ほっしゃん。がネトウヨの「在日」攻撃に怒って逆に「差別主義者」と炎上!「在日認定」への正しい対処とは?

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吉本興業株式会社公式HP 芸人プロフィールより


 ほっしゃん。から改名したお笑い芸人の星田英利が炎上している。発端は7月22日、ツイッターでこうつぶやいたことだった。

「のほほんと生きてる俺みたいなバカの戯言としては、国のリーダーならば何のごまかしもなく、『遥かに危険度は増す。死ぬかもしれん。でも、国のために、国民のために、皆さんの貴重な命をかけてくれ!』って頭を下げるのが現場の方々に対する最低限の礼儀やと思う」

 安保法制で国民の危険が高くなるのかをのらりくらりとかわす安倍政権へのもっともな批判だが、これに対しネトウヨがこう噛み付いたのだ。

「危険度は増さない。安全策の為の法案だ。在日吉本が嘘で若い人々を先導するな!!」

 そう。連中の常套手段である“在日認定”というヤツだ。ところが、星田はこれに怒り、ネトウヨとの応酬となっていく。

星「在日吉本って?真面目に言うとる? マネージャー経由で弁護士に連絡したよ。よろしく」
ネ「それは言論封殺の脅迫のつもりか? 事実でしょう」
星「違うよ。訴えるわ。」
ネ「立派な脅しだよ。何を訴えるのか?」 

 さらにやりとりは続くのだが、これに対し、ネット上では「在日」に反応したとして星田を「差別主義者」と批判する声が巻き起こり、炎上する騒ぎになったのだ。一部のニュースサイトでも「壮大なブーメラン」など星田を揶揄する記事が掲載された。

 しかし、今回の事態の本質はそんなことではないはずだ。確かに星田の反応は感情的で稚拙だったし、ただのネットユーザーに「弁護士に連絡」「訴えるわ」などという言葉を口にするのもどうかと思う。

 ただ、星田が差別的な意味で「在日」に怒ったのではないことは、やりとりを見れば明らかだ。実際、星田はその怒りの理由についてこうつぶやいている。

「あのね、日本人やけど、“在日”って言う言葉に何も不快も無いよ。その言葉を差別的に使うのが許されへんだけ」

 そう。もともと「在日」という言葉は「在日朝鮮・韓国人」の略称として使われ、差別的な意味はなかった。ところが、それが戦後社会で、朝鮮・韓国人差別のスラングとして使われるようになり、さらに2000年代、右傾化が進み、排外主義が台頭すると、左翼やリベラル派への攻撃として「在日認定」が行われるようになった。

 有名なケースでは、極右雑誌「WiLL」(ワック)がまったくのデマ情報にもとづいて土井たか子のことを「在日朝鮮人」と報道、土井に名誉毀損で訴えられて最高裁で敗訴判決を受けているし、石原慎太郎も民主党政権時代に「与党を形成しているいくつかの政党の党首とか、与党の大幹部ってのは調べてみると帰化した子孫が多い」と述べたことがある。

 ネトウヨはこうした極右、差別主義者のやり口をさらに広げ、護憲や人権、反原発を口にする者、自民党に対して批判的な姿勢を持つものへの攻撃手段として、片っ端から「在日認定」を行い始めた。小沢一郎、福島瑞穂、辻元清美ら政治家はもちろん、作家、ジャーナリスト、芸能人、さらに最近は、護憲的な姿勢を強めている天皇や皇后に対しても、「在日」攻撃を行っている。

 つまり、連中は自分たちとちがう考えを排除するためにこの「在日」という言葉を使い、出自や国籍の問題に帰しているのだ。これは、「在日」に日本の政治を語る資格はないといっていることでもあり、二重に差別的であるといっていいだろう。

 そういう意味では、今回の星田の問題も、真っ先に糾弾されるべきは安倍政権を批判したというだけで「在日」という言葉を用い、星田と「在日」を差別したネトウヨのほうである。

 ところが、それを否定したことで、結果的に星田の方が差別主義者として炎上してしまった。これが「在日認定」への対処の難しさだ。

 つまり、「在日」を否定すると、今度は一転、「在日といわれるのを嫌がるってことは在日を差別してるんだろ」と攻撃を受けてしまう。だから、多くの有名人はネトウヨの「在日認定」が事実無根であっても沈黙を貫かざるをえない。そして、ネトウヨたちは「在日認定」にこういう反論ができない構造があることもすべて織り込み済みで、攻撃を仕掛けてきているのだ。

 しかし、この沈黙という方法論も、むしろネトウヨたちを「反論でないことは在日決定」などとさらに勢いづかせてしまう。その後どんな発言をしようとも「在日だから」とネトウヨの攻撃に晒され、主張を矮小化されたり、場合によっては政治的発言ができない事態に追い込まれてしまう。

 ではどうすべきなのか。たとえば、前述の石原慎太郎の在日認定発言に対して、福島瑞穂(当時社民党党首)がとった対応は「在日認定」へのお手本というべきものだった。

「私も、私の両親も帰化したものではない」と事実を明らかにした上で「(帰化を)問題とすること自体、人種差別」と指摘、さらに、自分と違う政治信条を差別によって攻撃する手法をこう批判した。

「政治家の政治信条を帰化したからだという事実誤認に基づいて説明することは、私の政治信条をゆがめ、踏みにじるものだ」

 また、芸能人なら、本サイトで紹介した SHELLYのような方法論もあるかもしれない。デモを肯定したことで「SHELLYの母親は韓国系」とデマ攻撃を仕掛けてきたネトウヨに対し、彼女はこんなユーモアと皮肉で返した。

「ねーねー、なんでうちの母が韓国系になっちゃったの??チャプチェが作れるから?(笑) 浅はか過ぎてなにも言えない…」

 ただ、ネット言論のリテラシーは想像以上に低い。こんな見事な返しをしたSHELLYにさえ、あるネットニュースはこんな見出しをつけた。

「SHELLY母親を「韓国系」と言われ不快感をあらわに」

 ようするに、ネットメディア全体がネトウヨの論理に引っ張られ、「在日認定」の是非より、「在日かどうか」に興味が移ってしまっているのだ。

 しかし、だからこそ、「在日認定」を受けた人たちは沈黙せずに勇気をもって闘ってほしい。在日でない人は在日でないとはっきり否定し、在日の人はそれを堂々と認めて、逆に「在日認定」の差別性を批判する。それを積み重ねていくことでしか、この状況を変えることはできないだろう。

 ちなみに本サイトにも「売国奴のリテラはスタッフもライターも全員在日だ」というような「在日認定」メールがかなりの頻度で届くので、いい機会だから答えておこう。

 この社会がそうであるように、もちろんリテラにも在日のスタッフも、在日でないスタッフもいますよ。でも、だから、どーしたの?
(エンジョウトオル)

最終更新:2015.07.29 11:40

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