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加計学園獣医学部の「四国枠」合格者がたった1名! 安倍首相は「四国の獣医師不足解消のため」と言い張っていたのに
岡山理科大学獣医学部獣医学科HPより
安倍首相の右腕たる首相秘書官が官僚に圧力をかけ、不正を押し進める──。国会で追及がつづく統計不正問題だが、安倍首相が秘書官に“一本釣り”した中江元哉首相秘書官(当時。現在は財務省関税局長)の関与があきらかになり、加計学園問題のことを思い出している人も多いだろう。
“腹心の友”が計画に「いいね」と安倍首相が太鼓判を押し、柳瀬唯夫氏や和泉洋人氏といった首相秘書官や首相補佐官らの暗躍により国家戦略特区で52年ぶりとなる獣医学部新設が決定──。しかし、加計問題は、「総理のご意向」「首相案件」と書かれた決定的な証拠が出てきたのに、安倍首相が不正を認めず、マスコミは途中で疑惑追及を放棄。いまでは国民にもすっかり忘れ去られた話題となってしまった。
だが、国民が忘れている間に、その加計学園がなんともデタラメなことになっているらしい。「深刻な四国の獣医師不足を解消するため」という大義名分で新設されたはずの岡山理科大学獣医学部で、四国で獣医師になることを希望する「四国枠」合格者がたった1名しかいなかったことがわかったのだ。
「四国枠」とは、岡山理科大学獣医学部獣医学科に設けられている「四国枠入試特待生制度」のことで、〈卒業後、四国四県で「獣医師」として働くことを希望する学業成績優秀な方を対象〉にしたもの(岡山理科大学「四国枠入試特待生ガイド」より)。〈1年次から卒業年次までの最大6年間、年間100万円の授業料の支払いを猶予する形で、修学を支援する〉制度だ。募集人数は「特別推薦入試/四国入学枠選抜」で「16名以内」、「センター試験利用入試CI【四国入学枠】」で「4名以内」、合計20名以内となっている。
しかし、岡山理科大学のHPをみると、第二期生募集の2019年度の入試において、この「四国枠入試特待生」として合格したのは、「センター試験利用入試」枠では「該当なし」。「特別推薦入試」のほうも、たったの1名だけだったのだ。
にわかには信じ難いので、HPを何度もチェックしてみたが、やはりこの1名以外に、「四国枠入試特待生」合格の記録は掲載されていなかった。
ここでよく思い出してほしい。安倍首相は国家戦略特区によって規制緩和することの正当性として、深刻な四国の獣医師不足を解消するためだとし、こう説明していた。
「(獣医学部が)四国にないのは事実であります。鳥インフルエンザあるいは口蹄疫等の問題が発生したときに、これは当然、獣医師不足であるのは明らかであります。そうした拠点をしっかりとつくっていく。(中略)そういうことにおいて特区諮問会議で決定をされたと」
「産業獣医が不足している、あるいは獣医公務員が不足している、獣医師が地域に偏在をしているというなかにおいて、四国に一校もないというのはどう考えてもおかしいわけであります」(6月5日衆院決算行政監視委員会での答弁)
しかも、安倍首相が“最重要証人”としてきた加戸守行・前愛媛県知事も、国会でこう強調していた。
「四国での単独の獣医学部になりますものですから、四国枠という四国出身者の入学枠を設けて、そこで奨学金の減免をおこないながら、公務員獣医師、産業動物獣医師への誘導を図る」(7月10日文教科学委員会、内閣委員会連合審査会)
こんなデタラメな実態にもかかわらず2年目に10億円の補助金が
実際に加計学園が設けている「四国枠」特待生制度の学費支払い免除要件は、加戸前知事の話とは違い、獣医師免許取得に加え「四国四県内で獣医師として勤務すること」「(四国四県内に)着任後、継続して5年間勤務すること」で、産業獣医師や公務員獣医師になることを縛るものではない。四国4県に5年間留まるのであればペット獣医師になることも可能だ。
こんな条件で、安倍首相や加戸前知事が叫んできた「産業獣医師や公務員獣医師の不足を解消」のための策になるとは到底思えないが、しかし、これだけハードルを下げたにもかかわらず、蓋を開けてみればどうだ。この四国で働く獣医師を確保するための「四国枠」特待生制度が、まったく機能していないのである。
じつは、この「四国枠」特待生制度は、開学した昨年度も応募者はたったの6名、合格者はわずか4名で、国会でもたびたび問題視されていた。それが、2年目となる2019年度入試で、まさか初年を下回るたったの1名とは……。
だが、この結果は「とほほ」と言って済ませられる問題ではないだろう。
安倍首相は昨年、岡山理科大獣医学部が「入試倍率は約20倍」と強調し、「獣医学部の新設は、結果を見れば、歪められた行政が正されたと評価されると考える」などと述べ、“加計ありき”で不当に優遇した事実をまったく関係のない入試状況でもって正当化した。しかし、肝心の「四国の獣医師不足を解消」するための「四国枠」特待生制度が機能していないということは、獣医学部新設を認めた「前提条件」そのものを揺るがす事態だ。
そもそも、地方ではとくに確保に悩まされてきた公務員獣医師の問題は、「地方では獣医大学があっても増えるものではない」「まずは待遇の改善をおこなうことが先決だ」と指摘されつづけていた。そうした意見に対してまともに答えず開学を押し切った結果、こうした状況に陥っていることを、安倍首相はなんと説明するのか。
いや、説明責任は加計学園側にもある。だいたい加計学園は、昨年10月におこなった記者会見で「愛媛県文書に書かれた安倍首相との面談は渡邉良人常務のつくり話」だという加計理事長の主張の裏付けとして、上田剛久事務局長は“出張記録などを調べた結果、お会いしたという事実はない”と説明。その際、記者から出張記録などの資料を提出してほしいと要望が寄せられ、上田事務局長は「後ほど対応させていただく」と答えた。しかし、いまだにこうした“証拠”は公開されていない。あまりに無責任というほかないが、今月14日、愛媛県は一般会計補正予算案で、加計学園関連として2年目の補助金である10億円1800万円を今治市に計上している。
統計不正をはじめ、次から次に問題が明るみに出る安倍政権だが、加計問題は森友問題同様、何ひとつ疑惑が晴れていないどころか、膿が漏れつづけているのが現状だ。再度、繰り返したい。「政治の私物化」と「歪められた行政」の問題は、まだ何も終わっていないのである。
(編集部)
最終更新:2019.02.21 10:21
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