大河『いだてん』脚本の宮藤官九郎や音楽の大友良英が“国威発揚、東京五輪プロパガンダにはならない”と宣言

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クドカンは五輪が国家主義的イベントになった時代とどう向き合うのか?

 しかも、今後、宮藤官九郎が描きたいテーマと実際の歴史とのこうした齟齬は、さらに表面化していくだろう。

 いま(第3回まで放送済み)はまだ、日本人で初めてオリンピックに参加したマラソン選手・金栗四三(中村勘九郎)の少年・青年時代を扱うパートだからこの程度ですんでいるが、1912年のストックホルム大会から1964年東京五輪までを描くということは、日本が帝国主義・侵略戦争に突入していった時代、そしてオリンピックが、国家主義的イベントへと変質していった時代を避けては通れないからだ。

 1925年には治安維持法が制定され、1931年には柳条湖事件、満州事変が起きた。1936年にはナチスドイツによるベルリンオリンピックが開催されている。そして1941年、太平洋戦争に突入していくのだが、その前年の1940年は、幻の東京五輪が開催される予定だった年だ。この1940年の東京五輪は、皇紀2600年を記念し、ベルリンオリンピックと同様、まさに国家主義イベントとして招致されたのだが、日本が日中戦争を引き起こしたことで世界中から非難を浴び、開催を返上している。

 こういったコントラバーシャルな時代の、実際の出来事に対して宮藤官九郎はどのように批判的な眼差しを向けるのか。歴史ドラマを編みながら「オリンピック=国威発揚」へのアンチテーゼを加えていくその作業は、並大抵な難易度の仕事ではないだろう。

 ただ、希望はもっていたい。冒頭で紹介した音楽担当の大友良英は、同じく「女性自身」のインタビューでこうも語っている。

「今の段階では明るい印象のドラマですが、それだけでは終わりません。これから、関東大震災や2度の世界大戦が出てきます。
 僕らの世代は戦争は知らないけれども、東日本大震災を経験している。戦争を止めるためにオリンピックが始まったところもあるわけですし、その本来の意味を、このドラマを通じて考えなおす機会になればいいと思うんです」

 大友良英はさらに同インタビューのなかで「最近あまり言われることがなくなりましたが、“参加することに意義がある”というオリンピック精神の神髄を、音楽でもやり切りたいですね」とも話しており、「国威発揚」に結びつけられる傾向の強い現状のオリンピックへの認識に疑問符をつきつけたいとの思いを話している。

 大友良英の言う通り、ドラマを通じて安倍政権の喧伝する「オリンピック=国威発揚」を真っ向から否定し、オリンピックが本来もっている意義を視聴者に思い出させる作品になれば、これ以上素晴らしい大河ドラマはないだろう。

 なんとか頑張ってほしいとクドカンはじめスタッフにエールを送りたい。

最終更新:2019.01.27 12:44

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