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女性差別の森喜朗が辞任どころか逆ギレ会見 こんな男がなぜ五輪組織委会長? 子分の安倍前首相による人事ゴリ押しの舞台裏
首相官邸HPより
東京五輪大会組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと女性差別丸出し発言をおこなった問題。
国内外から大きな批判を浴び、本日4日、「謝罪会見」がおこなわれた。一部では「辞任の可能性」などとも報じられていたが、そこは首相在任中に「神の国発言」「えひめ丸事故でもゴルフ続行」など数々の問題を引き起こし、支持率が驚異の一桁台を叩き出しても総理大臣の座に居座り続けただけのことはある。昨日の発言について一応は「謝罪」「撤回」したものの、辞任は否定したのだ。
しかも、「謝罪」とは名ばかりで、記者の質問に「さあ?」「面白おかしくしたいだけだろ」などと逆切れを連発。
それどころか、女性の記者に対してばかり「声が聞こえない」「マスクを取ってくれ」と要求したり、「女性の話は長いという認識なのか」と問われると「最近、女性の話を聞かないからわからない」と答えるなど、さらに女性差別を重ねた。
ここまでひどい謝罪会見は昨今なかなかお目にかかれないが、しかし、森会長の場合、これはある意味、通常運転。橋下徹・元大阪市長などは『ゴゴスマ』(CBCテレビ)で「おじいちゃんだから仕方ない」などと擁護していたが、「おじいちゃん」が一人家のテレビの前で、ぶつくさ言っているだけなら勝手にやればいいかもしれないが、森会長は東京五輪という世界各国がかかわる公共イベントの責任者なのだ。「おじいちゃんだから」で済まされるはずがない。
だいたい「おじいちゃんだから」とかではなく、森会長の場合、首相時代から数々の暴言・不祥事だらけの御仁。東京五輪をめぐっても、多々暴言を吐いてきたし、数々の不祥事・疑惑も発覚している。しかも、それは組織委会長になってからの話ではなく、政治家時代からだ。
問題は、そもそもなぜこんな人物が東京五輪組織委員会会長などという要職に就いているのか、ということだろう。
しかし、その答えは簡単だ。安倍前首相がバックについていたから、それにつきる。実際、森氏の組織委会長就任の際も、安倍首相がゴリ押しし、ねじこんだことがわかっている。
安倍前首相が周囲の反対を押し切り森を組織委会長に…反対する猪瀬直樹に圧力
国際オリンピック委員会(IOC)総会で2020年五輪の開催地に東京が選ばれたのは2013年9月7日。それからわずか1カ月後の10月12日、新聞が一斉に、〈安倍晋三首相が2020年、東京五輪開催に向けた準備を総括する大会組織委員会会長に森喜朗元首相(を充てる方向で調整していることが分かった)〉と報じた。
「実は、森さんの五輪組織委会長は、招致決定前から決まっていたようです。当時の安倍首相と森氏は2013年8月に少なくとも2度、会っています。一度目は山口で、下村文科相をまじえて。二度目は笹川陽平日本財団会長の別荘に一緒に泊まり、ゴルフを楽しんでいる。そのときに、招致したら組織委の会長を森氏にやらせるという話が出ていたようです。さらに、9月に入って、森元首相が直接、安倍首相のところに『おれにやらせろ』と念押しの直談判をしてきたともいわれています。この圧力に押される形で、安倍首相が森氏の就任を決定。10日に官邸から既成事実化のための新聞辞令として情報がリークされたということのようです」(全国紙政治部記者)
しかし、この動きに、反発していたのが当時の東京都知事、猪瀬直樹だった。猪瀬都知事は会見で、こうした報道について「森元首相の話はどこから出たか知らないが、全然議題に上がっていない」「(権限がない場所で)決めても、決めたことにならない」としたうえで、こう断言したのだ。
「(会長は)東京都とJOC(日本オリンピック委員会)で決める。いろんな人が今、こういう時期に便乗して出てくる」
「人選は安倍首相がやるわけではなく、ぼくのところでやる」
猪瀬氏自身の体質はともかくとして、この主張は正論だった。五輪は都市開催であり、決定権は都とJOCにある。
だが、森の会長就任を阻止しようとする猪瀬氏に対して、官邸=森喜朗サイドは猛然と反撃に出た。まず、森氏が「文藝春秋」2013年11月号に手記を寄せたのだが、そこにはこんな猪瀬批判が書かれていた。
「(猪瀬知事が)自分の力でやったと思い込んでいるところが可愛らしいけど、彼が英語でスピーチしたところで招致には大した影響はない」
「むしろ何も知らない猪瀬知事で正解だった。逆にもう少し五輪招致に首を突っ込んでいたら、我々の描いた戦略どおりには行かなかった可能性もある」
また、裏では、官邸サイドから、猪瀬知事やJOCに相当な圧力がかかったという。
「猪瀬さんのところには、いろんなルートで『森さんをなんとか会長に』という話がきていましたし、JOCの竹田恒和会長も途中から完全に、『森さんでいいんじゃないか』という感じになってしまっていた。だが、猪瀬さんはがんとして首を縦にふらなかった」(東京都関係者)
ところが、その少し後の11月末、猪瀬知事に徳洲会グループからの5000万円が発覚。猪瀬氏は五輪どころではなくなり、官邸はその間に一気に、外堀を埋めて、森氏の会長就任の正式決定に向けて動き始めたのである。
実際、猪瀬氏にスキャンダルが浮上する前後の11月、当時の安倍首相と森氏は首相動静で公表されているだけでも、実に3回も会っていた。いくらかつての親分だからといって、現役首相が政治家を辞めた元首相にこの頻度で会うのは異常だろう。
「そんなところから、猪瀬氏に近い関係者の間では、このスキャンダルが官邸=森サイドの仕掛けだったのではないか、という疑念も持っていたようです。第一報は朝日新聞のスクープだったんですが、森さんが流したのではないか、と。まあ、そこまではちょっと陰謀論がすぎるとしても、官邸がこのスキャンダルを使って猪瀬氏に揺さぶりをかけていたのは間違いない。検察が捜査に乗り出したことで、猪瀬氏としても、官邸に逆らえなくなったんでしょう」(政界関係者)
森は日本の密室談合政治の象徴 首相になるときも組織委会長になるときも密室で
そして、組織委会長就任後も数々の失態・不祥事が発覚しながら、森氏は会長の座に居座り続けてきたが、これも安倍前首相のバックアップがあったからだった。たとえば、新国立競技場の建設費高騰問題をめぐって森会長の責任が問題になったことがあったが、当時の安倍首相が森会長を擁護したといわれている。
「あまりの建設費高騰で、当時の下村文科大臣が、安倍首相に別の案に変更を進言した際も、安倍首相から『森さんの了承を得ないと無理だ』と言われ、その結果、変更は実現しなかった。とにかく、安倍首相の森さんへの気の使いようは尋常ではなく、五輪については全権委任という状態だった。その空気が五輪担当相や文科省、組織委にも広がっていますから、解任なんてできるはずがなかった」(前出・全国紙政治部記者)
これ以外にも、エンブレム問題や神宮外苑地区の再開発利権疑惑、招致をめぐる賄賂疑惑など数々の問題が発覚しているが、森会長は一切責任を取ることなく、その座に居座り続けてきた。
しかし、なぜ、安倍前首相はそこまで、森首相に弱かったのか。
「安倍さんはかつての森派、清和会出身で、第二次森内閣で官房副長官に引き上げられた、いわば直系の子分さんですからね。当然、金銭的にもかなり世話になっているし、いろいろ弱みも握られているんでしょう。とにかく、森さんには絶対逆らえませんよ」(政治評論家)
もっとも森元首相に甘いのは、安倍前首相に限った話ではないだろう。橋下徹・元大阪市長は今日の『ゴゴスマ』で「森さんの政治力は絶対に必要」などと評価していたが、森喜朗の政治力などというのは、裏で会食したり利権を分配したり恫喝したりと、homosocialな人間関係のなか、談合のような形で物事を決めることだ(菅首相の人心掌握術とやらも同類だろう)。民主的な議論や手続きとはまったく関係ない話だ。
思えば、森会長の首相就任も小渕恵三首相急死という混乱のなかで密室の談合によって生まれたものだったが、組織委会長就任も都知事の不祥事をめぐる混乱の隙をついてなされたものだ。
そういう意味では、森会長は日本の密室政治の象徴と言ってもいい。今回、森会長がオープンな議論を求める女性を「話が長い」「話す時間を制限しろ」などと言ったのは、女性差別であると同時に、民主的で透明性のある議論を排除して、密室ですべてを決めたい、自分の言うことを聞く男たちで理事会を固めたいというその政治手法がもろに出たものと言ってもいい。
しかし、この密室談合体質は森会長一人の問題ではない。こんな差別男を五輪の組織委会長というポジションにつかせた安倍前首相や官邸、政府、そして女性理事4人以外は理事会の密室化に全員が賛成したJOCの理事たちの体質でもある。
だからこそ、これだけ国内外から批判を浴びてもJOCも政府も森会長に辞職勧告すらできず、そのまま会長の座に居座ることを許そうとしているのだ。もしこのまま放置するようなことになれば、それこそ日本がいかに女性差別の許されている国か、homosocialな密室談合によって、物事を決めている国であるかを全世界に発信することになるだろう。
(田部祥太)
最終更新:2021.02.04 10:21
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