横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」23

安倍政権打倒と原発ゼロのチャンスを潰した希望の党。それを批判できなかった嘉田前滋賀県知事に直撃! その責務を質すと…

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立候補会見での嘉田由紀子前滋賀県知事(撮影・横田一)

 10日、希望の党の共同代表に小池百合子代表直系の結党メンバーが推した玉木雄一郎衆議院議員が選出された。直後の就任挨拶でも、希望惨敗の原因を各候補の運動量不足にあったと今回の総選挙を総括し、「排除」発言や“踏み絵”(政策協定書)で「緑のたぬき」「女ヒトラー」と呼ばれた小池代表を免責する姿勢を露わにしたのだ。これで、「排除されることはない」(前原誠司氏)という虚偽説明から産み落とされた希望の党が今後も“詐欺的第二自民党“の道に進む可能性が高まった。もちろん原発政策にしても同様だ。代表就任直後に小泉純一郎元首相と面談した当日(9月25日)は「原発ゼロ」と言いながら、10月3日に小池代表は再稼働容認を言い始め、結局、2030年まで”12年以上も再稼動容認”の立場を希望の党は取っているからだ。

 しかし、こうした希望の党、小池百合子代表の支離滅裂な二枚舌、そして安倍政権打倒に反する矛盾だらけの非寛容な方針(排除の論理)を変更すべきと直訴する適任者がいたはずだった。それが反原発リベラル派の政治家として知られる嘉田由紀子前滋賀県知事だ。

 第二次安倍政権が誕生した5年前の2012年の総選挙で、嘉田氏は「卒原発(脱原発)」を掲げた「日本未来の党」代表と知事を兼任して闘ったが、民主党や維新やみんなの党など非自民政党が乱立、自民党圧勝となってしまった。しかし今回、小池知事が希望の党代表就任と同時に「原発ゼロ」を旗印にすると宣言、民進党との合流も果たした時、「これで日本未来の党のリベンジが出来る」と興奮気味に話していた。

 原発ゼロを旗印に非自民勢力が結集して、「原発推進の安倍自民党VS再稼動反対の非自民勢力」という構図にすることで、衆院選を”再稼動イエスかノーかを問う”原発選挙を仕掛けることができるというわけだ。

 そして嘉田氏は「原発ゼロ」を表明した希望の党に、民進党を通じて公認を求めた。ところが希望の党は党首経験者は公認しない方針としたため、滋賀一区から無所属での出馬を表明、そして出馬会見で嘉田氏は「比例は希望」と宣言する。さらにその後、小池代表の日替わりの問題発言(再稼動容認や石破氏ら自民党との連携)から「比例は希望への呼びかけ撤回」となったのだ。

 小池代表との実質的な決別と思われたが、しかし嘉田氏は不可解なことに小池代表批判、そして「その決意に感動」と絶賛していた前原氏への非難を口にすることはなかった。再稼動容認発言が出た翌日(10月4日)、筆者は電話で「それでも希望を支援するのですか」と聞いたが、「コメントできない」という答えしか返ってこなかった。そして、滋賀県大津市での立候補会見(10月2日)でも、私の質問に対し煮え切らない回答を繰り返していた。

──前原代表は「安倍政権打倒をするために全員公認、排除されることはない」と言ったのに、(小池代表は)それをひっくり返して(民進前議員は)騙された形になっているのですが、この事態についてはどうお考えでしょうか。

嘉田氏 それは──。

──「前原代表はおかしいではないか」と(批判しないのか)。「リベラル派と棲み分け(候補一本化)をする」という約束と取って(希望がリベラル派を)排除するのなら分かるが、このままだと2012年の二の舞になってしまうのではないか。

嘉田氏 それは前原代表に聞いて下さい。

──そこまで話をしないと、安倍政権打倒につながらないのではないか。

嘉田氏 私がコメントをする権限があるわけではない。

 10月2日の出馬会見で前原代表を絶賛した嘉田氏は、小池代表に対して苦言を呈するのではなく、自らと重ね合わせながら高く評価していた。産経新聞の質問に対して次のように答えていたからだ。

嘉田氏 小池さんへの印象ですが、(環境派知事でグリーンがシンボルカラーの共通点があるのは)たまたまではなくて、私は最初からグリーンなので、「グリーン革命を滋賀から始める」(と訴えてきた)。小池さんはやっぱり女性政治家として、本当に私も「二束のわらじ」と言われて2012年12月は大変でした。知事と「未来の党」代表を(兼任)して。そういう経験をした人間は少ないと思うのですが、小池さん、いま期待をして、女性政治家として成果を出していただきたいと期待をしております。

 正直言って唖然とした。言うべきことを言っていないと思ったからだ。未来の党代表時代を小池代表(都知事)と重ね合わせるのなら、5年前の悪夢再来(野党乱立)になると警告しないのか。納得がいかなかったので、写真撮影後に再び嘉田氏を直撃した。

──リベラル派排除はおかしいじゃないですか。枝野(幸男)さんとか、阿部知子さんとか。

嘉田氏 それは、私に「おかしい」と言って欲しいのですか。言う立場ではありません。

──(非自民乱立で未来の党惨敗の)2012年の再来になってしまうじゃないですか。

嘉田氏 2012年の再来は避けて欲しい。それ以上、私が言う立場ではありません。

──希望は安保法制容認で安倍自民党とその点は変わらなくなってしまうのですが、それでも支援した方がいいのですか。

嘉田氏 私に評論家の意見を聞きたいのですか。

──(嘉田氏が希望を評価・支援する)結果として「小池代表(都知事)と同じ考えの人が増える」ということは、安倍自民党のような”第二(小池)自民党”を増やすことにならないのですか。

嘉田氏 それは民進のそれぞれ(希望に)行った人たちの話でしょう。

──民進の希望公認申請者は安保法制容認と改憲の”踏み絵”を踏まされるわけでしょう。”第二(小池)自民党”を作ることになりませんか。そういう政党と連携するのはどうなのですか。

嘉田氏 私は原発問題をあそこまで言ったのはすごいと思います。

──それなら、なぜ(脱原発に熱心なリベラル派の)阿部知子さん、近藤昭一さんを排除しているのですか。矛盾しているじゃないですか。「原発ゼロ」は看板だけではないですか。

 ここで主催者が間に入って質疑応答は中止、嘉田氏は無言のまま会見会場から立ち去った。結局、総選挙で嘉田氏は落選したが、それは「原発ゼロ」「打倒安倍政権」に傾倒するあまり、当初破竹の勢いと思われた希望の党に追随することを優先、小池代表の「排除」発言を批判することもなく、軽挙妄動で乗ろうとして迷走した面があったことは歪めない。その態度は希望の党に公認を求めた多くの民進党前議員にも通じるものでもある。

 見かけだけの「原発ゼロ」をアピールしながら再稼動を認める”詐欺的公約商法”に加えて、前原代表(当時)と共謀をして“安倍政権倒す倒す詐欺”で野党第一党の人材と公認料を騙し取った小池代表。だからこそ2012年の未来の党惨敗を経験した嘉田氏は、いち早く小池代表を批判、「安倍政権打倒に逆行する『排除』発言を撤回、非自民勢力結集で野党乱立を回避すべき」「自民党と同じ再稼動容認発言を撤回すべきだ」と迫る責務があったはずだ。

 初の国政進出に焦った面もあったのだろう。しかし落選したとはいえ、これまで培った「卒原発」の理念と2012年の未来の党惨敗の経験が嘉田氏にはある。安倍政権打倒の千載一遇のチャンスを逃した“A級戦犯”は小池代表自身といえるが、このことを最も強く実感しているのは「5年前のリベンジができる」と期待した嘉田氏に違いない。今からでも遅くないから、自らの「排除」発言で安倍政権をアシストした小池代表に対して、「なぜ希望の党は“原発ゼロ”を旗印に脱原発に熱心なリベラル派議員を排除せずに非自民勢力を結集、原発推進の安倍政権を打倒する方針を取らなかったのか」「今回の失敗の原因(本質)をきちんと検証、『排除』発言の反省と謝罪と再発防止策作成を含む総括をするべきだ」といった苦言を呈する役割があるのではないか。

 今回のことを教訓に嘉田氏は、希望の党が「緑のたぬき」「女ヒトラー」のような独裁的党首率いる“詐欺的第二自民党”のイメージを払拭し、本当の“原発ゼロ”を目指す国民政党に生まれ変わる“指南役”として、今後も活動を続けることを望みたい。

 2年後には参院選挙がある。同じ“原発ゼロ”を掲げる立憲民主党や共産党などの野党系候補として立候補し、「三回目の未来の党惨敗のリベンジをして欲しい」と期待する有権者は少なくないはずだ。原発ゼロを掲げた党首経験者で環境派女性知事のキャリアを有しているのは、小池代表以外には嘉田氏しかいないのだから。

最終更新:2017.11.13 05:45

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