高須院長が今度はナチス医学を評価! 障害者を抹殺していたのに…マスコミはなぜ高須院長の言動を報道しないのか

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高須克弥Twitterより


 美容整形外科大手・高須クリニックの院長である高須克弥氏のナチス礼賛投稿問題だが、高須院長は23日に〈提訴するよう、指示しました。なう〉とツイート。民進党・有田芳生議員にちらつかせていた訴訟を起こすようだ。

 本サイトが前回記事で指摘したように、自分がおこなった差別言辞への批判を、訴訟をもち出すことで封じ込めようとする行為は暴挙以外の何ものでもない。

 だが、その一方で、やはりあの団体が行動を起こした。ユダヤ系人権団体であるサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が高須院長の発言を問題視し、アメリカの美容外科学会に高須院長を会員から追放するよう要請。さらに、この問題をイスラエル大手紙のエルサレム・ポストが報じ、世界的な市民メディアであるグローバル・ボイスも高須院長の問題ツイートを大々的に取り上げている。

 本サイトは、あらゆるユダヤ批判を封じるようなSWCの抗議手法には批判的だが、今回の高須院長への抗議は当然といえるだろう。それは、メディアに影響力をもった高須院長があからさまに、ナチス礼賛をしていたからというだけではない。高須院長の発言が「医師」としてのあり得ないものだからだ。

 高須院長はこれまで、ブログやTwitterで〈誰が何と言おうが ヒトラーは私心のない 本物の愛国者だ〉〈ドイツのキール大学で僕にナチスの偉大さを教えて下さった黒木名誉教授にお会いした。励まして下さった!嬉しい なう〉などと繰り返しナチス礼賛をおこない、挙げ句、〈南京もアウシュビッツも捏造だと思う〉とホロコーストまで否定してきた。

 しかし、こうした発言が英字に翻訳され拡散がおこなわれると、一転、こんなことを言い出した。

〈僕の学んだドイツ医学の素晴らしさを伝えてます。ナチスのイデオロギーは好きではありません。〉
〈ナチスの庇護を受けた優秀な科学者は尊敬に価する。しかし人種差別のナチズムは僕の八紘一宇のイデオロギーの対極である。〉
〈僕は大日本帝国の友邦であったドイツの科学力を高く評価しています。いいものはいいのです。〉

 「アウシュビッツは捏造」と述べていた人物がいまさらナチスのイデオロギーを否定しても何の説得力もないが、しかし、問題は高須院長がそれでもなお、ナチス下のドイツ医学や科学への評価を明言していることだ。

 現役医師がナチス下のドイツ医学や医師を称賛すること、それがいかに非人道的で、国際的に批判と誹りを受けるものであるかを高須院長はわかっているのか。

ナチスの医学が行った障害者安楽死と人体実験という歴史的犯罪

 ナチスがガス室を使ってユダヤ人を大量虐殺したり非道な人体実験を繰り返したことはよく知られているが、医師たちは障害者や難病患者を「生きるに値しない命」と喧伝し、「安楽死」という名の虐殺をもおこなってきた。医師が大量殺人に加担してきたのである。

「生きるに値しない命」という障害者の命を選別する思想は、精神科医だったアルフレート・E・ホッヘと法学者のカール・ビンディンクが『価値なき生命の抹殺に関する規制の解除』(1920年)で主張したものだが、ナチスはその“障害者は安楽死させろ”という論を実行に移した。

 ヒトラーは1933年に政権を獲得してすぐ、優生学思想に基づき、「断種」や「安楽死」を法制化。同時にナチスは障害者は“金食い虫”であると訴えた。その旗振り役となったのは、医学界だ。

『ナチス もう一つの大罪─「安楽死」とドイツ精神医学』(小俣和一郎/人文書院)によると、1934年に帝国医師会会長のゲルハルト・ヴァーグナーは“年間の国家予算から1億2000万ライヒスマルクが障害者のために支出されている”と強調。医療現場でも〈各地の代表的な精神病院では、政治家や官僚のために特別なセミナーが催され、入院患者は見学者の前で人類退化の実例として供覧に付された〉という。

 そうしたなかで最初に安楽死作戦のターゲットとなったのは、障害児たちだった。1939年には障害児の安楽死を担当する委員会が設置され、そのメンバーは眼科医や小児科医といった医師たち。障害児たちはガス室のほか薬物の過剰投与、さらには施設を爆撃するといった方法で殺害されたという。

 その後、ナチスは占領下のポーランドで精神患者の大量虐殺に着手し、推計約1万3000人を殺害。1940年にはドイツ国内でも精神病院にガス室がつくられ、障害者抹殺がはじまった。医師が殺害する患者を選別し、ときに医師がガス栓を操作したのだ。

 この安楽死作戦は「T4作戦」と呼ばれているが、これによって殺害された障害者の数は、20万人とも30万人とも言われる。T4作戦こそが、のちの強制収容所におけるユダヤ人虐殺につながっていくのである。

 さらに言えば、そもそもナチス下のドイツ医学の業績じたい、こうした非人道的な人体実験などによってもたらされた部分が大きく、その業績だけをナチスのイデオロギーや罪と切り離して評価できるものではない。ましてや医師が「素晴らしい」「尊敬に値する」などと手放し称賛できるようなものでは決してないのである。

国際的に批判を浴びているナチスの医学を高須院長は評価

 世界医師会はナチスの人体実験の反省から、1964年にヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)を採択。そして、2010年になってようやく、ドイツ精神医学精神療法神経学会(DGPPN)は、T4作戦に医師が加担したことを正式に謝罪。2012年5月に開かれたドイツ医師会大会でも、このような声明が発表された。

「私たちは、ナチ時代の医学の犯罪行為に対して医者が重大な共同責任を負うことを認める」
「被害者およびそのご子孫のことを思い起こし、許しを乞う」(「日本の科学者」  本の泉社/2013年5月号より)

 また、2010年当時のDGPPN会長だったアーヘン工科大学のフランク・シュナイダー教授は、2015年に大阪で講演した際、こう語っている。

「強制断種や殺人に精神科医が積極的に関与していたことを知ると、恥と怒りと悲しみでいっぱいになる。謝罪に70年を要したことを悔やむ」

 医師たちが過去のナチス犯罪に加担したことを認めた上で深い反省の念を公表し謝罪をおこなうのは、戦争を繰り返さないという強い決意だけでなく、進歩する医学における倫理的問題にもかかわるからだろう。事実、現在の日本では、長谷川豊氏の炎上騒動などが顕著なように優生思想が憚られることなく語られ、相模原では残忍なヘイトクライムが起こされてしまった。

 だからこそ、医師たちには戦争を振り返り、その事実と向き合う姿勢がつねに求められるのだ。それはドイツの医師だけではなく、731部隊による人体実験に加担したという負の歴史を抱える日本の医師も同様である。

 しかし、どうだろう。高須院長はあろうことかナチスの医学を称賛し、アウシュビッツや日本軍の戦争犯罪も否定する。医師に必要な倫理が、まったくもって欠如していると言わざるを得ない。高須クリニックのHPによると、高須院長は日本医師会の会員であるだけでなく、日本美容外科医師会事務局長、アメリカ美容外科学会会員やアジア美容外科学会の顧問などの資格をもち、昭和大学医学部形成外科学では客員教授も務めている。このようなれっきとした医師がナチス医学を褒め称えている事実は、決して見過ごせる問題ではない。海外がすぐさま反応したのは、当然なのだ。

爆破予告は報じてもその原因のナチ礼賛発言は報じないメディア

 いや、問題は高須院長の言動だけには留まらない。このような国際的問題に発展しているにもかかわらず、日本のメディアがまったくそれを問題視していないことも異常だろう。

 とくに驚いたのが、高須クリニックが爆破予告を受けていたというニュースだ。この爆破予告そのものについては、テレビ局も一部では取り上げたが、その背景にあるとみられる高須院長のナチス礼賛発言については、一切報道しなかったのである。

 SWCが欅坂46の衣装がナチスの制服に極似しているとして抗議声明を発表したときはテレビも報じていた。一方、今回の高須院長は、明確なナチス礼賛・ナチス犯罪の否定であり、深刻度は桁違いだ。にもかかわらず、テレビは国際的に発言が問題化していることにダンマリを貫いているのである。

 しかも、高須院長は24日には『ダウンタウンDX』(読売テレビ)に出演し、例の民進党・大西健介議員を名誉毀損で訴えた裁判について、意気揚々と語っていた。

 テレビが裁判になっている案件、しかも、名誉毀損が成立するとは考えられない裁判を起こした当事者に、ここまで自分の主張を一方的に語らせるというのは普通ありえない。

『ダウンタウンDX』を制作する読売テレビは、『情報ライブ ミヤネ屋』でこの裁判に対して浅野史郎・元宮城県知事が行ったコメントをめぐって、「読売テレビとしても、高須院長、および視聴者の皆さまに誤解を与える放送をしましたことをお詫び申し上げます」と社をあげて全面謝罪をおこなったばかりだ。このとき、高須院長は浅野氏への訴訟をちらつかせると同時に〈とりあえずミヤネ屋の提供降りるか。詫びを急いだほうがいいと思うけど…〉とツイートしており、読売テレビはこれに震え上がったとみられている。

 こうした経緯を考えると、今回のナチス礼賛発言問題をテレビが一切ネグっているのも、高須クリニックが大量のCMを出稿する企業であることが影響を与えているであろうことは想像に難くない。金をもつ人間には放言が許される──それが日本のメディアの現状なのだ。

 しかし、国際社会にその論理は通用しない。SWCはじめユダヤ人団体の高須院長への抗議はこれから本格化するだろうし、日本のメディアも批判を受ける事態になりかねない。

最終更新:2017.08.26 12:35

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