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「セックスに絶望した日本の男は肛門を開発すべき」二村ヒトシと湯山玲子が語る性差別を乗り越える方法とは?
二村ヒトシ・湯山玲子『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(幻冬舎)
厚生労働省は今月23日、2015年人口動態統計を発表した。それによると、15年の婚姻件数は前年より8653組減少し、63万5096組と、戦後最小になった。逆に、離婚件数は前年より4091組増加し、22万6198組にもおよんでいる。
婚姻率は1970年代前半と比べると約半分の水準まで落ち込み、このまま行けば、2035年には生涯未婚率が男性29%、女性19.2%にまで達すると推計されている。
また、合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に生む子どもの数)は、前年から0.04ポイント回復し1.46となったが、人口を維持するのに必要な2.07には遠くおよばない結果となった。
このような状況になったのには、就労システムの変化、安定しない雇用など経済的事情が大きく影響している他にも、いわゆる「草食化」にあげられる、若い世代のセックスへの忌避など複雑な要因が絡みあっている。
そんな現状に対し、AV監督の二村ヒトシ氏と著述家の湯山玲子氏は、対談本『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(幻冬舎)でこのように語っている。
湯山「世の中全体は「セックスは、無理して自分の人生に取り入れなくてもいいんじゃないか」とあきらめの傾向にあると思う」
(中略)
二村「みんながセックスも含めた「恋愛」に絶望しかけているか、恋愛に伴う「面倒くささ」にお腹がいっぱいになってるんだと思います」
男も女も、日本人が皆、恋愛およびセックスに対し「絶望」や「あきらめ」を抱きはじめた。二村氏と湯山氏は、その原因のひとつとして、これまで日本人の心を縛ってきた「男らしさ」「女らしさ」が影響しているのではないかと推察している。
その最たるものが、日本人がセックスする際に発動させてきた「恥」の概念だ。湯山氏は「恥」についてこう語る。
「「恥」の概念は、日本においては欲情するトリガーのひとつです。「お前、パンツが染みてるぞ」「濡れちゃって恥ずかしい!」で勃起する。(中略)恥の概念があるからこそ、日本人のセックスは表立たないし、そういう、男→女の力学状態が続いている原因にもなっているということ。「女性も性欲があって当たり前なんだ」という革命が女性の中で起こっているけど、それを認めちゃったら、もう性=恥の欲情装置は働かない。ちょっと前までは、そこをおもんぱかって、女性は演技したものだけど、若い世代はそうじゃないでしょうね。男性がセックスレスになるのはよくわかる」
女性は性に対し受動的で、男はそんな女性を無理やり責めることにより興奮のトリガーを引く。「嫌よ嫌よも好きのうち」に代表される、いまとなっては時代遅れも甚だしい概念が、ベッドのなかではまだ強く息づいている。それは、湯山氏も本書のなかで指摘している通り、「「男らしさ」の呪縛は性の局面にこそ最大限に登場」するからだ。
二村氏もその意見には同意。「攻めと受け」「支配と被支配」の構図が固まっていたこれまでの「男らしさ」「女らしさ」の呪縛から抜け出し、より「平等」で、その時々により関係性を変化させる「リバーシブル」なものになれば、セックスへの忌避感も減っていくのではないかと主張する。
「「セックスはリバーシブルなのが自然」になればいいんですが。男はこう、女はこうと決まっているほうが不自然」
「「やりたいときに、やりたい相手に、女の側からも『やりたい』と言える」ようになり、やりたい男は女性の欲望に対したときに萎えない、むしろ興奮するようになっていくほうがいい」
「本当の快楽には男性性も女性性もないんじゃないか、あるいは一組のカップルのそれぞれが濃厚な雄性と雌性の両方を有していてそれが自在に入れ替わるというのが、一番エロいのではないか。セックスに可能性が残ってるとしたら、それだろうと考えています」
しかし、では、どうすればこれまで我々の「性」を縛ってきた呪縛から抜け出せるのか。先ほど引いた湯山氏の発言にもある通り、現在女性はそのような「女らしさ」の呪縛から抜け出しつつあるが、男たちはまだまだである。二村氏はそのために、男は「受け身の快楽」を知るべきだと提言する。
『ゴルゴ13』のデューク東郷のように、射精したらそっぽを向いてタバコを吸うようなセックスではなく、男も、もっとベッドのなかで感情をあらわにすべき。そのために二村氏は、「肛門」を開発すべきだと語る。
「彼のチンチンが役に立たなくなったなら、もしくは彼がそれを「女を支配するため」にしか使わないなら、手や口で愛撫してメロメロにした後に、指を使ってお尻を掘るべきだということです」
「通常の射精なんて、本当に物理的な、あるいは女性への支配欲だけの、実にちっぽけなものなんです。前立腺を自分で意識できるようになってからの射精は、何十倍も、それこそ気絶するほどキモチいいですよ」
「まず男がぶっ壊れないといけないと思うんです。いばってる男性たちは、みんなケツを掘られるべき」
痴女ものや、ペニスバンドを装着した女優が相手を責める「ふたなり」ものなどを監督し、「男が責めで、女が受け」というセックスにおける固定観念を壊し続けてきた二村氏らしい発言ではあるが、この刺激的な発言にはきちんと意味がある。男が「受け」のセックスを知ることで、「リバーシブル」な男女関係を築くことができるようになるということだ。
「よい「受け」の男は、女を興奮させるような反応をする。そういう男子は相手の快楽がわかりますから、リバーシブルで、攻守交替ならぬ攻受交替して、自分をかわいがってくれた女性をかわいがり返すことも上手なはず。それが僕が考える、支配・被支配から抜け出せるセックス、すなわちセックスに残された希望です」
「男もセックスの後に「背中を向けてタバコを吸う」生き物ではなくなり、男女間の深くて暗い河に、平和が訪れる」
「男らしさ」「女らしさ」という呪縛が人生の幅を狭めている問題は、セックスだけに当てはまるものではなく、女性の社会進出の問題や、子育て・介護など、現在噴出している他の問題にも共通していえることである。日本社会を息苦しくさせている「男らしさ」「女らしさ」という固定観念を壊し、より「リバーシブル」な社会をつくることができれば、これらの問題は解決へと大きく歩を進めることができる。そのために「肛門を開発すべき」という提言は、突飛ではあるが、一考に値するものなのではないだろうか。
(田中 教)
最終更新:2016.05.26 08:00
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