橋下徹の“引退商法”に全面協力し続投ラブコール…テレビ局の無節操ぶりに呆れ果てた!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
hashimoto_01_150518.jpg
不自然なまでの笑顔で政界引退を表明する橋下徹大阪市長(YouTube「ANNnewsCH」より)


 気持ち悪いくらいに笑顔を振りまき、不自然なまでにサバサバした口調。「説明しきれなかった僕自身の力不足」とだけ語る一見潔さげなポーズ。そして、「思う存分やりきった」「最高の終わり方」「政治家冥利に尽きる」と情緒的な言葉を並べ立てた政界引退表明……。

 5月17日の住民投票で「大阪都構想」を否決された橋下徹市長は、明らかに計算ずくのこのパフォーマンスによって、デタラメ政策の総括がなされるはずの会見を、国民的アスリートの引退発表のような花道に変えてしまった。

 そして、こうしたペテンに丸め込まれるばかりか、橋下の逆転作戦をしっかりアシストしていたのが在阪メディアの記者たちである。テレビ局の人間が橋下に共感を持ち、「都構想」報道では凍りついたように及び腰になっていたことは先日の記事で指摘した通りだが、今回の会見は、彼らが権力者に対峙する問題意識も、批判精神の欠片も持ち合わせていないこと、そして橋下を「仲間」であり「商品」と認識していることをあらためて露呈する結果になった。

 なぜそんなことになるのか。会見の模様をまずは振り返ってみたい。

●「お疲れさま」「やめないで」、ラブコールを送るバカ記者たち

 今回の住民投票は、あくまで橋下が提唱した大阪市の廃止・解体構想の是非を問うものだった。であれば、本来はその中身や経緯について、投票結果を受けた上であらためて質し、なぜ反対されたのか、総括させるべきであろう。橋下自身がたびたび変転させた「都構想」の狙いや効果、特別区設置協定書のお粗末さ、説明会やパンフレットで吹聴された粉飾やごまかし、住民投票に至るまでの強引かつ不透明な経緯。材料はいくらでもある。そうした詐術やプロパガンダに胡散臭さや不安を感じて反対票を投じた市民も多いのだ。

 投票前は「中立公正」に配慮して踏み込めなかったとしても、結果が出た後なら、遠慮なく聞くべきだろう。ところが、記者たちはほとんどそこに突っ込むことなく、「敗因は僕の説明不足」の一言で納得してしまった。そして、早々と橋下の進退問題に話の焦点を移してしまったのである。

 しかも呆れたことに、記者の多くは「橋下市長、松井知事、お疲れさまでした」と、上司か身内でも労うような言葉から質問に入り──そういう「文化」があるのだろうか、と思わずわが耳を疑った──まるで「やめないでほしい」とすがるようなニュアンスを言外に漂わせていた。象徴的だったのは、『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)のプロデューサー兼アナウンサー、野村明大である。

「70万人の方が都構想に賛成し、政治家として大阪のため、日本のためにまだまだ頑張ってほしいと賛成票を投じた。その数を見ても気持ちに変化はありませんか」
「(引退)発言を覆してほしいと思っている有権者も多いと思うが、ほんとうに(続投や再出馬は)100%ないんでしょうか」

 この質問に対して橋下が余裕綽々で語ったように、彼には府知事選出馬時に「2万%出ない」と言いながら、あっさり覆した過去がある。報道側としてはしつこく念を押し、政界引退の言質を取っておくことは必要であろう。そこまではわかる。しかし質問はさらにこう続くのだ。

「12月(の任期満了時)になって、あるいは10年後20年後の将来、大阪や日本の情勢が大きく変わっていた場合、もう一度政治家に(なる)という可能性はあると期待していいんでしょうか」

 このアナウンサーは橋下が府知事時代に長く番記者を務め、あまりメディアの人間と個人的に付き合わないと言われる橋下に、かなり食い込んでいたという。身内意識からの気安さが言わせたのだろうか、「期待」という本音が出てしまったわけだ。

 そこまで露骨でなくても、他の記者たちも似たり寄ったりである。

「安倍総理のようにリベンジ(再登板のことだろう)はないのか」
「テレビコメンテーターとして引っ張りだこだと思うが、どうするのか」
「(関係の深い)故・やしきたかじんさんや島田紳助さんに何を伝えたいか」
「市長ではなく、橋下徹個人としてメッセージを」

 これはいったい何のための会見なのかと呆れるばかりだが、これらほとんど「ラブコール」と言っていいほどのアシストを数々得て、橋下はますます笑顔になり、弁舌はどんどん滑らかになっていった。

「戦を仕掛けて負けたのに命を取られない。民主主義とはほんとうに素晴らしい政治体制だ」と、本サイトの別記事で指摘した「多数決至上の民主主義」論を滔々と繰り広げたのに続き、「嫌われてもやることはやる僕みたいな政治家はワンポイントリリーフでいい」「8年前は僕のような敵を作る政治家が求められた。今回いらないと有権者に言われたのは、この8年で大阪が安定したということ」と、しっかり自分の“実績”もアピールする。テレビ局に圧力文書を送ったことを棚に上げて、「報道の自由こそ民主主義の根幹」と記者連中を激励してみせたかと思えば、「テレビ局はディベートのルールがわかっていない。都構想の討論番組で賛成・反対の時間配分がおかしかった」と、巧みに敗因を責任転嫁する。

 時間にして約2時間。橋下の会見が独演会になるのは今に始まったことではないが、「都構想」という彼の最重要課題であり、政治的原点が否定されてもなお、記者たちは彼を持ち上げ、好き放題に語らせるばかりだった。

●メンタリティまで「芸能マスコミ」化したテレビ局の報道

 会見がこんな調子だから、各局の特番やニュース番組の報道も推して知るべしだ。

 開票当夜や翌日には、各局とも橋下が政治家になって7年半の歩みをVTRで振り返っていたが、どれも府知事就任直後の「(国の直轄事業負担金に抗議した)ぼったくりバー」発言や「教育委員会のクソ野郎」発言に始まり、「都構想」が劣勢の中、懸命に街頭で訴える最近の演説まで、あたかも「既得権益と抵抗勢力にたった一人で抗った改革者」のようなイメージの、安っぽい感動物語に仕立てていた。

「結局、テレビの人間はみんな橋下氏が好きなんですよ。やめてほしくないんです。都構想を表立って支持することはできないけど、心情的には共鳴している。だから橋下氏をヒーローのように扱う一方で、都構想反対派は、自民から共産までが手を組んだ既成政党の集団みたいな見せ方になってるでしょう。ほんとうは、学者や地域のさまざまな団体もこぞって反対し、若い子たちがボランティアでビラを配ったりしていた。そういうことが全部なかったことになっている」

 とは、ある在阪局の報道関係者である。

「橋下氏への共感に加えて、記者の能力の問題もある。たいして取材経験もない入社5年前後の人間がとりあえず橋下氏を追いかけ、その素材をセオリー通りにつなぐだけだから、そんなVTRばかりになるんです。若いから地域とのつながりもないし、市民の生活実感もわからない。反対派の人たちがなぜ反対するのか理解できないんです。地域振興会(自治会)や高齢者が『既得権益』だと橋下氏に言われれば素直に信じてしまう。上の人間がチェックすると言っても、大きな間違いがないかというぐらいのことですからね」

 権力者を監視・批判する姿勢もなく、客観的に取材・批評する能力もないとすれば、それは報道機関ではなく、ただの広報機関である。報道枠のニュース番組が「情報バラエティ」化しているばかりではない。そもそも作り手の側が人気者の機嫌を損ねることを恐れ、ひたすらお追従質問ばかりを繰り出す「芸能マスコミ」に堕しているというわけだ。

 それを証明するように、橋下のもとには今、テレビ各局からコメンテーターとしての出演依頼が殺到。なかには、故・やしきたかじんのような存在にしようと冠番組をつくる動きまであるらしい。

 おそらく、橋下はこれから売れっこテレビタレントの階段をのぼっていくだろう。そして、その先にあるのは安倍政権の改憲への全面協力、もしかしたら政界への復帰かもしれない。少なくとも、官邸は橋下をなんとか利用しようと、次の参院選か衆院選への出馬、それが無理なら、民間人閣僚や内閣参与への起用など、さまざまなオプションを用意するはずだ。

 テレビが生み、モンスターに育てた「テレビ政治家・橋下徹」は、大阪府政・市政に真に何を残したのか、混乱と不毛な対立だけではなかったのか、という問いを突きつけられることもないまま、意気揚々と「次」へのチャンスをうかがっている。
(安福 泉)

最終更新:2015.05.20 09:41

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

橋下徹(ハシズム)が逃げ出す質問160

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

橋下徹の“引退商法”に全面協力し続投ラブコール…テレビ局の無節操ぶりに呆れ果てた!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。安福 泉橋下徹の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 伊藤詩織氏がはすみとしこ氏を提訴!安倍親衛隊議員の責任
2 安倍晋三に中国電力から原発マネーが 
3 橋下徹がれいわ・大石あきこ議員に粘着攻撃で「大石パニックおじさん」の異名
4 玉川徹が『ドクターX』に出演して岸部一徳に言われた一言
5 文通費どころじゃない!維新が政党交付金も返還せず掠め取り
6 政治資金報告書で「維新」議員の文通費横流しとデタラメ使途が続々判明
7 自民党のネット誹謗中傷対策メンバーの平井卓也が女性蔑視書き込み
8 コロナ禍で困窮のさなか介護料を月6.8万円爆上げの鬼畜
9 葵つかさが「松潤とは終わった」と
10 はすみとしこが詩織さんをイラスト攻撃
11 三原じゅん子が「政権を握っているのは総理大臣だけ」と無知発言
12 吉村知事が府の施設に「表現の不自由展」使用許可を取り消すよう圧力!
13 山口敬之氏が詩織さんに卑劣すぎる反論
14 吉村知事「1日で文通費100万円、記憶ない」は嘘! 違法流用の証拠も
15 甘利明、下村博文、高橋洋一、橋下徹も……日本学術会議攻撃のフェイク
16 高須院長の署名偽造関与が濃厚に…女性秘書が書類送検、関与示す供述調書
17 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
18 れいわ議員の介助費用に「税金遣うな」攻撃、対照的だった『とくダネ!』
19 山本太郎・れいわ代表が「モーニングショー」で吠えた
20 山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
1 吉村知事「1日で文通費100万円、記憶ない」は嘘! 違法流用の証拠も
2 文通費どころじゃない!維新が政党交付金も返還せず掠め取り
3 維新は「パソナ丸投げ」病! 時短協力金業務でデタラメ発覚も新しい仕事
4 自民党・維新がコロナを口実に本気で「改憲」に動き始めた!
5 自民党の“アシスト係”維新が賛成した最悪の法案総まくり
6 高須院長の署名偽造関与が濃厚に…女性秘書が書類送検、関与示す供述調書
7 橋下徹がれいわ・大石あきこ議員に粘着攻撃で「大石パニックおじさん」の異名
8 コロナ禍で困窮のさなか介護料を月6.8万円爆上げの鬼畜
9 吉村知事が府の施設に「表現の不自由展」使用許可を取り消すよう圧力!
10 政治資金報告書で「維新」議員の文通費横流しとデタラメ使途が続々判明
11 安倍晋三に中国電力から原発マネーが 

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄