のことをいう。単なる罵倒や暴言のことではない。

 しかも、産経の記事内で取り上げたような、「戦争したがる総理はヤメロ!」「納得できるかボケ!」「自民党感じ悪いよね」程度の抗議のどこが暴言なのか。たとえば、本サイトはこれまで、安倍首相に対して「バカ」「マザコン」「憲法レイプ魔」とする論評を紹介してきたが、それに比べれば“やさしい表現”とすら言えるだろう。

 もっとも、本サイトが伝えてきたような強烈な表現だって、仮にそれらが安保法制反対デモのなかで使われたとしても、権力者に向けたものであることは明白だからこそ、受忍されてしかるべきなのだ。なぜならば、為政者に対して自由に批判できることが、民主主義国家としての絶対条件だからである。もし、為政者への批判が、その表現が口汚いという理由で認められないのであれば、権力は恣意的に批判言説を取り締まることができる。そうすれば、日本国憲法で宣言されている“主権在民”は意味をなさなくなるだろう。実際、過去に裁判所は、“首相などの公人中の公人と言える人物に関しては、厳しい批判や揶揄も「受忍すべき」”という判断をはっきりと下してもいる。

「総理やめろ!」も「勝手に決めるな!」も、さして厳しくもない単なる政権批判に過ぎずヘイトスピーチではない。この程度の批判もできないとなれば、それこそ産経が忌み嫌う、北朝鮮や中国のような言論統制国家になってしまう。

 ようするに、産経新聞の記者は、そんな基本中の基本も分かっていないのである。にもかかわらず、「ヘイトスピーチ」という語のネガティブなイメージだけはちゃっかり利用して、安保法制反対デモの批判に用いているのだ。

 いくら産経が安倍政権の御用メディアだとしても、さすがにこれはトンデモすぎると言わざるをえない。正直、本当にこの記事を書いたのは新聞記者なのだろうか? どこかのネトウヨブロガーの文章を転載しているのではないか? とすら思ったほどだ。しかし、記事の最後にはしっかりと、産経新聞政治部記者の個人署名が入っていた。

 さらにこの記事には、ジョークのようなオチまでついている。突然7月14日夜のことをもち出して、どうしようもないエピソードを語りだすのだ。

 なんでも、この産経政治部の記者は、14日夜の11時頃、国会近くの永田町駅で、マスク姿の30~40代らしいふたり組の女性に公安警察と間違われて、「なぜ、私たちの後をついてきたんですか? 地上からずっとつけてきたでしょう」と「詰問」されたという。

〈戸惑う私に、彼女たちはこう言い放った。
「あなた『公安』ですよね。警察手帳を出して」
「警察が自分の身分を嘘をついたらダメですよね。手帳を見せないと訴えますよ」
 公安(公安警察)とは、極左暴力集団や朝鮮総連、新興宗教集団などを内偵捜査して取り締まる警察の一部門だ。どうやら、私はその捜査員と勘違いされたようだ。「警察ではない。尾行なんてしていない」「嘘だ。身分証を出して」。そんなやりとりをしばらく繰り返した。周囲の乗客から向けられる好奇の目が辛い…。結局、電車がホームに到着し、何とか詰問から逃れることができた。
 マスクで顔を隠し、私を公安警察だと決めつけ、彼女たちは一体、何を恐れているのだろうか…〉

 何を恐れているのだろうか……とツッコミたいのはこっちだ。たんに公安と間違われたというエピソードを、さも意味ありげに語る前に、やることがあっただろう。ちゃんと名刺を出して「産経新聞の記者ですよ」と言えばよかったじゃないか。結局、そのマスクをした女性ふたりの素性は何もわかっていないし、「尾行なんてしていない」「メールのやりとりに夢中で気付かなかった」という記者の言い分が事実ならば、ふたりが本当にデモの参加者だったのかさえ定かじゃないはず。決め付けているのは自分だって同じではないか。また、念のため補足しておくと、この夜、SEALDsはデモを行っていない。

 そもそも、夜遅くに、何者かについてこられているような気がすることって、普通にないか? まあ、この記者がどんな服装をしていたかは定かではないが、その女性たちからしてみたら挙動が怪しく見えて、ちょっと不安になっただけなんじゃないの? ……まさか、この「あなた『公安』ですよね」と「決め付け」られたことが「ヘイトスピーチ」だと? いや、だとしたらこのギャグ、ハイレベルすぎる。

 まあ、おそらくこの記事の狙いは「安保反対デモの参加者は公安の調査対象になっている」あるいは「デモ参加者はやましいことがある」というミスリードといったところだろうが、はっきり言って、こんなものは妄想のつぎはぎでしかない。とても新聞記者とは思えない杜撰な文章である。

 ちなみに、極右雑誌「WiLL」(ワック)15年1月号に掲載された産経新聞社社長・熊坂隆光氏のインタビュー記事には、《産経新聞こそ日本のクオリティペーパー》なるタイトルがつけられているのだが、そのなかで熊坂社長は、昨年の朝日慰安婦報道問題に触れたついでに、こんなことを言っている。

「長く朝日をとっていた方が、いきなり産経を読むには刺激が強すぎる(笑)」

 たしかに、こんなネトウヨ丸出しの妄想怪文書を読まされるのは、あまりにも刺激的すぎるだろう。これが産経新聞の “安倍様クオリティ”であることを、われわれはしっかりと覚えておこうではないか。
(梶田陽介)

最終更新:2015.08.03 07:05

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