BiSを殺したのは誰だ? 崩壊のきっかけは全裸パフォーマンス

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『BiStory〜アイドルを殺したのは誰?』(エムオン・エンタテインメント)

 カルト的な人気を誇ってきたアイドルグループ・BiS(新生アイドル研究会)が明日7月8日、横浜アリーナでのラストライブ『BiSなりの武道館』をもって解散する。横浜アリーナなのに武道館というタイトルもまたBiSらしいが、そのことは後述するとして、最近のBiSは、これまでのキワモノ的な扱いにとどまらない高い注目と評価を集めていた。
 
 春のツアーのチケットはほぼ全ての公演がソールドアウト。ラストシングル「FiNAL DANCE/nerve」は過去最高位であるオリコンウィークリー4位を記録。日本のロック・パンクシーンを代表するプロデューサー陣による楽曲提供や、ノイズバンド「非常階段」との合体ユニット活動などで音楽ファンからも高い評価を得て、ヌードなどの過激なパフォーマンスでサブカル方面の話題も独占。芸能人・業界関係者の中にもBiSのファンが急増中だった。

 そんなさなかの解散である。BiS側は“結成当初から解散を目標としていた”というが、このタイミングでの解散はあまりにもったいない気がする。だが意外な事に、コアなファンの間では「とにかくみんな疲れきっているから、いい潮時」という意見が多い。

 少し前、テレビ番組でメンバーの一人が解散理由を問われて「疲れちゃったんですよね」と漏らしたことがあったが、たしかに、メンバーは相当に疲弊しているようだ。ラジオ番組で“まだ解散を覆せるのでは?”とファンから質問を受けたときも「偉い人が決めるけど、見る限り、偉い人もやめたがっている」と回答しており、スタッフ・運営側も消耗気味であることがうかがい知れる。

 疲弊の原因はなんといっても、その活動の過激さだろう。BiSは元々予算がゼロで始まったグループであり、曲を聴いてもらう術が無かった。そこで注目を集めるため、アイドルとは思えない過激な活動を行うようになる。

 BiSのMVにはそんな活動方針が顕著に現れている。曲を聴いてもらえない状況を打破するため、文字通りメンバーがひと肌脱ぎ、全裸で樹海を疾走する「My Ixxx」のMVは、Youtubeでたったの1週間で約30万回再生された。続く「primal.」では、全裸のその先である内視鏡で体内を公開。その後もスクール水着、血だらけ、スキンヘッド、援助交際など、過激なモチーフのMVは少なくない。

 MVに限った話ではない。ももいろクローバーZのリリースイベントに便乗し、コスプレ姿でゲリラライブ、そのままももクロの乗る街宣車へ奇襲を仕掛ける。ウソの路線変更を発表してファンをだます。運営が「メンバーに3時間家政婦をしてもらう権利」を勝手にYahoo!オークションに出品するなど、もはやなんでもありの様相を呈していた。

 そんなBiSの活動はメディアやファンの間で賛否両論を巻き起こしたが、内部でも相当な軋轢を生んだ。BiSのメンバーは現在6名だが、これまでに5名もの脱退者を出している。結成から4年にも満たないグループとしては異常な数字だが、その過激な活動内容が脱退理由となったメンバーも多い。中でもテラシマユフ (現・寺嶋由芙)の脱退は象徴的であった。

 テラシマユフの脱退理由は“活動を続ける上での悩みからの体調不良”だったが、きっかけは「My Ixxx」に続く全裸MV「ASH」をめぐる問題だった。全裸でのMVを経験していない途中加入メンバーは、全裸出演を拒否。MVにはプー・ルイのみが全裸出演し、最近のBiSについて「サークル化している」などの批判を展開し、その結果、メンバー内抗争が勃発する。この抗争は運営の手によって“目に見えて仲が悪そうな”オリジナルメンバーのプー・ルイ、そして途中加入メンバーのテラシマユフの決戦として描かれ、最終的にはその討論の場がトークイベントとして設けられるほどの騒動となった。

 そんな心情がうかがえる書籍が『BiStory〜アイドルを殺したのは誰?』(BiS著/エムオン・エンタテインメント)だ。この本には、プー・ルイがマネージャーに宛てた1000日分の「報告メール」がそのまま収録されているのだが、そこからは、テラシマユフとの溝が深まり、修復不可能となっていく様がはっきりとうかがえる。テラシマユフがプー・ルイのことを「考えるだけで過呼吸」になり、トーク中に倒れるなど活動に支障をきたしていることを報告。プー・ルイは逆に彼女のことを皮肉たっぷりに「ゆふさま」と呼び、「本当に本当に大嫌いです」とまで綴っている。

 しかも、BiSの運営はこの対立を煽り、最終的には新リーダーをファンに投票させ決定するという計画まで進めていた。結局この計画は実施されずマネージャーの謝罪で幕を引いたものの、このようなメンバー間で生じた揉め事・脱退劇までをもエンタテイメントにしようとする運営の姿勢がメンバーの疲弊にさらなる拍車をかけたのは間違いないだろう。

 当然ながら、こうしたことが積み重なって、運営との対立も深まっていた。前述の『BiStory』には、プー・ルイがマネージャーに対して「消えてください メンバーのこと考えなさすぎですよね……死んで下さい」とディスるメールも収録されているし、2月の仙台公演のバックステージでは、全裸になってのダイブを強要した映像監督にメンバーが泣きわめきながらつかみかかる事件も起きた。

 いつしかメンバーは、自分達を都合よく扱おうとする運営や関係者のことを「大人」と呼ぶようになり、ヒラノノゾミは問題の仙台公演で、脱退したメンバーに触れて“大人なんかもう信用できなくなっちゃった”とファンに告白。カミヤサキもインタビューでこの事件をきっかけに「大人のいいなりにはならないと決めた」と宣言した。これまでの仕組まれた内紛などではなく、「大人」とメンバーの間に生まれたほんものの不信感が露呈し、BiSは運営にとってコントロールがほとんどきかない状態になっていったのである。

 しかも、疲弊していたのは、メンバーや運営だけではなかった。解散発表を行ったフリーライブでは、ファンたちが両手を挙げ、万歳を繰り広げるという事態が起きている。普通なら考えられないリアクションだが、実は誰よりもファンたちが疲れきっていたのだ。

 BiSのファンをやっていくのは、金銭面での負担が非常に大きい。イベントは平日・休日問わず毎日のように開催され、握手やチェキのみならず、ハグ会・ケツバット会・罵倒会・チュー会・ローション握手会など、様々な特典会が開催される。

 ライブやイベントも多い。昨月6月を見てみると、各地で行われたツアーも含め全17回ものライブ・イベントが開催されている。各地で開催されるライブのチケット代や交通費、特典会に参加するためのCDやグッズの購入費など、本格的に追っかける場合の出費はかなりのものだ。しかし、ライブやイベントが開催されれば、無理をしても現場に足を運んでしまうのがファン心理。中には平日のイベントにも参加するため、仕事を辞めて通うファンも見うけられた。BiSの解散はファンたちにとって、そんな負担の大きなファン活動からの解放でもあったというわけだ。

 メンバー、運営、そしてファンと、まさにみんなが疲れきった結果の解散──。だが、この決断はこれまでのネガティブな空気を大きく変えることになった。メンバーたちは“どうせ解散するから”を合言葉に大人たちの思惑や支配を拒否し、これまでにない結束を見せはじめた。リリースされたシングル「FiNAL DANCE/nerve」は、メンバー全員が水着でジャケットを飾り、ロックチューンながらも多幸感あふれるアイドルらしい仕上がりとなった。ファンたちも同様で、「これで最後」という気持ちが原点回帰につながり、これまで以上に純粋な応援ができるようになった。BiSは今、達成感とある種の解放感に包まれながら、幸せな終幕を迎えようとしている。

 とはいっても、彼女たちのことだ。まだ油断は出来ない。実際、ラストライブもギリギリまでトラブルの連続だった。『BiSなりの武道館』というタイトルからもわかるように、ラストライブは当初、武道館で行われる予定だったが、直前に武道館側から断られ、現会場の横浜アリーナに変更になった(一説には、武道館の幹部がテレビでBiSの活動内容を知って、断りを入れてきたらしい)。チケットが一万枚以上売れ残り、数日前には都内各所を街宣車でまわり“最後のお願い”をする事態も起きている。

 当日、最後の最後に彼女たちがとんでもないパフォーマンスを仕掛けてくる可能性もある。先週放送された最後のニコニコ生放送では、ほとんどのメンバーが「BiSらしいライブになる」「自分の身は自分で守って」とファンに呼びかけけていた。ラストライブではBiSの歴代メンバーが集まって代表曲「nerve」をパフォーマンスする予定だが、プー・ルイと対立して辞めたテラシマユフがそれに参加するかどうかかも気にかかる(プー・ルイがTwitter上で参加を呼びかけたが、テラシマからは「SNSで話すべきではない。事務所に確認します」と、冷めた返答が返ってきたらしい)。

 いや、それより何より、アイドルとしてのBiSはこのラストライブでほんとうに「死ぬ」ことができるのか? 先に紹介した本のタイトル『アイドルを殺したのは誰?』やアルバムタイトル『IDOL is DEAD』『WHO KiLLED IDOL?』など、死を連想させるフレーズを連発してきたBiSだが、クリエイティブ・ディレクターのNIGOが監督を務めたBiS最後のMV「nerve」の最後には「IDOL IS NOT DEAD」というフレーズが登場する。

 アイドルを殺したのは誰? ……いや、そもそもアイドルは殺されていないかもしれないし、殺された後に生き返るかもしれない。
(ヤノリュウイチ)

最終更新:2016.08.05 06:08

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