松尾スズキが女優論「私を通りすぎた女優たち」を独白! でもあの女優のことだけは…

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「大人計画 OFFICIAL WEBSITE」より


 2007年に公開された映画『クワイエットルームへようこそ』以来、約7年ぶりとなる監督作品『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』が公開中の松尾スズキ。近年では、『あまちゃん』でNHKの朝ドラを手がけるまでの“国民的脚本家”となった弟子・宮藤官九郎の陰に隠れ気味で、「クドカンと阿部サダヲを見出した功労者」「脇役でいい味出してるおじさん」はては「クドカンファミリーの松尾スズキ」扱いされる始末。以前、お伝えしたように、その心中は穏やかではない様子だ。

 だが、松尾といえば90年代の小劇場ブームを牽引した立役者のひとり。舞台はもちろん、映画でも独特の演出を見せてきたが、なかでも女優の隠れた魅力を引き出すことでも定評がある。とくに今回の『ジヌよさらば』は、「松たか子と二階堂ふみのお色気シーンがすごい」と評判だ。

 たとえば、二階堂は映画のなかで怪しい女子高生を演じているのだが、パンツが丸見えになるというシーンが。初日舞台挨拶で二階堂は「どうですかね? さらけ出したつもりなんですけど」と話し、そのパンツ公開シーンでは拍手さえ起こったというが、撮影の舞台裏を松尾はこう語っている。

「二階堂さんはオープンな方で、全然抵抗なく演じてくれました。『預金通帳を見ながらゴロゴロして』と言っただけです。短いスカートからパンツが見えちゃうことぐらい承知で、ケロッとして演じてくれました」

 松尾がこのように話しているのは、現在発売中の「文學界」(文藝春秋)でのインタビューでのこと。「私を通りすぎた女優たち」と題し、女優論について語っているのだが、今回の映画でキャスティングした二階堂について松尾は、ドラマ『熱海の捜査官』(テレビ朝日系/2010年)で共演した際、「人柄に惹かれた」と言う。

「彼女はまだ十五歳ぐらいの高校生だったけど、自分の言葉で喋る人だった。自分を腐女子だと言い切っていて、いろんな妄想を撮影の合間に話してくれました(笑)。沖縄の街なかで育って、お祖母ちゃんもお母さんもファッションに明るく、家から三分の場所に映画館があるので映画をよく観ていたというバックボーンを聞いて、センスの良さはそういうことかとも思いました」

 松尾は5月末から上演される舞台『不倫探偵 ~最期の過ち~』でも二階堂を起用。松尾の二階堂への惚れっぷりが伝わってくるが、一方の松たか子についても思い入れは深いようだ。

 映画では下着姿で縛られるという際どいシーンが登場する松。松尾は自身が脚本を手がけた『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(07年)を観て、「(松が)すごく良かった記憶があったんです」と語り、その魅力をこのように言葉にしている。

「松さんは女優として、とてもフラットに振る舞う才能がある」「松さんのパーソナリティ自体にフラットな魅力があるんです。女優としてのエゴイスティックな面が一切ない。役作りのために部屋に籠もったりせず、衣装合わせとかでもちゃっちゃか決めていく。性格なんでしょうね。お父さんである松本幸四郎さんもせっかちらしいですよ(笑)」

 二階堂と松に共通する、飾らない人柄と潔さ。ここから松尾が求める女優像の片鱗が窺える。また、『あまちゃん』で共演した能年玲奈については、「アイドル性の高さを感じました。スタアのオーラではない、アイドルの空気。演技に入るとなぜ瞳がうるうるしているのか、それがずっと謎でしたね」と松尾。

 ベテランから新人まで、錚々たる女優と仕事をともにしてきた松尾だが、そんななかでも松尾がもっとも「特別な女優」と名を挙げるのは、意外にも(!?)片桐はいりである。

「自分の面白い顔を知悉しているところですね。ただ面白い顔を作るんではなくて、どういう場面で効果的なのかということを知っていて、それが出来るということ。片桐さんは絶対外国でもウケますよ」

 効果的に面白い顔をつくれるか──いかにも松尾らしい視点であるが、そんな片桐を想定して脚本をつくったのが、01年に初演した『マシーン日記』。この舞台のなかで片桐はセックスマシーン(!)の役を演じている。

「片桐はいりはセックスマシーンの役をやったことがないだろう、と考えて。そこに驚きを作っていく。これは作劇上、演出上でも言えますが、興行師として驚きを与えたいという気持ちが働くんですよ」

 驚きを与えるという意味では、同じように舞台『ふくすけ』(12年)で“清純派”イメージの強かった多部未華子にホテトル嬢の役を当てた。そのときのことを振り返って松尾は「見事に受けて立ってくれましたね」と多部を称賛している。

 ただ、すべての女優がそんな松尾の期待に応えられるというわけではない。とくに“脱ぐか、脱がないか”というシビアな問題もある。たとえ「必然性があるのに脱がないのは不自然」なシーンでも、そこには折衝が待っている。

「ベッドシーンで女優の胸のところまでキツキツにシーツ巻いていたりね(笑)。谷間すら見せず、そんなんでどうやってセックスするんだよ!という」

 しかも、折衝相手は女優本人というより、所属事務所であるらしい。

「マネージャーと別室で話し合うこともありますよ。胸の絵を描いて、線を引きながら『バストトップまでならいいのか』『いや、肩から下はダメ』とかやり取りして露出のガイドラインを決める。胸の谷間はいいけど、横から下から見えるのはいやらしいからダメとか、細かく規制されるんですね。タンクトップの横からはみ出している胸がいいと思うんだけど……。エロスはアートだからいいけど、エロはダメというわけです」

 このように、女優論からエロス/アート論まで語り尽くしている松尾のインタビュー。しかし一点、不自然に感じられるのは、松尾が女優開眼させた人物として多くの人の頭に浮かんでくるであろう、酒井若菜の話は一切出てこない点だ。

 松尾は04年に監督した『恋の門』で酒井を主演に抜擢。それまでグラビアアイドルのイメージが強かった酒井を見事に演技派女優として印象付け、その後も松尾演出の舞台『キレイ─神様と待ち合わせした女─』(05年)に主演が決まっていた。一説には、酒井はこのとき連続ドラマの主演オファーを蹴ってまで松尾の舞台を選んだといわれているが、なぜか舞台初日の18日前に降板を発表。表向きには病気が降板理由だったが、一部報道は松尾と酒井の不倫関係が松尾の妻に発覚したことが降板につながったのではないかと見られていた。そんな騒動以降、それまで勢いが嘘のように酒井をテレビで観る機会はぐっと減り、ようやくNHKの朝ドラ『マッサン』で復活を果たした……というわけだ。

 やましいことがないのであれば、この機会に女優としての酒井の魅力にも言及してほしかったが、それはなし。他方、女優と恋愛、結婚を繰り返してきた野田秀樹は、元恋人・大竹しのぶの実娘であるIMALUとの同居生活も隠さないが、さすがに不倫ではそうもいかないのか。というよりも、女優との恋愛沙汰をネタとして割り切れないナイーブさこそ、松尾らしさなのかもしれないが。
(大方 草)

最終更新:2017.12.23 07:12

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