論争勃発!『ラ・ラ・ランド』チャゼル監督はなぜいつもジャズファンから嫌われる? 前作では菊地成孔と町山智浩バトルも

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 ただしかし、このように牽制することも忘れていない。

〈ジャズに関しては、常に《過去のものの方がいい》って言説との闘いで、基本的になんでも焼き直し呼ばわりされるし、焼き直し呼ばわりされない時は伝統を軽視してる的なことを言われる。その闘いを常に強いられてる人たちのことを知ってる人間にとって、軽口もポーズも見逃せないのは僕はわかるけどね〉

 とはいえ、先ほどから少し名前のあがっているデイミアン・チャゼル監督の出世作であり長編デビュー作『セッション』のときのような「大論争」にはなっていない。『ラ・ラ・ランド』を高く評価している映画評論家の町山智宏氏は、つい先日も『たまむすび』(TBSラジオ)のなかで、劇中のジャズに関する描写に批判的な人を「ジャズ警察」と呼んで揶揄していたが、『セッション』のときは、この映画をめぐり菊地成孔氏と大論争を展開。映画批評界隈のみならず、サブカル界を巻き込んだ大炎上の論争へと発展した。

『セッション』は、ジャズドラマーを目指して音楽大学に入学した青年アンドリュー・ニューマン(マイルズ・テラー)と、彼に対して体罰も含む常軌を逸したしごきを与える鬼教官テレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ)との間で繰り広げられる確執と闘いの日々を描いた映画。

 手から血を滴らせながらドラムを叩くシーンなど、まるで往年のスポ根マンガのような描写もあった『セッション』。これに対し、菊地成孔氏はジャズミュージシャンの見地から、この映画におけるジャズ描写の矛盾や、物語のなかに「音楽への愛」がないことを批判。その一方、町山智宏氏はジャズに関する知識と教養がなければ映画を見られないとでも言いたげな彼の意見に反発し、また、映画のラストシーンにおける見解にも誤解があると反論した。

 両者の意見の食い違いは「音楽」に重きを置いて物語を見るのか、それとも「ドラマ」に重きを置いて物語を見るのかによる、立ち位置の違いによって生まれた齟齬だと思うのだが、議論が続いていくうちにやがて話題は「両者が映画界や音楽界でもっている“権威”について」や「映画を酷評する原稿を出すときは興行に傷を与えないよう公開週の週末以降に公開するのが映画評論界における暗黙のルール」といった話にも変わっていき、また加えて、サブカル界のスター二人によるぶつかり合いに野次馬が大熱狂したことでどんどん混濁していった。

『セッション』、『ラ・ラ・ランド』と、二作連続でジャズファンに反発を受けたデイミアン・チャゼル監督。いったいなぜ監督の作品はいつもジャズファンとの間で確執が起こるのか。

『セッション』は、高校時代はビッグバンドでドラムを叩いていた監督自身の青春を反映させたものだった。劇中で演奏されるビッグバンドジャズの有名曲「Whiplash」はその頃に演奏していた曲で、フレッチャー教授のキャラクターも厳しかった先生がモデルとなっている。

 このことから、彼の映画のなかに音楽への愛情があまり感じられないのは、「音楽家への夢が挫折したがゆえに音楽に憎しみがあるからじゃないか?」といった分析が交わされることもある。前出の唐木元氏も〈セッションのときから思っているのですが、あの監督にとって音楽映画というのは音楽への復讐なんですよね〉といった意見をツイートしているのだが、果たしてそれは事実なのか、それとも誤解なのか?

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