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宜野湾市長選で反翁長キャンペーン活発化! 産経新聞が沖縄のネトウヨ新聞・八重山日報と一体化しデマ拡散
「産経新聞社公式HP」より
米軍普天間飛行場の地元・沖縄県宜野湾市市長選が告示になった。自民党・安倍政権の推す現職・佐喜眞淳候補に、翁長雄志知事ら「オール沖縄」が推す志村恵一郎候補が挑むという形だ。
翁長知事と安倍政権は周知のように、普天間基地の辺野古移転をめぐって全面対立。現在は、法廷闘争も展開されており、この市長選挙の結果が基地問題の未来に大きな影響を与えるのは間違いなさそうだ。
ただし、今回の宜野湾市長選挙で、安倍政権・佐喜陣営は非常に狡猾な作戦に出ている。普天間を閉鎖するというだけで辺野古移転についての賛否は一切表明せず、ディズニーリゾート誘致などを公約して市民の歓心を引いているのだ。
「とにかく安倍政権は、14年の名護市長選、県知事選、衆院小選挙区ですべてオール沖縄に負けており、後がない。とにかく勝つために、徹底的に基地問題を隠して、ディズニーリゾートなどで市民の歓心を引く、それで、勝ったら、民意も辺野古移転賛成だと、宣伝するという作戦のようです」(政治部記者)
さらに、この市長選を前に、安倍政権と右派メディアによる、翁長知事、基地反対派への攻撃も激しくなっている。
もともと、翁長知事や基地反対派に対しては、官邸が公安などを使ってデマ情報を拡散。「週刊文春」(文藝春秋)「週刊新潮」(新潮社)「正論」(産経新聞社)「WiLL」(ワック出版)などがこれに丸乗りして攻撃記事を書いてきたが、ここにきて、“安倍政権の機関紙”こと産経新聞がかなり露骨な動きを見せている。
12月4日付での紙面でも社説にあたる「主張」でネトウヨばりの翁長知事批判を展開していたし、最近、『翁長知事と沖縄メディア 「反日・親中」タッグの暴走』(仲新城誠)なる単行本まで出版した。
この本、帯の大見出しには「「つぶさなあかん」と言われる理由」の惹句。ご存知、作家の百田尚樹氏が今年6月、自民党の若手勉強会で「沖縄の二紙はつぶさなあかん」と発言したことにひっかけているわけだが、あからさまに言論の自由を否定する発言を書籍の表紙に持ってくること自体、そのセンスを疑わざるをえない。
当然、中身は翁長知事と琉球新報、沖縄タイムスを終始批判するものだが、それもほとんど言いがかりのレベルだ。
たとえば、翁長雄志知事は今年9月、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で声明を出し、「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされています。自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか」と訴えた。沖縄が国から基地負担を強制的に押し付けられており、県民の声を届けようにも徹底的に拒絶する安倍政権の動向を踏まえると、至極真っ当な声明といえる。
だが、著者に言わせれば、〈「辺野古移設反対を訴えるためだけに、知事はこんなところまでやってくるのか」とつぶやかずにはいられなかった。常軌を逸していると思った〉らしい。そして〈沖縄独立をも視野に入れた最も過激な反基地活動家と一体化したことを宣言したに等しい〉などとして、こう書くのだ。
〈国連の場で日本の自由、平等、人権、民主主義を否定した発言は、自国に対する侮辱であり、日本人として許し難いと思った。これでは国連を利用した「反日」活動ではないか〉
ようするに、同書は、基地の固定化に抗うことに対し「反日」のレッテル貼りをし、基地反対活動を“危険思想”かのように喧伝しているのである。
しかし、同書が何を言おうが、まったく説得力などないだろう。というのも、同書の著者である仲新城誠氏は、あのネトウヨが大絶賛する沖縄県石垣市の地方紙、八重山日報の編集長だからだ。八重山日報は、近年急激に保守的、右翼的な主張を繰り出していることで知られるが、その悪質なところは、こうした翁長・基地反対派バッシングのためにデマ報道すらたれ流していることだろう。
本サイトが報じた“基地反対派による女児暴行”デマ報道事件のことだ。
「読谷 背景に反基地感情? ハーフ女児押し倒す」。八重山日報が15年4月3日付で、こんな見出しの記事を出した。内容は、今年3月に、沖縄県読谷村に住むアメリカ人と日本人のハーフである6歳の女児が複数の男に押し倒されて暴行を受け、女児の母親が嘉手納警察署に相談したと伝えるもので、「支援者で、沖縄教育オンブズマン協会会長」なる肩書きの手登根安則氏という人物による、こんなコメントを掲載していた。
「米軍基地に対する怒りのはけ口がハーフの女の子に向けられたのかも知れない。平和運動の名のもとに事実上のヘイトスピーチが横行している実態がある」
この記事は、すぐさまネットに転載され、次世代の党・中丸啓氏やネトウヨによって“沖縄の基地反対派による女児暴行事件”として拡散された。だが、本サイトが取材したところ、暴行事件として立件されていないどころか、ディティールにいくつもの不審な点が浮かび上がったのだ。
当時、本サイトはこの件を取材したが、記事にかかわった八重山日報関係者が次のような証言をした。
「実は、このコメントを出している手登根氏からの情報提供で、『八重山日報』の記者が取材へ向かったようです。手登根氏は女児の母親のfacebookへの投稿を見て、母親に一緒に警察署へ行こうと持ちかけたと聞きます。そして、記者に『取材するなら○月×日に行くので来て』とオファーした」
「『八重山日報』は当初、手登根氏のコメントは使わず、事実だけで記事を構成しようとしていた。しかし、取材をするなかで、立件までにはいたらないことがわかった。そこで『反基地運動に対する懸念』という切り口に替え、手登根氏のコメントを追加することになった」
ようするに、八重山日報はなんの根拠もないまま、基地反対派の犯行であるかのように記事を作ったことを認めていたのだ。
そして、この八重山日報に事件を通報した“コーディネーター”手登根氏こそ、沖縄の草の根保守運動の中心的人物。手登根氏は「チャンネル桜」の沖縄支局のキャスターも務めており、4月7日の放送では前述の八重山日報の記事を引用しつつ、「とんでもない事件が発生した」などと嘯いていた。ようは、八重山日報は“沖縄のネトウヨ”と結託して、ほとんど“やらせ”に等しい方法でデマ報道を打ったのである。
さらにこれも本サイトで報じたが、手登根氏は、今年8月に東京で開催された「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」なる市民団体による集会で、司会を担当。この集会の実態は、「当会支援者」及び「集会呼びかけ人」に百田尚樹氏や西村幸祐氏、櫻井よしこ氏、八木秀次氏、「日本文化チャンネル桜」の水島聡社長、「新しい歴史教科書をつくる会」の杉原誠四郎会長などなど、そうそうたる右派の面々が集結する、事実上の“基地反対派バッシング運動”だった。
つまるところ、この“基地反対派による女児暴行”報道は、最初から最後まで右派の典型的なデマゴギーだったのだ。にもかかわらず、仲新城編集長は『翁長知事と沖縄メディア』で、このデマ事件についてこのように記している。
〈インターネットの掲示板やツイッターは、恐らく米軍基地反対派と思われる人たちの「八重山日報の記事はデマだ」「八重山日報は右翼新聞だ」などという私たちへのバッシングのコメントであふれ返った。(中略)
沖縄県警によると、女の子に大きなけがはなかった。結局、真相は分からずじまいで、暴行の背景に反基地感情があったかどうかは不明だが、日頃米軍基地による人権侵害を訴えている人たちなら、女児への人権侵害も深刻に受け止めなくてはならないはずだ。
しかし実際には、報道を「デマだ」と断じ、新聞社に連日、執拗な罵詈雑言を浴びさせる。この人たちの人権感覚がわからなくなった〉
ひどい論点のすり替えである。「背景に反基地感情? ハーフ女児押し倒す」と報じたのはどこの新聞だ?と聞きたくなるが、しかも、このデマ報道に対する批判を“基地反対派の攻撃性”などといって反転すらさせている。
言っておくが、基地反対を名目に女児を暴行することも、ハーフの人たちや外国人を差別することも、決して許されることではない。当たり前だ。八重山日報の報道が問題になったのは、女児への暴行事件報道の曖昧さもさることながら、保守活動家の妄想コメントに丸乗りして“基地反対派の犯行”とミスリードしたからだ。
どうやら、八重山日報は自らが“デマ拡散装置”になっている自覚がないようである。しかし、ここで見逃せないのは、弱小地方紙である八重山日報が大手全国紙の産経新聞と綿密に結びついていることだ。
実際、産経新聞のウェブ版「産経ニュース」では、10月に、仲新城誠氏の署名記事がシリーズで掲載されているし、そもそも『翁長知事と沖縄メディア』自体、産経新聞社刊行の右派論壇誌「正論」で連載されていたものがベースだ。
また、「新しい歴史教科書をつくる会」の元関係者が携わる育鵬社の教科書の採択問題で揺れていた2013年に、八重山日報は9月14日付の一面トップで「育鵬社不採用の協議無効」と見出しを打った。しかし、その記事は産経新聞の記事をそのまま転載したものだった(野中大樹「ルポ 狙われた国境の島 2」/「週刊金曜日」11年12月9日号)。
こうした状況からしてみても、両者の蜜月は明らかだろう。そう考えると、今後、産経が八重山日報を使って“言論弾圧されているが、沖縄には基地賛成の大きな声がある”などと触れ回ることは容易に予想できる。
安倍政権の意向を汲んだ右派新聞が繰り出す基地反対バッシングキャンペーンとデマ攻撃に、今後も注意深く監視していく必要がある。
(宮島みつや)
最終更新:2016.01.20 12:51
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