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党首討論総括…地上波より「ニコ生」の安倍びいきが露骨! 司会の夏野剛・ドワンゴ社長が野党の批判封じ込め
ニコニコ生放送より
昨日、公示日を迎えて選挙遊説がスタートした参院選。それに合わせ、ネット、日本記者クラブ、民放テレビ局で党首討論がおこなわれたが、そこで安倍首相が醜態を晒しつづけた。
たとえば、4日に放送された『news zero』(日本テレビ)の党首討論は年金問題にテーマを絞っておこなわれたが、6月初旬に公表される見通しだった「財政検証」について、有働由美子キャスターから「せっかくだったら(参院選前に)出していただいたほうがよかった」と話を振られると、「(検証結果が)悪くなることが決まっているわけではない」と豪語。またも都合のいい数字を一方的に並べ立てた。
なかでも酷かったのが、自民党が参院選の演説用資料として所属国会議員に配布している“野党&メディア攻撃まとめ”トンデモ冊子問題が取り上げられた『news23』(TBS)で、「見ていない」「知らない」と言い放った挙げ句、話を野党批判にすり替えて必死に攻撃するという幼稚極まりない態度を露わに(詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2019/07/post-4816.html)。
日本記者クラブの党首討論会では、質問に挙手で回答するコーナーで、選択的夫婦別姓や性的マイノリティの権利保障を認めるかどうかの回答を求められ、安倍首相は手を挙げず。安倍自民党には女性や性的マイノリティの基本的人権を守る気がないということが見事に視覚化されたが、挙手での回答という最初から提示されていた質問方法に「印象操作だ」「意図を感じる」などと難癖をつける始末。
……とまあ、このように、一貫して自分の主張をがなり立てるだけで、国民の不安や疑問、野党から出される対案にまったく向き合わない安倍首相の姿勢を浮き彫りにした党首討論だったのだが、一方、もうひとつの問題はメディア側の姿勢だろう。
前述した『news23』は、どこも直接、安倍自民党にその姿勢をただしてこなかったトンデモ冊子問題を取り上げたことはもちろん、小川彩佳キャスターが発言の時間制限を守らない安倍首相に「ルールは守ってください」とビシッと発言するなど、忖度しない毅然さが見て取れた。他方、小川キャスターの古巣・『報道ステーション』(テレビ朝日)は、富川悠太・徳永有美キャスターの及び腰が気になったものの、コメンテーターの後藤謙次氏は外交問題で安倍首相に鋭く肉薄。御用メディア・日テレの『news zero』も、有働キャスターをはじめ安倍首相の顔色を伺うような場面もあったが、年金問題にテーマを絞り、「財政検証」隠しに切り込んだことは評価できるだろう。
さらに、日本記者クラブの党首討論会では、やはり御用ジャーナリストのひとりである読売新聞の橋本五郎氏までもが「野党からの予算委員会の要求を断るとか、2000万円報告書を受け取らないなんて、子どものやることじゃないですか」と安倍首相を直接追及する場面もあった。
政権を担う与党の総裁であり総理大臣なのだから、選挙を前に政策やその政治姿勢を厳しく問われるのは、ごくごく当たり前のこと。むしろ、メディアによる忖度が当たり前になりすぎてちょっとツッコんだだけですごいことのように感じる現状がおかしいのであって、これらの党首討論におけるメディアの姿勢は食い足りないくらいだ。
だが、こうして参院選を前におこなわれた党首討論を総合的に振り返ると、もっとも醜かったのは、6月30日にドワンゴとヤフーが主催した「ネット党首討論」だろう。
そして、何が酷かったかといえば、司会を務めたドワンゴ社長で慶應義塾大学大学院特別招聘教授である夏野剛氏による、気持ち悪いまでの“安倍首相びいき”だ。
野党党首の主張を無視し「経済は足元好調」と安倍首相のデタラメ発言を擁護した夏野剛
たとえば、この「ネット党首討論」ではまず最初に経済問題がテーマとして設定されたのだが、安倍首相は「内需は堅調」と強調し、「高校・大学を卒業したみなさんの就職率は過去最高」だの「有効求人倍率が史上初めて1倍を超えた」だの「現役世代の収入は実質でも名目でもプラス」だのと主張した。
まったく何回同じことを繰り返すのだろう。本サイトでもさんざん書いてきたが、これらのデータ・数字にはカラクリがある。新卒者の就職率上昇も有効求人倍率1倍超えも、団塊世代の一斉退職や少子化といった要因があるし、安倍首相が「実質でも名目でもプラス」と言い張る「総雇用者所得」は、1人当たりの賃金に雇用者数をかけたもの=全労働者に支払われた賃金の総額で、これが伸びているのは高齢者や非正規の女性労働者、学生の就業者が増えたため。つまり、年金では生活できない高齢者や、家計が苦しく働きに出る女性、生活苦の学生たちのアルバイトなど低賃金で働く人が増えているにすぎず、事実、生活実感に近い実質賃金は4カ月連続で前年同月を下回っている。
このように、安倍首相の主張はデタラメもいいところなのだが、一方、野党は内閣府の景気動向指数が2カ月連続で「悪化」となるなど国内経済は悪い状態で消費増税などもってのほかだと反論。しかし、議論をこうした経済から次のテーマに移す際、司会の夏野氏はこんなことを言い出したのだ。
「申し訳ないんですけども、時間がなくなってきましたので、この経済の問題はですね、じつは日本、足元は好調であるものの、長期的にみるとまだまだ不安がたくさんあるということを、きょうの討論でもみなさんにご指摘いただいていると思います。ぜひ視聴者のみなさんも関心をもって経済のことを考えていただけたらと思います」
つまり、「堅調」「悪化」と主張が分かれていたのに、安倍首相はじめ与党の主張だけを掬い取って「日本経済の足元は好調」などと司会がまとめてしまったのだ。
改憲問題で枝野代表の訂正指摘を「ヤジ」よばわりした夏野剛
これだけではない。憲法改正の議論の際には、安倍首相は憲法審査会を持ち出して「立憲民主党や共産党といった一部の野党は議論にすら応じていないというのが事実」と主張し、“議論しない野党”を強調したが、これに立憲民主党の枝野幸男代表は、憲法審査会による憲法改正の賛否を問う国民投票におけるCM規制問題の審議を求めているものの参考人に1回意見を聞いただけで、さらに参考人を呼んで議論しようという提案を拒否しているのは自民党のほうだ、と反論した。
たしかに、野党側はCM規制問題について、5月9日におこなわれた憲法審査会の前から国民投票法の法案作成にかかわった船田元議員らの参考人招致を求めているが、それはいまだに実現にいたっていない状態にある。だが、安倍首相は「私が聞いているのはまったく違いますね。わたしたちはむしろしっかりとCM規制についても議論したいと考えています」と強弁したのだ。
さすがに、この安倍首相の発言に、枝野代表は「ええっ。それは嘘の報告を受けていますよ」と声を上げたのだが、安倍首相は「すみません、私が喋っているときには、これはルールで、えー、言わないでもらいたい」と述べ、すかさず夏野氏も枝野代表の発言を制止。たしかに発言権は安倍首相にあり、制止するのはルール上、間違いではないのだが、問題はその言い方だ。
「枝野さんちょっとお願いします。国会と違ってヤジは」
“それは事実ではない”と異議申し立ての発言を、「ヤジ」と呼ぶ──。この夏野氏のアシストに安倍首相も「国会と違いますから、しっかりとルールを守って進めていきたいと思います」などと嬉々として乗っかったのだった。
いや、さらに驚いたのは、このあとのことだ。安倍首相が現在、熱を入れている野党共闘で統一候補を立てていることへの攻撃をこの日も繰り出したのだが、対する共産党の志位和夫委員長は「わたしたちは安保法制を廃止する。これで一致している」と述べ、こうつづけた。
「私は安倍政権ほど憲法というものをないがしろにしてきた政権はないと思いますよ。安保法制、共謀罪、秘密法。どれもこれもが違憲立法で、数の暴力でやってきた。ですから、安倍さんのもとで、憲法を論ずる資格は安倍さんにはないと。私たちはその一点で反対しています」
「安倍の憲法ないがしろ」指摘した志位を「個人攻撃やめろ」と封じた夏野剛
もっともな反論だが、この志位委員長の発言に対し、夏野氏はこう言い放った。
「なるべく個人攻撃はおやめいただきたい」
ご覧のとおり、別に志位委員長は「安倍首相はバカ」とか「アホの安倍首相」とか言ったわけではない。「違憲立法を数の暴力で通してきた安倍首相に憲法を論ずる資格はない」と、総理大臣たる安倍首相のこれまでのおこないに対して、ごく常識的な見解を述べただけだ。それを夏野氏は「個人攻撃はやめろ」と言うのである。
まるで安倍首相が乗り移ってたかのような、夏野氏の発言の数々……。この「個人攻撃」発言といい、「ヤジ」発言といい、これは司会であるはずの夏野氏による独断と偏見に満ち満ちた「レッテル貼り」「印象操作」ではないか。
しかし、こういう事態になることは、最初からわかっていたことだ。
そもそも夏野氏は竹中平蔵と同様のバリバリの新自由主義者であり、ことあるごとに安倍政権を応援してきた。実際、加計問題について、ニコニコ生放送の番組で「これはね、僕はねつ造の問題だと思います」「フェイクニュースですよ。朝日新聞のフェイクです」と陰謀論を振りまいたこともあるほどだ。
また、最近も「年金2000万円報告書」問題について、参院決算委員会で安倍首相を追及した蓮舫議員の記事をリツイートし、〈野党の立場で喜んで攻撃するのはいいが、代替案なければ難癖付けているだけにしか見えない〉と苦言。過去には安倍応援団デマサイトであるアノニマスポストによる野党攻撃の記事のURLを貼り付けた投稿をリツイートしたこともある。
しかも、じつは今回の「ネット党首討論」の直前には、夏野氏は自民党関係者と酒席をともにしていた。
箕輪厚介がアップした〈権力者飲み〉写真に夏野社長と自民党の元ネトサポトップ
というのも、幻冬舎の編集者で、夏野氏と一緒に『AbemaPrime』(AbemaTV)の月曜コメンテーターを務めている箕輪厚介氏が、「ネット党首討論」の約2週間前の6月14日、Twitterに〈権力者飲み!!権力こそ自由!〉と、反吐が出るような投稿をおこなったのだが、このとき箕輪氏は一枚の写真をアップ。その写真には、箕輪氏や藤田晋・AbemaTV社長、夏野氏らと並んで、自民党の平将明・元内閣府副大臣がにこやかに写っていたのだ。
平議員といえば、J-NSC(通称ネトサポ)を率いる自民党ネットメディア局長を務めていた際には、自民党のネット番組でネトウヨさながらに野党への罵倒を繰り出し、2017年におこなわれた衆院予算委員会のライブ配信では「(野党の質問に答えることは)与党の野党に対するおもてなしなんですよ。オ・モ・テ・ナ・シ!」「料金タダ!スマイル0円!なんてやってると、受け取るほうは当たり前で権利だと思い始める。権利じゃないんです。配慮なんです」などと暴論を主張したこともあるような人物だ。
ちなみに、今回と同じように2013年にニコニコ生放送でおこなわれた党首討論では、当時のネットメディア局長である平井卓也・現IT担当相が、福島瑞穂議員の発言中に「黙れ、ばばあ!」、安倍首相の発言に「あべぴょん、がんばれ」などと書き込んでいたことが発覚する“事件”も起こっている。自民党にとってニコニコでの党首討論は、安倍首相の賛美と野党ディスを展開できる、絶好の場にされているということだ。
にもかかわらず、「ネット党首討論」を目前に控えたなかで、党首討論を主催するドワンゴの社長であり司会の夏野氏は、ネトウヨ集団であるネトサポのトップとしてネット対策をこのあいだまで取り仕切ってきた自民党の議員と、仲良く「権力者飲み」していたのである。
ようするに、党首討論の直前に特定政党の要人と会食する司会者に「公平さ」などあるわけがなく、夏野氏が安倍首相をアシストして野党を貶める発言を連発したのも、当たり前の話だと言えるだろう。
だが、問題なのは、そんな偏った主催のもとで党首討論がおこなわれていることのほうだ。
もともと、安倍首相にとってニコニコ動画は、自分の支持者が多く集う“ホーム”だと考えているふしがある。実際、「ニコニコ超会議」にも積極的に参加し、その上、「令和」発表後に開いた総理大臣会見でも、質疑応答ではトップバッターでニコニコ動画の記者が指名され、ニコニコの記者は“元号選定で「令和」時代を担う若い世代などのことをどう考えたか”と質問。すると、その回答で安倍首相はこんな発言をおこなっていた。
「ニコニコ動画も既存メディアの発想にとらわれることなく、若者たちならではの柔軟さで多様な番組を生み出して、リアルタイムで個人がコメントを発信できる、新しいメディアの姿をかたちづくられたと、こう思っています」
ドワンゴの不振が伝えられているように、どちらかといえば“オワコン”化が著しいニコニコをわざわざ取り上げて持ちあげる……。さらに、安倍応援団の夏野氏が代表取締役社長となったことで、ニコニコ自体が完全な“安倍応援団メディア”になってしまうのではないか。今回の党首討論での司会ぶりを見て、その危惧の念はさらに高まったと言えるだろう。
(編集部)
最終更新:2019.07.06 12:13
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