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大阪で救急拒否が相次ぐ危機も吉村知事は…滋賀県の看護師派遣を回答前に公表、滋賀知事への要請電話を後回しにしてテレビ出演
吉村洋文(大阪府知事)Twitterより
重症患者数に対する確保病床数の割合が本日22日、121.4%に達し、「医療崩壊ではなく社会崩壊」とも呼ばれている大阪府。本日からは救急搬送が必要な患者を入院先が決まるまで一時的に待機させるという「入院患者待機ステーション」が設置されたが、その数は計8床。しかも、ここで治療がおこなわれるわけではなく酸素投与が受けられるというだけで、あくまで一時しのぎに過ぎない。
無論、第3波を経験していながら、再び府民を命の危険に晒すこのような状況に陥っているのは、すべて吉村洋文知事の責任だ。今回、吉村知事は国と滋賀県に看護師の派遣を要請したが、第3波のときも自衛隊や全国知事会、関西広域連合に泣きつき、看護師派遣を要請。そして、二の轍を踏まないよう反省をもとに体制づくりを進めるべきときに、吉村知事はあろうことか緊急事態宣言の解除前倒しに躍起となり、また同じ事態を引き起こしたのである。
いや、それどころか、看護師派遣の要請をめぐっては、吉村知事が「やってる感」演出のためにスタンドプレーに走っていたことが明らかになった。
そもそも、大阪府が滋賀県に対して看護師派遣の要請をおこなっていることが判明したのは、今月16日(金)のことだった。同日18時すぎからおこなわれた囲み取材で、吉村知事は患者の受け入れや看護師の派遣について「滋賀県と直接話させてもらってます」と言い、「一定、支援をいただけるというふうに思っています。この点、滋賀県のみなさんに感謝申し上げたい」と発言した。
実際、大阪府はこの日の午前中に「事務レベル」で滋賀県に対して看護師派遣を要請していたというが、問題なのは吉村知事の「支援をいただけるというふうに思っています」「滋賀県のみなさんに感謝」という発言だ。
というのも、滋賀県の三日月大造知事のもとに吉村知事から直接「滋賀県も厳しいと思うが、何とか協力してもらえないか」と電話があったのは、16日の20時ごろ。「支援をいただけるというふうに思っています」という発言のあとのことだったのだ。三日月知事はこの電話を受けて、「直接のお願いが入るのは、より切迫した状況があるのだと理解した。滋賀も厳しいが、どういう協力ができるのか、週末も含めて検討した」という(京都新聞20日付)。
つまり、吉村知事は滋賀県側から協力ができるかどうかの回答も受けていないなかで、自ら県知事に電話をかける前に、一方的に「支援をいただけるというふうに思っている」「滋賀県のみなさんに感謝」などと半ば決定事項のように発言していたのだ。
しかも三日月知事によると、吉村知事が三日月知事に直接電話した際、「もっと早く連絡すべきところ、ばたばたしていてこんな時間になって申し訳ない」といった趣旨の発言をしたというが、じつはこの日、吉村知事は16時59分からテレビ大阪の『やさしいニュース』にリモートではなくわざわざスタジオで生出演をしていた。ようするに、吉村知事は協力を直接要請するための電話をかけることよりもテレビ出演を優先させていたのである。
大阪医療崩壊“恐怖の実態” 相次ぐ救急搬送拒否、入院の条件は「人工呼吸器なし」応諾
この期に及んでも、府民の命を守るための重要な仕事を放り出してテレビに出て自己アピールし、自分のパフォーマンスのために確約もとれていないのに「滋賀県のみなさんに感謝」などと口にする……。まったく絶句するほかないだろう。
しかも、こうして吉村知事がパフォーマンスにばかり躍起になっているあいだにも、大阪の状況はどんどん悪化するばかり。実際、現在は重症病床が足りないために重症者が軽症・中等症病床で治療を受けており、軽症・中等床の病床も逼迫。自宅療養者と入院・宿泊療養を待っている人の数が約1万2000人にものぼっているほか、3月以降、自宅で死亡した人が8人おり、そのうち自宅療養中が5人、療養用ホテルに向かう前だったのが2人、1人は療養先を調整中に死亡したという。
いや、背筋が凍るのは、入院治療もホテル療養も受けられず自宅待機を余儀なくされた人が、急変しても救急搬送で病院に運ばれることさえかなわないという実態が次々に明らかになっていることだ。
たとえば、本日22日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で紹介された大阪府在住60代男性・Aさんのケース。A さんは糖尿病の基礎疾患とがんの治療中で、コロナ陽性だと確認されて医師からは「入院が必要」という診断を受けた。だが、保健所からは「入院先が見つからないのでしばらく自宅待機してほしい」と言われ、そのまま3日以上が経過。今週月曜には39℃の高熱が出て、さらにパルスオキシメーターで酸素飽和度を測定すると、その数字は90。90以下になると十分な酸素を臓器に運べないとされており、すぐに救急車を呼んだのだが、ところが「入院できる病院がないため運べない」と言われ、救急隊員は酸素吸入などをして帰ってしまったという。
あきらかに危険な容態であるにもかかわらず、緊急搬送さえしてもらえない──。兵庫県に住むAさんの娘は、父が病院に運んでもらえなかったことを知ると保健所などに連絡、6時間以上経ったあと「府のフォローアップセンターから連絡があり入院できる病院が見つかりました」と報告を受けたが、しかし、そこで突きつけられた「入院の条件」は、「酸素吸入はできるが、人工呼吸器など(重症時の)対応はできない。ご了承いただけますか」というものだったという。
これはつまり、入院先で重症化して人工呼吸器などによる治療が必要になってもそれを受けられないという「命の選択」にほかならない。しかも、この条件をのまなければ、自宅で療養するしかない。結局、Aさんはこの条件を受け入れて入院を選択、そこで中等症の肺炎と診断され、いまはステロイド投与を受けて容体は安定しているというが、Aさんやその家族の不安を思うといたたまれない。
NHKでは救急搬送拒否された男性の妻が「1年前から全然改善されていない」と大阪の状況に怒り
また、21日放送『ニュースウオッチ9』(NHK)で紹介された大阪市内の50代女性のケースでは、自宅療養9日目に急変し、トイレで気を失って倒れているところを夫が発見。慌てて救急車を呼んだが、「保健所が入院先を決めなければ入院できない」「酸素(の値)が下がっても運べない状態」と言われ、搬送されなかった。女性の夫は「死をすごく感じた」「命の選択が運次第かとすごく思って、そこが一番怖かった」と語り、大阪の状況についてこう苦言を呈した。
「1年前の状況だと、準備も何もできていないのでバタバタしていると理解はできるが、第2波、第3波がきているなかで、なかなかそのへんが全然改善されていない、考えられていない」
「『まん延防止』の効果を見るとか、悠長なことをしているような場合じゃないというのは現場は絶対に知っていると思うので、その声をしっかり拾い上げて敏感に反応していただきたい」
第2波や第3波で失敗を重ねてきたのに、どうして4回目でも同じ失敗を繰り返しているのか。いや、イギリス型の変異株が従来型よりも感染力と重症・死亡リスクが高いことはとっくにわかっていたことなのだ。にもかかわらず、東京都よりも多い死亡者を出した第3波を経験していながら、再び府民に「命の選択」を迫るような状況に陥っているのか。憤りを覚えずにはいられないだろう。
専門家の解除基準を無視し、菅政権に忖度してIOCバッハ会長来日前に緊急事態宣言解除を
だが、こうした状況を生み出しながら、吉村知事にはいまだに反省の色は見られない。というのも、明日にも政府が正式決定するとされている緊急事態宣言の「解除基準」について、専門家から厳しい目安を突きつけながらも、それをスルーしているからだ。
20日におこなわれた大阪の新型コロナ対策本部会議では、府の対策本部専門家会議の座長である大阪健康安全基盤研究所の朝野和典理事長が現状の医療提供体制に強い危機感を表明し、緊急事態宣言の解除基準について、こう言及した。
「(使用中の)重症病床を20床まで落として(から解除して)ほしい。前回、第3波のときは50床まで落として、また急激にのぼってきた。2波のときのように20床まで落とすぐらいの気持ちでやっていただきたい」
じつは、朝野座長は吉村知事が緊急事態宣言の解除を前倒し要請すると言い出した際も「これまでの経験から、重症病床は20床(使用率9%)以下までの減少が望ましい」と語っていた(日本経済新聞2月22日付)。しかし、吉村知事はこうした専門家の警鐘も無視し、重症病床使用率が46.2%(2月22日時点)と高い水準にありながら宣言解除を要請し、いまの状況を招いた。吉村知事がこのことを反省しているなら、今度こそこの警告に耳を傾けるはずだ。
しかし、21日の会見で記者からこの重症病床使用率の解除基準について質問がなされると、吉村知事は「現時点で発令もされていないようななかで、こうなったら解除しますというのは、現時点で言うのは適切ではない」と言い、明言を避けたのだ。
もちろん、吉村知事が解除基準について明言しなかったのは、その水準に達するまでどれだけの時間がかかるかが見通せず、「国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が来日する5月17日までに解除」という菅義偉首相の方針にも、経済活動を優先させたい自身の思惑にも足かせとなるからだ。ようするに、いまだに人命よりも、経済や菅首相との関係を優先させようというのである。
「社会崩壊」させても無反省のまま──。大阪でいま起こっていることは、まさしく紛うことなき「人災」だ。
(編集部)
最終更新:2021.04.22 09:26
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