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窮地の安倍首相が櫻井よしこの「言論テレビ」に逃げ込み嘘八百!「定年延長も検察庁法改正も法務省が持ってきた」「黒川と2人で会ったことない」
「言論テレビ」に出演する櫻井よしこと安倍首相
いまだに家賃や学生などへの具体的な支援策を打ち出さず、PCR検査実施件数は一向に伸びず、目玉にした「アベノマスク」では不良品続出で妊婦向けの検品作業に8億円もかけるなど、相変わらず新型コロナ対応がズタボロの安倍首相。こうした後手対応に国民からも厳しい視線が注がれているが、そんな安倍首相が昨晩、目を疑うような行動に出た。
安倍首相は、安倍応援団の櫻井よしこ氏が主宰するインターネットテレビ「言論テレビ」の特別番組『日本は必ず国難を克服する』に出演したのだ。
安倍首相は2015年9月に起こった関東・東北豪雨で洪水・土砂崩れで孤立し救助を待つ人びとがいる最中にも「言論テレビ」に生出演し、安保法制をめぐって出演者の櫻井氏や日本会議の田久保忠衛会長に絶賛・応援されて悦に入ったという前科がある。だが、まさか緊急事態宣言が出されている状態のなかで、またもネトウヨしか視聴しないネット番組に出演するとは……。
追い詰められると“お仲間”に癒やしを求めて逃げ込むのは安倍首相のいつものパターンだとはいえ、極右ネット番組が「新型コロナ対応について国民に広く説明する」場であるはずがない。あまりにも国民をバカにしている。
しかも、安倍首相はこの番組で、いま国民から大きな疑念が持たれている検察庁法改正案についても、壮大な嘘を振りまきはじめた。
驚くべきことに、安倍首相は法務省に責任を押し付け、さらには「黒川さんとは2人きりで会ったこともない」と断言、“メディアによる印象操作”と、何から何までデタラメ尽くしの主張を繰り広げたのだ。
一体、安倍首相はどんな嘘を並べ立てたのか。以下、番組での櫻井氏とのやりとりと、安倍首相の嘘を暴いていこう。
まず、番組の後半に差し掛かったあたりで、櫻井氏は検察庁法改正案について話題を移し、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を決めた1月31日の閣議決定について、櫻井氏と安倍首相はこんなことを言い出すのだ。
櫻井「じつはその、政府高官に私ちょっといろいろ取材をして聞いたらですね、黒川さんの定年延長の問題も、それからあの全部これは検察、つまり法務省の側から持ってきたものを、官邸がただ了承しただけだと聞いたんです。これ、かなり詳しく聞いたんですが、それは本当なんですか?」
安倍「それはまったくそのとおりですね。あの、まさに、この検察庁も含めて法務省が『こういう考え方で行きたい』という人事案を持ってこられてですね、それを我々が承認をするということなんです」
黒川氏の定年延長は法務省が求めたもので、官邸はそれをただ承認しただけ──安倍首相ははっきりと、こう断言したのだ。
これはもちろん明らかな大嘘で、詳しくは後述するが、さらに櫻井氏はこうつづけた。
「もうひとつですね、黒川さんの定年延長問題について、法務省の官房長が官邸に持ってきて頼んだと。それでその、ようはいまの検事総長の稲田(伸夫)さんがお辞めにならないから、黒川さんの定年延長ということをお願いしたということが推測されるんですが、法務省の官房長が官邸に持ってきて頼んだということも、これは本当ですか?」
すると、安倍首相は、こうした質問がくることをあらかじめ知っていたかのように、こう答えるのだ。
「ま、私も詳細については承知をしていないんですが、基本的にですね、検察庁の人事については、検察のトップも含めた総意でですね、こういう人事で行くということを持ってこられて、それはそのままだいたい我々は承認をしているということなんですね」
そして、櫻井氏が「官邸が介入して変えるといったことは」と畳み掛けると、安倍首相は「それはありえないですね。ありえないです」と断言したのである。
安倍首相「検察人事に官邸の介入あり得ない」こそあり得ない!
しかし、「ありえない」というのはこっちの台詞だ。そもそも、安倍首相は、黒川氏の定年延長について「検察のトップを含めた総意」、つまり稲田伸夫検事総長も認めたとして法務省が持ってきたと言うが、検察庁法の規定を無視して国家公務員法を適用させて定年延長させるというのは、特別法の優先原則をひっくり返す暴挙である、そんなことを“法律の専門家”である検察トップが提案するはずがない。
この間、メディアや検察ウォッチャーが報じた検察の内部情報を検証しても、事実はまったく逆で、法務省も検察庁も、昨年11月から12月にかけて「黒川氏は今年2月8日の誕生日前に辞職し、その後任に名古屋高検の林真琴検事長を横滑りさせその後、稲田氏の退職後に林検事長を検事総長に据える」という人事案で固まっていた。
その証拠に、名古屋では林検事長が東京高検に異動することを受けた送別会がすでに開かれ、黒川氏のほうも誕生日の3日前にあたる2月5日に送別会が開催されることが予定されていた。
ところが、安倍官邸は「黒川氏は2月で定年退職、稲田検事総長の後任は林氏」というこの法務省の人事案を突き返し、「稲田検事総長を黒川氏の定年前に勇退させ、黒川氏を検事総長に据える」よう法務省に圧力をかけ始めたのだ。
これは、安倍首相が「熟読」を勧めたこともある御用メディアの読売新聞でさえ報じている。
〈次期検事総長の人選は、昨年末から官邸と法務省との間で水面下で進められた。同省から複数の候補者が提案されたが、安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示したという。〉
〈検事総長の在任期間は2年前後が多く、2018年7月に就任した現在の稲田伸夫検事総長(63)は今夏に「満期」を迎える。黒川氏は2月に定年退官し、7月に63歳となる林真琴・名古屋高検検事長(62)が後任に起用されるとの見方もあったが、政府の措置で黒川氏は検事総長への道が開けた。〉(2月21日付)
また、「文藝春秋」5月号に掲載されたノンフィクション作家・森功氏のレポートによると、昨年内に黒川氏の検事総長就任の人事発表を閣議でおこなうつもりだった安倍官邸は12月になっても辞める意思を示さない稲田氏に焦り、年末から年始にかけて、法務省の辻裕教事務次官に〈官邸側の“圧力”を伝える役割〉を担わせたというが、それでも稲田検事総長の意思は固かった。
その結果、安倍官邸は「定年延長」という脱法・違法の手段をとらざるをえなくなったのだ。
今回の問題の背景には、官邸と法務・検察の間でこうした検事総長人事をめぐる対立があったことはもはや誰の目にも明らかなのに、安倍首相は「黒川氏の定年延長は稲田検事総長も含めた法務・検察の総意だった」などと言うのである。嘘をつくにしても、あまりにも無理があるだろう。
「検察庁法改正案の役職定年延長の特例も、法務省が持ってきた」「検察全体の意思」と強弁
だが、安倍首相はさらにとんでもない大嘘を口にしはじめる。“検察庁法改正案の役職定年延長の特例”も、法務省が持ってきたもの”などと言い出したのだ。
まず、櫻井氏が役職定年延長の特例について言及し、「これも法務省が持ってきたと取材のなかで聞いたんですが、法務省からの要請でそれをそのまま了承したわけですか?」と安倍首相に話を振ると、またも示し合わせたかのように、安倍首相はこう答えたのだ。
「ま、いままでですね、定年において、検察庁においてはですね63歳までと、65歳まで、これ検事総長ですけれども、そこで定年であったわけでございます。今度あの、国家公務員法を改正をして定年を上げましたよね。65から68になっているのかな(どこかに視線を送る)。それで同じようにですね、あの、いわば法務省のほうにおいてもですね、(机の上の資料に目を落としながら)定年を引き上げた。あ、65歳までですね。定年を65歳までの段階的な引き上げ。役職定年、およびその特例の導入をおこなうということなんですが、いわばこれ、一般の公務員のみなさんの定年を上げることについて、それに準じてですね、この法務省においても、検察庁においてもですね、その定年にして、合わせたいという考え方であったわけですから、法務省においてですね。で、当然それでこの法案としてまとめて出させているということなんですね」
そして、櫻井氏が「法務省のほうから上がってきたということは検察全体の意思ということに、私なんかは見るし、みんなそういうふうに思うわけですけども、それを官邸が了承したにすぎないということでよろしいですか? そういう理解でよろしいですか?」と強調すると、安倍首相は「それはそうです」と答えたのである。
おいおい、ふざけるのもいい加減にしろ。「内閣や法相が認めれば特例として役職定年の63歳になった後もその役職にとどまれる」という例外規定は、昨年秋に内閣法制局が検察庁法改正案を審査した段階ではなかったのに、今年になって追加してきたものだ。“国家公務員法改正案に準じて検察庁法も合わせた”というのなら昨年秋の段階でそうしていたはずで、まったく辻褄が合わない。
しかも、法務省は昨年秋の法案検討の際に、役職定年の例外について「63歳以降も続けさせる例外規定は必要はない、それによって公務の運営に著しい支障が生じることはない」という見解を出していた。それなのに例外規定が今年になって盛り込まれたのは、黒川氏の定年延長の閣議決定を後付けで正当化するため以外に考えられない。
安倍首相「黒川氏と2人で会ったことがない」、でも首相動静の記録では……
まったく嘘八百もいいところだが、さらに櫻井氏は、IR汚職で自民党の秋元司衆院議員が逮捕された件を持ち出して「(黒川氏は)必ずしも安倍政権に近いとかですね、安倍政権に優しいということではないにもかかわらず、各メディアのなかで必ずと言っていいくらい『安倍政権に近い』ということを枕詞のように書いている」と発言。小渕優子経産相(当時)の公職選挙法違反疑惑で秘書のみが在宅起訴で終わったことや、贈賄側の実名証言まであった甘利明経済再生相(当時)の口利きワイロ事件で甘利本人はおろか秘書すら立件されなかったこと、森友学園への国有地不正売却や公文書改ざんで政権や財務省への捜査が潰されたこともすっ飛ばして小物議員の逮捕にとどまっている一件だけ持ち出すとは姑息にも程があるが、櫻井氏は「(『安倍政権に近い』というメディアの表現は)正しいと思われますか?」と安倍首相に質問したのだ。
すると、安倍首相はいけしゃあしゃあとこう答えたのだ。
「いままでこの、イメージをつくり上げているんだろうと思います。それはまったく事実ではありませんし、たとえば私自身ですね、えー、この黒川さんと2人でお目にかかったことはありませんし、個人的なお話をしたことはまったくありません。ですから大変私も驚いているわけなんですけどね」
2人きりで会ったこともないのにメディアは「安倍政権に近い」と報じてイメージづくりをしている──。今回もまた安倍首相の十八番である「メディアの印象操作だ!」攻撃が繰り出されたのだ。
だが、この「黒川さんと2人でお目にかかったことはありません」という抗弁については、すぐさまネット上で「嘘だ」との指摘の声が上がった。2018年12月11日の首相動静に、こんな記録が残っていたからだ。
〈3時36分、麻生太郎財務相、財務省の岡本薫明事務次官、太田充主計局長。4時7分、太田氏出る。可部哲生理財局長加わる。15分、全員出る。25分、黒川弘務法務事務次官。〉
これを見るかぎり、4時25分からの黒川氏との面会に同席者はおらず、2人で会っていたとしか思えないのだが……。
しかも、メディアが黒川氏のことを「安倍政権に近い」とか「安倍政権の守護神」と書くのは、安倍首相との直接の関係だけを指しているわけではない。黒川氏のカウンターパートはもっぱら菅義偉官房長官であり、頻繁に会っているところが目撃されている。安倍首相が直接、黒川氏に働きかけるまでもなく、黒川氏との強いパイプが安倍官邸内に築かれ、その結果、あらゆる事件が潰されてきた。そうした事実に基づいて黒川氏は「安倍政権に近い」と呼ばれているのだ。
それを、「2人きりで会った」かどうかという話に矮小化して、挙げ句「メディアがイメージをつくり上げている!」とは……。
田崎史郎も安倍首相とまったく同じ「黒川氏の定年延長は法務省が持ってきた」の主張
このように何から何までデタラメ尽くしの主張を繰り広げた安倍首相だが、問題は、「黒川氏の定年延長は法務省が持ってきた」という嘘っぱちの主張を安倍首相は押し通す気である、ということだ。というのも、安倍応援団がすでに同様の主張を喧伝しはじめているのだ。
じつは、安倍首相と櫻井氏の番組が収録・放送されたのと同じ15日に、安倍首相と同じ主張を「安倍政権の代弁者」である田崎史郎氏が『ひるおび!』(TBS)で繰り広げていた。
『ひるおび!』では、1月31日におこなわれた黒川氏の定年延長の閣議決定が、誰の動機に基づいておこなわれたのか、という話題になったのだが、そこで田崎氏はこんな説明をはじめたのである。
「これ、いろんな誤解の積み重ねでこうなっているんですけれども、そもそも黒川さんをこういう人事にしてほしいというのはね、官邸の人の話ですよ、法務省から持ってきていると言うんですよ。だから、あるいは検察庁法改正案と、国家公務員法改正案のなかに入れて、それでいま国家公務員法改正案として審議されているんですけれども、それも検察庁法改正案と一緒にしてほしいというふうに、あの、法務省は検察当局が言ってきたと言うんですよ」
これにはゲスト出演していた元検事の若狭勝弁護士が「違います、違います違います」「それはあきらかに違います」と声を上げたが、田崎氏は「全然違わないよ」とタメ口で一蹴。しかし若狭弁護士は「法務省の官僚検事がそのようなことをするはずがない。検察官は定年がきたら泣いても辞めざるを得ない、それを延長するとなるとOBも含めて批判の嵐となる」「官邸主導でされたこと、法務省から、というのは明らかに違うということ。まったく嘘八百です」と反論した。
若狭弁護士の言うとおり、実際に昨日には松尾邦弘・元検事総長ら検察OBが法務省に検察庁法改正案に反対する意見書を提出。いかに定年延長がありえない決定であるかを指摘、猛批判をおこなっている。だが、ここで注目したいのは、田崎氏が黒川氏の定年延長を「法務省から持ってきた」という説明を、「官邸の人の話」と口にしていることだ。
前述したように、安倍首相が出演したネット番組でも、櫻井氏は「法務省の側から持ってきた」と「政府高官」から聞いた、と述べていたが、これ、ようするに安倍官邸が筋書きを考え、安倍応援団にレクチャーしているということだろう。
産経新聞が〈法務省の見解〉を報じるも、法務省は「見解を出していない」
実際、こうしたキナ臭い動きは、数日前から起こっていた。御用メディアである産経新聞が、13日のネット版および14日の朝刊で、〈法務省は13日、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案をめぐり、ツイッター上などで広がっている批判に対する見解をまとめた〉と報道。「一般の国家公務員の定年引き上げに関する法改正に合わせて改正するものであり、黒川氏の勤務延長とは関係がない」などという〈法務省の見解〉を伝えていた。
だが、じつは法務省は「見解」など出していなかったらしい。というのも、15日に共産党の山添拓議員が、こうツイートしたからだ。
〈昨日の朝刊にも掲載されたこの記事。
いかなる見解か全文を読みたいと昨日法務省に問合せ、待ち続け、今朝になり「法務省の見解をまとめたものはない」と電話で回答。
審議の重大局面に、政府が関知しない「見解」が報じられるとは…?〉
産経が報じたような「見解」を法務省はまとめていない、というのである。つまり、産経が法務省に取材して得た情報ではなく、これも櫻井氏や田崎氏と同様、官邸サイドが産経に直接流した情報だったのではないか。
こんな恣意的な情報操作をやっておいて、安倍首相はよく「メディアがイメージをつくり上げている!」などと主張したものだが、ともかく、安倍首相および安倍官邸は、森友公文書改ざん問題で財務省にすべての責任を押し付けたのと同じように、今度は黒川氏の定年延長をすべて法務省のせいにして責任を押し付ける気なのだ。さらに今回、安倍応援団のみならず、安倍首相自らがネトウヨ向けネット番組で主張したことにより、ネトウヨに“この反論で叩きのめせ”と一斉号令をかけた、というわけだ。
新型コロナ対応に全力を尽くすべき局面でも、自己保身のためにしか動かず、率先して嘘をつきはじめた安倍首相……。こんな人物に検察人事を握らせたら一体どうなるのか。その行く末は、火を見るより明らかだろう。
(編集部)
最終更新:2020.05.16 11:04
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