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警視庁がイスラム国事件で北大生と常岡浩介氏、中田考氏らを送検か!? 官邸がゴリ押し説
4月30日、米議会で演説する安倍首相(YouTube「FNNnewsCH」より)
安倍晋三首相が先月末の訪米で、アメリカの戦争にさらに加担することを勝手に約束したところを目の当たりにして、目眩すら覚えた。安倍官邸はまるでこう、ほくそ笑んでいるかのようだ──「国民の同意なんてものは、後から情報を操作すれば、簡単に形成できるのだ」と。
これは悪い冗談でもなんでもなく、実際、この国の政権は、いたるところに情報統制、印象操作の罠を張りめぐらしている。そしてまた、その一端が垣間見える事案が「暴露」された。
今月3日に、フリージャーナリスト・常岡浩介氏が、自身のGoogle+でこう書いたのだ。
〈暴露します。
GW明け頃、警視庁公安外事三課は去年10月の北海道大学生による私戦予備陰謀事件を検察に送検する方針を固めました。
北大生だけでなく、ぼくも、ハサン中田考先生も、他数人と共に送検されるそうです。〉
昨年10月、常岡氏は、「イスラム国」への渡航を希望していた北大生をサポートしたイスラム法学者・中田考氏から、北大生の同行取材を依頼されていた。そのことによって常岡氏は、警察から「私戦予備及び陰謀」なる容疑で家宅捜索を受けたのだが、本サイトは今年2月、「イスラム国」に拘束されていた湯川遥菜さん、後藤健二さん二人の救出が失敗に終わった直後に、公安警察が常岡氏らの逮捕をも視野に入れているという情報をキャッチし、記事にしていた。まさか今回、それが本当に実現するということなのだろうか。
事情を詳しく聞くため、本サイトは常岡氏当人に電話で直撃した。
「送検の方針は、今回被疑者にされている別の方の弁護士が警視庁に行きまして、捜査員から直接聞いてきたことです」
送検の方針は確かな情報のようだ。だが、容疑である「私戦予備及び陰謀の罪」というのは、刑法93条により規定されている「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する」というものだが、これまでに同条違反による強制捜査の記録はなく、法律専門家からも「化石のような条文」と呼ばれている。
しかも、常岡氏は取材という正当な理由で北大生に同行する予定だったわけで、これを「戦闘行為をする目的」とするのはどう考えても筋が通らない。つまり本来ならば立件不可能な事案なのだ。それでも、警察が起訴前提で送検するというならば、それは完全な“でっちあげ”を行うしかない。
実際、常岡氏は〈書類送検で済ますつもりで、逮捕してくれない見通しです〉と書いているが、起訴はむつかしく、警視庁の今回の「送検方針」は“かたちだけ”になる可能性が大だ。
ではなぜ、当局は無理やり常岡氏らの送検に打ってでるのか。
「弁護士が捜査員から聞いたのは、警察は『自分たちは送検したくない』と思っているが、官邸から『事件処理にするように』という圧力がかかってきたからしかたがない、という話でした」(常岡氏)
つまり、警察は、官邸からの「圧力」によって、立件される見込みが限りなく低い送検を行わざるを得なくなっている、というのである。
そして、官邸が圧力をかけたのは、同じくゴールデンウィーク後に公表される予定の、政府委員会によるイスラム国の後藤健二さんら邦人人質事件についての検証結果が関係しているのではないかと言われている。
政府は邦人人質事件の救出交渉にあたり、事実上“何もしていなかった”ことが明らかになりつつある。朝日新聞(4月16日付)によれば、政府は「イスラム国」側と直接交渉するルートを持っておらず、人質の解放交渉はもっぱら後藤さんの妻によるメールのやり取りに頼りきっていた。しかも政府は、後藤さんの妻のメール交渉には、文面も含めて関わっていなかったことが、政府関係者らの証言でわかったという。
今月の委員会検証結果の公表で、はたしてどこまでの情報が開示されるかは不明だが、政府主体の交渉すらままならなかった事実を公に認めれば、政権への批判は避けられないし、それを隠せば隠したで追及を受ける恐れがある。そこで、世間の目を逸らすための策として、常岡氏らを「送検」するのではないか──。そう推測されるのだ。この“検証結果目くらまし説”について、常岡氏が語る。
「建前では、送検というのは起訴を目指してやるということになっているのですが、今回公安警察は検察と話し合いをしているわけです。検察のほうがそもそも、立件、起訴はまず無理であると。そうすると不起訴か起訴猶予になりますが、検察は起訴猶予すら嫌がっているということを、やはり弁護士経由で知っています。おそらく送検だけして、その際に大きくメディアにリークしようという腹ではないかな、とこちらは考えています」
そもそも委員会の検証自体がかなりインチキなシロモノになる可能性もあるようだ。常岡氏が続ける。
「僕と中田先生は、今回の人質事件で、とくに湯川さんに関しては唯一、イスラム国側から直接連絡を受け、要求を突きつけられている当事者でした。その我々に対して、検証チームからの連絡が、一切ないんですよ。それは中田先生にも確認し続けているんですが、今のところ、政府からも、警察からも、まったく連絡がないんだそうです。私の場合、昨年11月11日以降、公安からの連絡・接触は一切ありません」
1月の会見で、中田氏と常岡氏が提案した、「イスラム国」との独自交渉ルートを無視し続けた政権は、検証の段階になってもなお、常岡氏らの話に聞く耳を持たないでいる。あるいは、昨年8月、湯川さんが拘束された時点で「裁判立ち会い」を求めるメッセージを受け取った常岡氏と中田氏に対し、警察が「私戦予備及び陰謀」などという無茶苦茶な名目で渡航を阻止さえしていなければ、湯川さんも、後藤さんも命を落とすことはなかったかもしれない。
だが、今回の常岡氏の暴露で分かったのは、結局、政府は一連の事件をまともに検証する気などさらさらないということだ。さらに、これを誤魔化すために北大生の渡航準備を改めて事件化し、ジャーナリストの常岡氏らまで送検しようと警視庁に圧力をかけている──。
これではもはや、この国が法治国家かどうかすら怪しいと言わざるをえない。警察法で「責務の遂行に当たっては、不偏不党且つ公平中正を旨」とすると定められている警察組織を、権力が“目くらまし”のために濫用するなど、もはや独裁国家のそれではないか。
そして、強調しておきたいのは、安倍政権が目論むこの情報操作は、間違いなく民主主義を破壊する行為だということだ。今回の邦人人質事件がまともに検証されないこと、そして批判をかわすためにジャーナリストをスケープゴートにすること、そのふたつを合わせると、国民にとって、事実を知る機会は、過去と未来の両側から葬りさられてしまうことになるからだ。
政府が己の権力を維持するために、国民の“目”を潰し、“耳”を引きちぎり、“足”をももぎ取る──。安倍政権の恐怖支配はどんどん進行している。
(編集部)
最終更新:2015.05.05 10:03
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