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天皇皇后が明治150年式典に欠席した理由! 安倍政権の“明治礼賛キャンペーン”に利用されることを忌避したとの見方
式辞を述べる安倍首相(政府インターネットTVより)
昨日23日、政府が「明治150年」を記念した式典を都内で開いた。「明治150年」とは1868年の10月23日に慶応から明治へと改元されたことを指し、式典は、安倍首相が自ら委員長を務めるなど肝いり。菅義偉官房長官によれば「明治以降のわが国の歩みを振り返り、未来を切り開く契機とするためのもの」(23日会見)といい、国会議員ら約300人が参加した。
ところが、この「明治150年」式典に、明仁天皇と美智子皇后の姿はなかった。朝日新聞によると、宮内庁の西村泰彦次長は「政府からお声がけがなかった」としているというが、額面通りに受け取る人はほとんどいないだろう。
佐藤栄作内閣時の「明治100年」の政府式典には昭和天皇と香淳皇后が出席しているし、そもそも150年前の改元の詔は、王政復古の大号令ののち明治天皇によって出されたものだ。その末裔である今上天皇が、明治改元を祝う式典に参加しないというのは、なにか特別な理由がなければありえないはずだ。
実際、皇居周辺では、水面下での官邸からの要請を天皇側が固辞したとの見方も根強い。
「従来の流れを考えれば、当然、官邸は宮内庁を通じて天皇・皇后両陛下に出席を要請したはず。宮内庁は表沙汰にできませんから誤魔化すしかありませんが、事実上、天皇側が出席に難色を示したと考えるのが妥当でしょう。改憲姿勢や『生前退位』などをめぐり、天皇陛下が安倍政権について快く思っていないことは再三指摘されていましたが、皇室にとって極めて重要な明治改元から150年を祝う式典への出席まで拒否されたとなると、これはもう、おふたりの強い意志が働いたとしか思えない」(皇室担当記者)
では、その「明治150年」式典に、今上天皇と皇后が姿を見せなかったのは、なぜか。それはおそらく、安倍首相が主導して繰り広げている極めて政治的な“明治礼賛キャンペーン”に利用されるのを忌避したからだろう。
実際、菅官房長官は式典後の会見で「明治期の取り組みを全て称賛したり、素晴らしかったという一方的な見方を押しつけたりするものではなかった」と言い張ったが、安倍首相による式辞は、お得意の明治礼賛一色だった。
「近代化への道のりは、大きな危機意識の中で始まりました。当時、技術に先んじる列強が植民地支配を進め、その波がアジアにも押し寄せていました。国力に後れを取っていた我が国は、正に国家存亡の危機に直面していたと言っても過言ではありません」
「明治の人々が、勇気と英断、たゆまぬ努力、奮闘によって、世界に向けて大きく胸を開き、新しい時代の扉を開けたことに想いをはせながら、私たちは、この難局に真正面から立ち向かい、乗り越えていかなければならないと思います」(首相式辞より)
明治新政府の中心となった長州の末裔である安倍首相は、明治維新は国家存亡の危機から救ったと胸を張り、その精神を礼賛し現代社会に注入すると力を込める一方、帝国主義のもとで行った侵略戦争などは完全にネグっている。式典を欠席した共産党は〈戦前の侵略戦争と植民地支配の歴史と戦後の歴史を一緒にして150年を丸ごと肯定する立場に立たない〉(24日しんぶん赤旗)としているが、至極当然だ。
負の歴史をネグり明治の日本=大日本帝国を礼賛する安倍首相
言うまでもなく、明治の日本=大日本帝国は、天皇を神と崇め、国民は天皇のために命を捧げることを強制される絶対君主制国家だった。人権は著しく制限され、貧困者や女性の参政権も認められず、身分制も根幹は解消されないまま。富は財閥と大地主に集中し、庶民は徹底的に搾取された。また、対外的には帝国主義国家として、数々の侵略戦争を引き起こし、多くの国の人間の命と自由を奪った。しかも、この体制はその後、80年にわたって続き、「神国日本」というカルト的な思想によって日本自体も滅亡の危機に追い込んだ。
一方、安倍首相は今年の年頭所感でも「150年前、明治日本の新たな国創りは、植民地支配の波がアジアに押し寄せる、その大きな危機感と共に、スタートしました。国難とも呼ぶべき危機を克服するため、近代化を一気に推し進める」などと語ったように、明治の精神をこれからのモデルにしようと国民に呼びかけている。
侵略戦争や人権侵害などの負の歴史を完全にネグり、ひたすら明治を賞賛する安倍首相の思想が、皇室を国民支配のシステムとする復古的な国家観に根ざしていることは、本サイトでもたびたび指摘してきたとおり。安倍首相は政治力を総動員してこの明治礼賛プロジェクトを推し進めてきた。
たとえば、2015年には安倍首相のゴリ押しで、帝国主義の象徴でもある「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産に推薦、登録させた。ほかにも、安倍首相は側近の極右議員や日本会議と連動して、11月3日の「文化の日」を「明治の日」に変えようという祝日法改正運動を推し進めるなど、明治日本の復活キャンペーンをしきりに展開。官邸ホームページには「明治150年ポータルサイト」なるサイトが開設され、「明治150年」関連施策として実に100を超える事業がラインナップされた。そして、その安倍政権による明治回帰キャンペーンの集大成が、今回の「明治150年」政府式典だったのだ。
一方、今上天皇は戦争を経験し、戦後に即位した初の天皇として、この国の戦後民主主義とともに歩んできた存在だ。第二次安倍政権発足以降は、安倍政権による「戦争のできる国づくり」に警鐘をならすかのように、踏み込んだ護憲発言も行った。その今上天皇が、安倍首相の明治回帰キャンペーンに政治利用されることに強い警戒心を抱き、出席を拒否していたとしてもいささかも不思議ではない。
安倍政権は「天皇陛下在位30年記念式典」でも日の丸を強要
実際、今上天皇には苦い経験がある。2013年4月28日に行われた「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」でのことだ。4月28日は1952年にサンフランシスコ講和条約が発効し、本土がアメリカの占領から独立した日。第二次安倍政権はこの日を「主権回復の日」と位置付け、政府主催で初めて式典を開き、天皇と皇后を出席させた。
式典は極めて復古的な、右翼色の強いものだった。当日、菅義偉官房長官が閉式の辞を述べ、天皇・皇后が退席しようとしたとき、突然、会場の出席者らが両手を挙げて「天皇陛下万歳!」と叫んだのである。安倍首相らも壇上でこれに続き、高らかに「天皇陛下万歳」を三唱。天皇と皇后は、足を止め、会場をちらりと見やり、わずかに会釈してから会場を去ったが、その表情は固まったままだった。
実は、この式典の開催は、自民党が野党時代から公約にかかげるなど、安倍首相の強いこだわりがあった。しかし、天皇・皇后は事前段階から周辺に拒絶感を吐露していたといわれている。実際、2016年12月24日付の毎日新聞朝刊記事によれば、〈陛下は、式典への出席を求める政府側の事前説明に対し、「その当時、沖縄の主権はまだ回復されていません」と指摘されていた〉という。
こうしたことも含めて考えれば、やはり、今回の「明治150年」政府式典を欠席したのは、明治回帰のキャンペーンを張る安倍首相の真の目論見や、その歪さを、天皇が見抜いていたことの証左と言えるのではないか。
しかし、それでも安倍政権は、天皇の存在を自らの復古的な価値観に利用し続けるらしい。実際、来年2月に政府主催で開かれる「天皇陛下在位30年記念式典」について、安倍首相を委員長とする式典委員会の今月19日に行われた初会合では、式典当日に公共機関や学校、会社などで日の丸を掲揚するよう要望する案が示されたという。
だが、皇室を国民支配の道具にしょうというこうした動きに抵抗しているのは、共産党などの少数野党をのぞけば、当の天皇皇后夫妻しかいないというのが現状になっている。
天皇と皇后が退位すれば、安倍政権の動きは、さらにエスカレートしていくだろう。新天皇夫妻はその動きに抗することができるのか。「平成」の終わりとともに、150年前の国家観や人権感覚に逆戻りさせるようなことを許してはならない。
(編集部)
最終更新:2018.10.25 10:59
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