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“上から目線”国際政治学者・三浦瑠麗が歴史をねじまげ戦前賛美発言!「どっちもどっち」論に隠された御用学者体質
8月11日放送の『朝まで生テレビ!』より
最近、あの上から目線トークがうけ、若手論客としてメディアからひっぱりだこになっている国際政治学者の三浦瑠麗。しかし、その発言をきちんと聞き直してみると、実は自信満々に言い切ってるだけで、中身は驚くほど薄く、根拠なんてほとんどないことが多い。なんでみんなこんなのに騙されてんの?と不思議に思っていたら、三浦センセイ、最近、なんともわかりやすいかたちで馬脚を現してしまった。
8月12日の東京新聞「気分はもう戦前? 今の日本の空気」という特集記事でのこと。三浦は、高畑勲監督、石田あゆう・桃山学院大教授とともにインタビューに答えているのだが、その内容があまりにもヒドいと物議をかもしたのだ。
記事では、共謀罪の成立、教育勅語の肯定などの安倍政権の姿勢をあげ、今の日本社会が戦前と似ているのではないか?との疑問を投げかけているのだが、三浦はまず、戦前を全否定するのはまちがいだとしてこう語る。
「まず、「戦前回帰」を心配する方々が思い描く「戦前」のイメージに不安を覚えます。大日本帝国が本当の意味で変調を来し、人権を極端に抑圧した総動員体制だったのは、一九四三(昭和十八)~四五年のせいぜい二年間ほどでした。」
大日本帝国が人権を極端に抑圧したのは、1943〜45年のせいぜい2年間? この人はいったい何を言っているのだろうか。
言論の自由など基本的人権を著しく制限した希代の悪法・治安維持法が制定されたのは1925年のこと。1933年に小林多喜二がこの治安維持法によって逮捕され、特高警察による拷問のすえ虐殺されたのをはじめ、1940年以前にも数々の人権抑圧事件が起きている。また総動員体制だったのもせいぜい二年間ほどというが、1938年には国家総動員法が制定されている。
こんな中学校の教科書にも載っているような歴史的事実を無視し、「経済的に比較的恵まれ、今よりも世界的な広い視野を持った人を生み出せる、ある種の豊かな国家だった」などと、戦前を賛美するのだから、開いた口がふさがらない。
「警察は抑制が効いている」「人権を守る制度がある」の理由で共謀罪擁護
しかも、三浦は戦前と現在は似ていないと主張し、こう言い切った。
「「今は、あの二年間に似ていますか」と聞かれたら、私は「全然似ていない」と答えます。「『共謀罪』法が治安維持法に似ている」というのも誤った分析。」
現在がその「二年間」に似てるなんて、誰が言ってるんだ? 三浦は実は誰ひとり口にしていない極端な言説を自ら持ち出して否定し、さも自分がバランスに長けていて、論争に勝ったかのように見せているだけじゃないか。
共謀罪批判と治安維持法の問題だってそうだ。三浦が言うようなざっくり似ているといった話は誰もしていない。条文が同じように捜査当局の恣意的運用が入り込む危険性があるといっているだけだ。
ところが、三浦はそういった法律論にはまったくふれず、「民主政治は成熟しました」「人権を守る強い制度も定着した。あの時代のような拷問や弾圧が容認されるはずがないでしょう」「警察官もはるかにプロ意識のある集団に育ち、抑制が利いています」などと、印象論で共謀罪の危険性を否定するのである。
しかも、この印象論じたいがまったく事実を無視したひどいシロモノ。「人権を守る強い制度」って取り調べの可視化すら認められていないのに、何を言っているのか。あげくは「警察も抑制が利いている」だ。警視庁高井戸署が少年に自白強要した件や、沖縄高江での機動隊による「土人」発言、あるいは大分県警が野党を支援する団体の建物の敷地に侵入し監視カメラを設置した事件、令状なしのGPS捜査など、この1、2年だけでも警察による人権を無視した乱暴な捜査が次々と発覚していることを、三浦は知らないのか。
自分の印象論を正当化するために、中学生の教科書に載っているレベルの歴史的事実も無視し、新聞を読めばわかる程度の権力の不正実態にも知らんぷり。こんなひとりよがりな論の立て方でよくもまあ、学者を名乗れるものだと感心するが、しかし、話はこれで終わりではない。
言い訳ツイートで「学徒動員までは国民が自発的に戦争を選んでいた」
この東京新聞の戦前賛美インタビューをめぐって、ネット上で厳しい批判の声が上がると、三浦は言い訳ツイートを展開して、さらにトンデモぶりをさらけだしたのだ。
「インタビューに答えました。博論以来のお題ですが、国民対政府という構図で政府に全ての悪をおしつけると民主主義は自省しません。敗戦前の二年こそ学徒動員はじめ全国民が動員されましたが、それまで国民は度々自発的に好戦主義を選んできたのです。」
「戦間期、各国で全体主義の萌芽が見られた。なぜ日本が止まれなかったのかが重要。新聞で一括りにされる戦前・戦中には様々な時期がありました。語られ易いのは総動員で大学生らが出陣した最後の2年。その2年を元に政府と国民の関係があたかもずっとそうだったように措定してしまうのが誤りなのです。」
「いま気づいたのでメモっておくけど、記事を戦間期と今の日本がまるで似てないと言っていると誤読するわけね。そうではなくて①似てる部分は確実にあるが似てない部分もある②そもそも戦前の通俗的イメージが悪すぎる。戦中の最後の二年は例外的事象③ゆえに現代人は志高く頑張るべきだ。なのだが。」
「で、現代日本人がどうかというと、政府が悪をもたらしていると考えがちだが、民主主義なのだから自分たちで国を形作っていかねばならない。そんなとき、左右両派が国内の関心にとどまり孤立主義を選んだり、あるいは社会の進歩を担うべき革新側に、保守に対抗すべき国家観が育たないと困るというお話。」
前言を撤回するどころか、大学生が学徒出陣に駆り出されるまで、日本国民はみんな自発的に戦争に参加していたかのようなことまで語り始めた三浦センセイ。この人、東大を出ているらしいが、エリート意識が高じて、戦前、大学生以外の日本人はみんな何も考えていないバカだったとでも思っているんじゃないのか。
しかも、自分は無知と偏見をさらけだしておきながら、上から目線で「政府だけに悪をおしつけると、民主主義は自省しません」などと、どっちもどっち論”的説教を始めるのだ。
先の東京新聞インタビューでも、唐突に「「戦前回帰?」の議論は元をたどれば改憲論議。現在の憲法改正を巡る議論は、護憲派、改憲派ともに不十分な点が多い」などと語っていたが、この“どっちもどっち論”も三浦の典型的な手口だ。文脈と関係なくあらゆるものをイデオロギー対立に矮小化することで、あたかも自分が公平でそれらを超越している存在であるように見せる。だが、その中身をよくよくチェックしてみると、超越どころか、ただの詐術でしかない。
「どっちもどっち」論を装いながら実は政権批判つぶし!
この「政府と国民はどっちも戦争責任がある」なんて典型だろう。たしかに、先の戦争で国民も戦争に熱狂し支持していたのは事実だが、政府の政策に反対する反戦論をおさえ込み、迫害し、大本営発表でミスリードしていった政府と、国民の責任を同列に並べられるはずがない。
しかも、本当にその過ちを繰り返さないために「国民が自分たちで国を形作っていかねばならない」としたら、それこそ、政府がおかしなことをしていないかを常に批判的に監視し、政府に対して批判の声をあげる必要があるはずだ。先の戦争で国民が政府を妄信し戦争に熱狂したことを反省するなら、その轍を踏まないために、「権力が法律を濫用する危険性がないか」と警鐘を鳴らすのが、知識人の役割だろう。
しかし、三浦は逆で、「現在は戦前とは違う」「共謀罪は治安維持法のように危険じゃない」「民主主義は成熟して、警察は抑制されている」などと言って、批判を封じ込めようとする。
あげく、三浦が政府批判の代わりに提案した結論が、「現代人は志高く頑張るべき」(笑)。お前は中学生か、と思わずつっこみたくなる薄っぺらさではないか。
結局、三浦は神視点で「どっちもどっち」的なロジックを語り、中立的で、知性があるように錯覚させているが、実際は権力や政府の政策を擁護し、政権批判者を批判しているだけなのである。
それは、この東京新聞のインタビューだけではない。共謀罪の強行採決直前のギリギリのタイミング、6月7日朝日新聞のインタビューでもまったく同じ手口を駆使していた。三浦はまず、こう切り出す。
「政府は一般人の自由は侵害しないといい、その説明を真に受けている人が多い。結果として「安全」と「自由」は時に対立するものという本質的議論が深まっていません。」
政府の進め方に異を唱えるポーズから入っているため、てっきり、このあと法案に対する批判、あるいは政府のウソの説明に対する批判が展開されるのかと思いきや、三浦は政権や法案を具体的に批判することは一切せず、反対論のほうを批判し始めるのだ。
「一方で、朝日新聞を含むリベラルメディアの反対論にも違和感がある。「治安維持法の復活」といった批判は歴史的な文脈を無視した極端な言い方です。私が出演するフジテレビの「ワイドナショー」で、松本人志さんが「共謀罪」について「いいんじゃないか」と発言しました。まず、テロが怖いという庶民感覚がある。批判する側が極端な言い方をするほど、ふつうの人は引いてしまい、かえって賛成側に流れていく。」
自民党論文コンテストに応募し総裁賞を受賞していた三浦
改めて指摘するまでもないが、共謀罪の議論が深まらなかったのは「批判する側が極端な言い方」をしたからではない。金田法相をはじめ政権側がまともに説明せず、ウソとごまかしを強弁し続け、そのボロが次々と露呈したからだ。しかも、政権側は委員会採決をすっとばして本会議採決を強行したように議論を拒否するような議会運営をした。ところが、三浦にかかると、それは批判側の問題にスリカエられてしまうのだ。
しかし、考えてみれば、三浦のこうしたスタンスは当然といえば、当然なのだ。
前出の朝日新聞のインタビュー直前、三浦は共謀罪の議論が白熱していた最中の今年5月22日に、安倍首相と会食デビューし話題になった。しかし、三浦の御用ぶりは、最近始まったことではない。
そもそも三浦は、2004年に自民党が主催する第1回国際政治・外交論文コンテストに応募し、「「日本の国際貢献のあり方」を考える」という論文で、自由民主党総裁賞を受賞。2005年には、防衛省・自衛隊の主催する「安全保障に関する懸賞論文」に、「備える平和論」で優秀賞を受賞している。こんな学術的に価値があるとも思えない政党や政権主催の論文コンテストに応募している時点で、三浦が何を志向していたのか、わかろうというものだ。
そして、論壇で頭角を現してからも、三浦は一貫して、安倍政権の政策を後押ししてきた。
安保法制についても、同法案が参院で可決された際、三浦は自分のブログで、「解釈改憲には「一定の筋の悪さ」が付きまとっています」と政権側にひと言申したフリをしつつ、結局、安保論議は法律論に押し込めるべきではない、安倍政権は憲法論議に正面から向き合わなかったのは画期的、などと、最終的には安倍政権の立憲主義破壊を擁護した。
さらに、改憲については、2015年の時点で維新は安倍政権と“グランドバーゲン”し安倍改憲に協力せよ!と呼びかけていたし、今年2月には高村正彦と対談本『国家の矛盾』(新潮新書)を出し、集団的自衛権行使容認で意気投合する露骨さだ。
“どっちもどっち”論とブランディングで御用学者の本質隠し
しかも、この安倍政権擁護は政策面だけではない。8月11日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)では、加計問題について、こんなふうに言い募った。
「私、べつに加計問題はよくないと思っているんだけど、じゃあトヨタだったらどうなるんだと、ここちょっとダブルスタンダードがあるんですよ」
「この政権は、円安誘導政権で、明らかに輸出企業を優遇してるんだけど、だけどもそれが名のある企業が、審議会に入っていたり、アドバイスしたり、要望を出したり、会食することが、できなくなったら、どうなるんだって」
「加計学園という規模の小さな人たちが、個人的なよしみで、なんらかのおいしい思いをさせてもらったらしいというストーリーだから、国民が罰したくなる。これがトヨタだったら、「日本の命運を支えるトヨタのためには」って(誰も問題にしない)」
「みなさん、口利きの現状知らないっておっしゃるんですか。口利きの現状の現場って見たことないんですか? え? 見たことないんだとすると、それは日本政治を知らないってことになるけど(笑)」
「ひとつひとつ地元洗ってみたら、日本全国、事業者やってたら、こんなこと当たり前ですよ。口利きはね」
たしかに、安倍政権の大企業・富裕層優遇の経済政策は批判に値するが、それと加計学園1校のみを特別扱いした特区問題とはまったく次元がちがう。しかも、三浦は「トヨタや大企業優遇についても議論するべき」と言うのでなく、「トヨタもいいんだから、加計も問題ない」という意味でこの話を語っているのだ。明らかに、安倍政権を擁護したいという目的が先にあるとしか思えないだろう。
これは、中学生レベルの歴史的事実すら平気で捩じ曲げ、戦前賛美までした今回の東京新聞のインタビューも、まったく同じだ。ようするに、この国際政治学者の本質は、安倍政権の不正や失政をひたすらマスコミや野党のせいにしてきた田崎史郎、山口敬之ら御用ジャーナリストやネット右翼たちとほとんど大差がないのである。
しかし、三浦がタチが悪いのは、何度も繰り返しているように、どっちもどっち的な神目線のポーズとレトリックで、御用学者であることを隠していることだ。いや、御用学者であることだけでなく、主張の中身が実は空っぽで、学者としての能力が低いことも、マウンティングとセルフブランディングのうまさによって、巧妙に隠している(この問題については、機会があれば、別稿で検証してみたい)。
その結果、リベラルメディアまでが何かバランスを取るときに、この御用学者を起用し、結果的に政権擁護を垂れ流すという構図になってしまっているのだ。
三浦は前述した言い訳ツイートのなかで、「なぜ日本が(戦争への突入に)止まれなかったのか」ともっともらしくつぶやいていたが、その答えは三浦自身が体現しているじゃないか。あなたのような御用学者や御用ジャーナリストが権力におもねり、健全な戦争反対の声をつぶしてしまったから、その暴走を止めることができなかったんだよ。
(本田コッペ)
最終更新:2017.12.07 04:52
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