ジャニーズ“ヤラカシ”事件簿を検証!「過激なファンは殴られても仕方ない」のか!?

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過去には赤西軍団が一般人の携帯電話を強奪する事件も……


 先日、「明星」(集英社)を筆頭に、「ポポロ」(麻布台出版社)「WiNK UP」(ワニブックス)「POTATO」(学研マーケティング)「duet」(ホーム社)といった複数の競合アイドルグラビア誌が、相次いで同じ警告文をTwitterの公式アカウントで発表し、話題を集めている。

 例として「明星」編集部がアップした警告文は、こんな文章だ。

〈最近、雑誌に掲載されている写真および文章を、写真撮影やスキャン等を行ない、許諾なくツイッターで公開する行為が目立っております。これらの行為は著作権、肖像権等を侵害するものであり、場合によっては刑事罰が科され、あるいは損害賠償を請求される可能性があります。くれぐれもご注意ください。〉

 他社のアイドル誌も上記とほぼ同じ文面だったため、これを見た人々のあいだではすぐさま「ジャニーズからのお達しか?」という憶測が広がった。芸能事務所のなかでもとくにジャニーズ事務所は肖像権にうるさく、いまだにジャニーズタレントはドラマに出演したり雑誌の表紙を飾っても、ドラマの公式サイトや電子書店では画像が使用できないケースも多いからだ。

 だが、今回アイドル誌が出した警告は、あきらかにファンを含んだ一般読者に向けたものである。ファンたちが雑誌のグラビアや記事を写真に撮ってネット上に公開することはよく見られる光景だが、それで商売をしているのならいざ知らず、ファンがSNSで楽しむ分にまで刑事罰や損害賠償請求など穏やかではない話を持ち出して脅しをかけるのは、あまりに行きすぎた行為ではないか。

 しかし、こうしたジャニーズの強気な攻勢に対し、ファンのあいだでは「またヤラカシのせいで!」といった“ヤラカシ批判”が起こっている。

「ヤラカシ」というのは、アイドルの追っかけのなかでもプライベートまでつきまとうなどのマナー違反をはたらくファンを指した言葉。じつは、これまでもジャニーズタレント絡みの事件では、このヤラカシたちがファンのなかで批判の的になってきた。

 たとえば、『ジャニーズJr.ランド』(BSスカパー!)などに出演し、愛らしい顔立ちで人気を集めていたジャニーズJr.の水越大介の事件でもそうだった。水越は2013年の後半からコンサートやアイドル誌から姿を消し、ファンのあいだでは退所が噂されていたが、昨年12月、「週刊女性」(主婦と生活社)で退所の経緯について驚きの告白を行った。退所の原因はヤラカシだと述べたのだ。

「週刊女性」のインタビューによると、水越は13年6月、学校から帰宅する際に2人のヤラカシに追いかけられ、「なんでウチらを無視するの?」とかばんや服を引っ張られたという。止めるように頼んでも何度も繰り返される行為に、「思わず足元の石や砂利をつかみ、1人の人に投げつけて、そのまま振り返らず自転車で全速力で帰宅した」と振り返っている。

 しかし騒動はこれだけでは終わらない。ヤラカシの1人が水越の投げた石によりケガを負い、水越は警察に連行されることに。その後、水越と負傷者の間で示談が成立したが、それ以来、ジャニーズ事務所から連絡が来ることはなく、アイドルへの道を閉ざされたという。

「週刊女性」は水越の独占告白なため、水越が自分の都合の良いように話している可能性もある。しかし、そうした事情はすっ飛ばして、ファンたちは「ヤラカシのせいで水越は未来を潰された」としてヤラカシに批判の矛先を向けた。だが、普通に考えれば、ファンが暴走したなら事務所がタレントを保護すべきで、事務所の管理責任を問われる事案だ。だいたい、いくら迷惑行為を受けても、石を投げつけるというのは立派な傷害事件なのである。

 だが、昨年4月に「週刊文春」(文藝春秋)が報じた、ジャニーズJr.の岩本照が駅のホームでファンに暴力をはたらいたという件でも、同じようにヤラカシ批判が巻き起こった。このとき、女性ファンは手術が必要なほどの大けがを負っているにもかかわらず、その後ファンがヤラカシで、Twitterで「暴力ふるわれなさすぎてちょっと寂しい」「わたし以外に暴力振るってんのとか本当嫉妬しちゃうし」といった発言を繰り返したことが判明すると、一転、「ヤラカシが悪い」と岩本に同情的になり、非難の声は女性ファンに集中した。

 しかしこの件も、たとえ追っかけのマナーがなっていなかったとしても、それだけで大けがを負わせていいはずがない。さらに、こうした未成年タレントの暴行事件が起これば事務所が社会的責任を追及されるものだが、ジャニーズは事件を隠蔽し、スポーツ紙や出版社に圧力をかけて事務所批判を封じ込める。通常ならばタレント本人や管理者である事務所が責められるはずなのに、ジャニーズという圧倒的権力を前にはそうした批判自体が起こらない。そのため、このような女性ファンだけを責め立てる論調が生まれてしまうのだ。

 また、ヤラカシとは言えないが、昨年6月には、山下智久と関ジャニ∞錦戸亮、元KAT-TUN赤西仁が、六本木で一般人の携帯電話を強奪するという事件が発生した。のちに被害者が「週刊ポスト」(小学館)に語ったところによると、3人に遭遇した被害者カップルが思わず名前を叫んだところ、錦戸が「こいつ、やろうぜ」と激昂したという。暴力を恐れたカップルが携帯電話で一連の様子を動画撮影していると、それに気づいた山下がデータを消すように強要。指示に従ったものの、そのまま山下は携帯電話を持ち去ったという。その後、山下が書類送検されたのだが、このときも「被害者がいきなり動画を撮ったのが悪いのでは?」「有名人だからといって、プライベートを邪魔される権利はない」と、3人に同情が集まるかたちになった。

 ここでいま一度、確認しておきたいのは、ファン相手に商売をする限り、いつの時代も行きすぎた行動をとる者がいることを事務所は想定しなくてはいけないということだ。こうしたとき、タレントを守ることは事務所の大事な仕事であり、無論、水越や岩本、山下のように暴力や器物破損といった行為をはたらくことは決して許されることではない。批判されるべきは暴行したタレント自身であり、事務所である。その前提をなし崩しにして、ヤラカシに反省を促すのは、まったく道理に合わない話だ。

 すべてをヤラカシだけのせいにして、暗にタレントや事務所が受けるべき批判をファン批判にすり替える。タレントも教育・管理できないで、ファンに事務所のツケをはらわせるとは、ジャニーズの体質は根本的に間違っているのではないだろうか。
(林グンマ)

最終更新:2015.03.20 12:15

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