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安倍政権が即位パレードのコースを変更させたのはこれが目的? 天皇皇后が前を通った自民党本部に巨大垂れ幕!
自民党本部には垂れ幕が!
本日、天皇の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」がおこなわれ、日の丸の小旗が振られる沿道とともにオープンカーに乗った天皇・皇后の姿をテレビが大々的に生中継。お祝いムード一色に染め上げられた。
だが、このパレードが3分の1を過ぎたあたり、落ち着いた公共建築物がつづくコース沿いに、屋上から〈天皇陛下のご即位をお祝い申し上げます〉という垂れ幕をデカデカと吊り下げていた建物があった。
ほかでもない、自民党本部だ。今回、あらたにパレードのコースが変更され自民党本部前を通過したのだが、天皇・皇后が通り過ぎる目の前に、安倍自民党はこの巨大なメッセージを掲げたのだ。ちなみに、沿道の観覧ブースでは横断幕の持ち込みが禁止され、沿道住民にはベランダに植木鉢や洗濯物を置かないように呼びかけられていたのだが……。
そもそも、今回の自民党本部前を通るルートは、安倍首相が変更させたものだ。
平成の代替わりの際は、皇居前広場から国会議事堂前を通り、赤坂見附、青山一丁目を通過して赤坂御所に着くという約4.7キロのコースだった。しかし、安倍首相は今年5月、国会正門前を右折し、前回は三宅坂交差点に出て青山通りに出ていたところを、今回は憲政記念館前の交差点を左折し国会図書館前を通って青山通りの平河町交差点に抜ける新ルートに決定。つまり、新ルートに変更したことで、自民党本部前をがっつり通るコースになったのだ。
ルート変更の理由については「首都高速道路の高架沿いを通る距離を短くした」だの「より開放的な空間をパレードできる」だのと説明しているが、カットされる高架下の距離はわずか約500メートル。しかも、パレードの距離は前回より100メートルほど短くなっている。なのにわざわざこのルートを選択したのである。
じつは、このパレードのルート変更は官邸の意向が強く反映されている。たしかに「高架沿いを避けた」新しい即位パレードのルートは昨年の秋の段階で提案されていた。だが、それは桜田通りを南下して虎ノ門の交差点を右折した後、外堀通りを進む、自民党本部前を通る今回のルートからは大きく離れたものだった。そして、この案は警備上の問題などで反対され、年明け、平成の代替わりと同じコースを踏襲することに内定。マスコミもそのことを報じていた。
ところが、そのあと、官邸が自民党本部の前を通るルートに変更するよう強い働きかけをはじめたのだという。宮内庁や政府内には「政治利用と批判を受ける」という反対意見があったが、最終的にこのルートがごり押しされたという。
普通なら、天皇および皇室が特定の政治色を帯びることのないように、いかなる政党や政治団体の関連施設の前も避ける配慮をするものだが、安倍政権は逆にそれを強行したのである。
その結果、〈天皇陛下のご即位をお祝い申し上げます〉という垂れ幕を掲げた自民党本部前で多くの人が沿道で日の丸の小旗を振り、そこを天皇・皇后が通ることになった。
しかも、即位パレードでは、天皇・皇后のオープンカーに加え、安倍首相、菅官房長官、官房副長官らを乗せた車も車列に加わったが、前回は官房副長官が2人で1台だったのを、今回は3人で3台に変更。そのため、官邸関係者の車列がのび、存在感がより強くなるかたちとなったのだ。
即位を祝う国民祭典には日本会議、櫻井よしこ、百田尚樹、高須克弥ら極右人脈が大集合
新天皇の即位をどこまでも安倍政権のPRに利用しようとする、底知らずの貪欲さ……。しかし、この露骨な天皇の政治利用はパレードだけではない。安倍首相やその取り巻きの極右勢力は今回の一連の即位関連イベントを、完全に戦前回帰、国民に対するナショナリズム・全体主義の強化に利用している。
その典型が、昨日、皇居前広場でおこなわれた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」だ。
メディアでは、嵐が奉祝曲を熱唱したことや、芦田愛菜が祝辞を述べたことなどが大きく報道されているが、国民はこのイベントの主体がどういう団体なのか本当にわかっているのだろうか。
「国民祭典」の主催は「天皇陛下御即位奉祝委員会」となっているが、この奉祝委員会の設立を主導し奉祝事業を実施している組織は経団連と日本商工会議所、そして日本会議なのだ。現に、奉祝委員会の設立発起人には櫻井よしこが「言論界・女性」の代表として名を連ね、百田尚樹や高須克弥、門田隆将といったネトウヨ文化人もこぞって出席。安倍応援団による「極右」集会という様相を呈していた。
このイベントが極右集会であることは、式典の最後でもなった。天皇の「おことば」のあと、「天皇陛下御即位奉祝国会議員連盟」会長の伊吹文明・元衆院議長が万歳三唱をおこなったのだが、司会が「ありがとうございました」と締めても、伊吹氏とは違う人物が「天皇陛下、万歳」と発声。そのあとも天皇・皇后がその場を離れるあいだ、「天皇陛下、万歳」「皇后陛下、万歳」「天皇皇后両陛下、万歳」などと万歳三唱が延々と繰り返されたのだ。
しかも、恐ろしいのは、そうした極右によるナショナリズム・全体主義の強化イベントに、有名芸能人たちが全面協力し、国民にその戦前的な価値観を刷り込む役割を果たしていることだ。
「国民祭典」では、司会を俳優の谷原章介とフリーアナウンサーの有働由美子が務め、各界代表の祝辞には前述したように、「次世代を担う女優」として芦田愛菜が立ち、「新元号『令和』は万葉集からの出典だったということを知り、昔の日本の書物から新しい時代の元号がつくられるということは、なんて素敵なことなんだろうと深く感動しております。古くからわが国に伝わる文化を大切にしつつ、新しい日本へと躍進していく、そんな時代になっていくことを切に願っております」とスピーチ。ネット上では「15歳とは思えない」「さすが芦田プロ」などと称賛の声があふれた。
嵐が「君が笑えば世界は輝く」と歌った奉祝曲はJ-POP風「君が代」もどきの代物
さらに、あざとさを感じたのは嵐が歌った奉祝曲「Ray of Water」の第3楽章「Journey to Harmony」だろう。脚本家の岡田惠和氏が作詞を担当したものだが、その歌詞は、このようなものだった。
〈君が 笑えば 世界は 輝く
誰かの 幸せが 今を 照らす
僕らの よろこびよ 君に 届け〉
〈はじめはどこかの 岩かげにしたたり 落ちたひとしずくの 水が平野流れ
やがて研ぎ澄まされ 君をうるおし 鳥たちをはぐくみ 花たちとたわむれ
あの大河だって はじめはひとしずく 僕らの幸せも 大河にすればいい〉
〈大丈夫 水は 流れている 大丈夫 海は 光っている
大丈夫 君と 笑ってゆく 大丈夫 君と 歩いてゆこう〉
なんとなくJ-POP風の歌詞にしているが、これ、完全に「君が代」ではないか。「君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」が「君が 笑えば 世界は 輝く」「大丈夫 君と歩いていこう」とゆるくしただけで、君主の永続性を歌っていることには変わりはない。
しかし、こうした有名芸能人の動員とソフト化されたショーアップによって、天皇制の本質や極右勢力の本当の狙いは隠され、「日本の伝統」だの「世界に唯一無二の皇室」だのといったフィクションがどんどん国民に浸透しているのは事実だ。
実際、「国民祭典」を見に訪れたという女子高生はスポーツニッポンの取材に、「人生で初めての経験なので、どうしても来たかった。万歳三唱の時、“日本人で良かった”と感じた」と答えていた。
また、ここまでダイレクトな反応ではなくとも、天皇即位にかんするイベントをテレビがこぞって「お祝い」する効果は絶大で、多くの人が無批判に「おめでたいこと」と口を揃えている。
一方、国民主権や政教分離の問題、イベントに極右が跋扈している事実、新元号選定からつづく安倍首相による政治利用など、この即位に合わせて論じるべき問題はいくつもあるのに、もはや、どこのメディアも、ジャーナリスト・評論家もそんなことを触れようともしない。
この状況を見ていると、安倍首相と日本会議が目論んでいる戦前回帰と全体主義国家化への道はほとんど達成寸前のところまで来ているのではないか。そんな恐怖さえ覚えてしまうのである。
(編集部)
最終更新:2019.11.11 11:17
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