安倍政権の打ち出したプロパガンダ映画計画を是枝裕和監督は危惧していた!「映画が日本に利用されている」

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 その結果、格差の広がった業界で起こるのは、過酷なブラック労働だ。『淵に立つ』が前述の「日本映画ベスト・テン」3位に選ばれた深田晃司監督は、「キネマ旬報」2016年10月下旬号のなかで、自主映画の製作環境の過酷さをこのように告白している。

〈市場原理主義に基づく新自由主義経済において自由を謳歌するのはごく一部の大手企業のみであったように、今日本のインディペンデント映画は歪つで排他的な業界構造の中、大手三社外に残った二割のパイを奪い合っている状況にある。結局そのしわ寄せは現場へと押し寄せ、保障のない不安的な生活や低賃金、長時間労働といった劣悪な撮影環境へと反映される。そこで最初に脱落するのは、経済的弱者や体力的弱者で、公正で自由な競争原理ならびに人材の多様性を保つことが困難となるのだ。映画の労働環境におけるジェンダーバランスの不均衡もこれと無縁ではないはずだ〉

 映画界が抱える問題はこういった「大手」と「中小」の格差だけではない。製作費に苦慮するのはビッグネームの映画作家でも同じ。さらに、現行の日本映画界のシステムでは映画をつくっても、そこで得た利益が制作者に還元されることはほとんどないという状況がある。是枝監督は昨年11月、ウェブサイト「現代ビジネス」のインタビューでこのように語っていた。

「僕も資金調達には苦労していますよ。先日、韓国に行ったとき、向こうのプロデューサーと話をして、韓国のシステムについて聞いた。韓国では興行収入の4.5割が劇場分で、残りの5.5割を映画の製作委員会(出資者)と制作会社(監督など作り手)が6対4の割合で分け合うそうです。
 つまり、興行収入が10億円あったとすると2億4000万円が、一番汗を流した制作者たちの手に渡る。そして、その資金は次の作品の準備に充てられます。でも、日本だと5割が劇場で、残り5割のうち1割を配給会社、4割が製作委員会に渡る。多くの場合、監督には配分がないんですよ。
 僕は、交渉するようにしていますが、日本でお金の話をするのは、あまり好まれない。1%の成功報酬を交渉するのに、なんでこんなに苦労しなければいけないんだろうってつくづく思っていた。
 なので、韓国のシステムを聞いて、暗い気持ちになりました。映画監督は食えなくて当たり前、みたいな感覚では、映画監督という職業に若い人たちが夢を持てなくなっても仕方がない」(16年11月28日付)

 製作費もない。映画をつくっても儲からない。そんな苦境にあえいでいる状況を利用し、いまこの国の為政者たちは、札ビラで頬を叩きながら才能ある映像作家たちの力を利用しようとしている。

 かつてこの国は戦争を礼賛した国策映画を大量につくりだした過去がある。歴史を繰り返さないためにも、弱みにつけこもうとしている政府のやり口をわれわれは監視する必要がある。
(編集部)

最終更新:2017.11.15 06:21

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