【特別企画】3・11を風化させるな! 被災地で原発で何が起きているのか

復興予算はなぜ被災者支援に届かなかったのか? 復興を食い物にする政治家、官僚

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
kokkanoshiroari_01_150309.jpg
『国家のシロアリ 復興予算流用の真相』(小学館)

 東日本大震災から4年。ハコモノやインフラ整備など表面上の復興は一見進んでいるようにみえるが、いまだ約23万人もの人々が避難生活を続けている。災害公営住宅にしても着工したのは計画の半数ほどで、住宅地の高台移転も宅地造成の完了は3割程度だといわれている。このように被災者の視点、目線での復興は遅々として進んでいないのが現状だ。

 そんななか、今後の復興予算の行方に注目が集まっている。3月に入り竹下亘復興相が復興予算の「全額国費負担の見直し」を示唆したからだ。国が集中復興期間としているのは震災から5年間の今年2015年度まで。しかし、多くの人々が避難生活を送っていることからも分かるように、復興予算は人々の仕事や生活への現状復帰、住宅支援には十分に活用されていない。そんな状況の中での竹下復興相発言は「自治体の過大な負担」と受け止められ、被災地に大きな衝撃を与えている。

 実際、これまでも復興予算はまともに活用されていたとは決していえないものだった。その典型が復興予算の流用問題だ。

 この問題を「週刊ポスト」(小学館)誌上でスクープしたジャーナリスト・福場ひとみによる『国家のシロアリ』(同社刊)は、復興予算がどう流用されたかを追ったルポルタージュだ。そこから浮かび上がってくるのは25兆円という莫大な復興予算を巡る省庁、官僚たちの予算ぶん捕り合戦と、被災者を無視したあまりに杜撰でいい加減な予算流用の実態である。

・国会議事堂のステンドグラス代 1億2000万円
・霞ヶ関合同庁舎4号館改修費 12億円
・シーシェパード対策費 23億円
・金融庁職員の基本給 5205万円
・沖縄県の道路整備 22億円
・国際交流基金の芸術家の海外派遣など 1億2000万円

 本来、被災地の復興という目的のはずの復興予算が、全く別の目的に、そして被災地とは何ら関係のない地域にその大半が充てられていた。しかもなかには天下り法人にまで。

 なぜこんなことが起こっているのか。著者は政治家、担当省庁への取材を開始する。そこで浮かび上がってきたのが日本の予算を支配する官僚たちの権力構造と、癒着、そして共犯関係にある政治家の存在だった。

 長きに渡り国の各省と財務省の“あうんの呼吸”で決まっていたという日本の予算。しかし震災前、政府の財政緊縮方針で査定が厳しくなり、要求が受け入れられない状況になっていた。そこに降って湧いてきたのが復興予算だ。

「財務省は2011年8月の時点で、各省庁に『復興関連予算は青天井だ。遠慮しないで要求してくれて構わない』と太っ腹な姿勢を見せ、(当時の)野田首相も9月20日の閣僚委員会で『青天井でいい。しっかりと要求していただく』と財務官僚たちと全く同じ言い方をした」
 
 予算を一手に握る財務省、そして時の首相がともに「青天井」というのだから、省庁も要求し放題になるのは当然のことだった。しかも“復興”に少しでも関連づければ(実際は全く関連づけてすらいなかったが)要求が通ってしまう。各官庁は大喜びで復興予算に群がった。ある省の課長は著者にこう証言したという。

「実は財務省の主計官から、“欲しい予算があったら、復興名目で出したら付けてやるから、復興に関連があるように書いて要求しろ”と言われたので、本当はこんなもの復興予算で要求するなんてまずいと思っていたけど、供給したんです」

 国の予算を、いや国民の血税をこんな乱暴に、しかも目的外に使っていた。これは国家ぐるみの詐欺といわれても仕方がない所業である。

「彼ら官僚にとって、その事業の予算が、何の名目の予算であるかはさして重要ではない。復興予算だろうが、本予算だろうが、自分たちの計画した予算が無事に通るなら、どちらでも構わない。つまるとこと、財布の違いでしかないということだ」

 一方で、被災地の石巻市が防災無線整備のために復興交付金を要望したが、「緊急性が乏しい」とはねられていたという。一体何のための復興予算なのか、著者もなぜ官僚たちがそんなことをしたのか本音は伺い知れないとしたうえで、こう記している。

「まず国側が優先して事業を行うことが復興に役立つと思ったのだろうか。それとも、復興予算も「国家予算」なのだから、我々の金だというのが、彼らの感覚だったのだろうか」

 そしてもうひとつ、本書は、復興予算流用の裏に、政府による景気対策の思惑が存在したのでは、と指摘する。その舞台となったのは東日本大震災復興構想会議だ。これは首相の諮問に基づき復興構想について審議を行う政策会議だが、当時の菅直人首相の「諮問書」には「被災地のみならず」という言葉が2回も登場する。さらに「被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。また、日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない」という文言も謳われている。これらは「復興のための経済対策なら日本中どこでやってもいい」とも解釈できる。とすれば、復興予算の「青天井」化のお墨付きが政府から下されていたことになる。

「当時の資料をもとに改めて振り返ってみると、被災地以外や、復興と直接関係性のないものに拡大して復興予算を使っていきたいとする、明確な意図が見て取れる(略)復興予算を被災地外に使う流用のシナリオが、官邸中心に進められていたことは間違いない」

 官邸主導で作られ、各省庁が実行したのが復興予算の流用だった。さらに当時の野党・自民党もこれを押し進めたという。もちろん利権に関しては民主党より自民党が一枚も二枚も上手だから当然のことでもある。さらに復興特需の恩恵をこうむることができる関係企業も諸手をあげて賛成し、政財界による復興を名目にした“被災地無視の景気回復プロジェクト”が完成したというわけだ。

 復興増税により国民から巻き上げた金で、無関係な事業に膨大な金がバラまかれる。しかも一方では、本当に困っている被災者に復興資金が支払われないケースも存在する。

「被災地に住む50代の男性は、飲食店を開業直後に被災したため、二重ローンを抱えている。ところが過去に一度だけ税金の滞納があったために、復興関連の制度を使うことはおろか、復興予算関連の補助金を一度たりとも貰っていないという」

 何度でもいうが、復興予算は私たち国民の血税によって捻出されたものだ。被災翌年の13年から25年間の長期にわたり所得税の2.1%アップ、そして14年からは住民税に1000円が復興税として徴収されている。国民は決して景気対策や復興とは無関係な事業のためにこれを支払っているのではない。被災者の生活、そして被災地の復興を願い、そのために使われると信じているからこそ払っているのだ。

 しかも震災後3年間で、約25兆円の復興予算のうち9兆円もが未消化や返還されていたことも判明している。その理由として、住民と自治体の調整の困難さや、除染等の人手不足など、被災地の実情を考慮していないことが指摘されている。

 結局、復興予算は津波や原発事故で家や故郷を失った被災者たちのためではなかったということだろう。そして恩恵にあずかったのは復興特需に群がる政治家、官僚、そして一部企業だった。そんな杜撰な使い方をされている復興税を私たちは今後21年間も支払い続けさせられるのだ。否応なく。

 震災から4年、杜撰な復興予算の使い道、行方を今後もチェック、監視する必要がある。
(伊勢崎馨)

【特別企画 3.11を風化させるな! 被災地で原発で何が起きているのか(第一弾)(第ニ弾)(第三弾)(第四弾)(第五弾)(第六弾)】

最終更新:2015.03.10 06:49

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

国家のシロアリ: 復興予算流用の真相

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

復興予算はなぜ被災者支援に届かなかったのか? 復興を食い物にする政治家、官僚のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。伊勢崎馨復興税金震災の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 岡村隆史が『PRODUCE 101』で韓国人練習生にセクハラ・差別連発!
2 安倍内閣大臣と暴力団の密接交際発覚も不問状況にほっしゃん。が
3 英軍ラグビーチームの靖国訪問にイギリスで批判殺到、大問題に!
4 千葉の復旧遅れ テレビで政府の責任追及がタブーに! 坂上忍も羽鳥慎一も
5 『ミヤネ屋』でフェイク 文在寅攻撃の急先鋒・武藤元韓国大使の正体!
6 元AKB48大島麻衣の“嫌韓ネトウヨ”への反論がカッコいい
7 葵つかさが「松潤とは終わった」と
8 東山紀之が『旅サラダ』で菅官房長官の名前出し神田正輝も最敬礼
9 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
10 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
11 ネトウヨ高須院長に息子が苦言!
12 柴山文科相が入試改革を批判した現役高校生を晒し上げ公選法違反と恫喝!
13 テレ朝『ワイド!スクランブル』が「旭日旗」の極右デマ拡散
14 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
15 原発事故前に安倍が地震対策拒否
16 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
17 松本人志『ドキュメンタル』のセクハラ
18 上田晋也の番組で東国原英夫と千原せいじが日韓問題への無知晒す
19 NHK『クロ現』が総理圧力の証拠報道
20 残業代支払われず労働組合に相談したら会社が訴えてきた!?
1 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2 安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4 明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5 『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7 『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8 文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9 埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10 安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11 菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13 安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16 『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20 『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄